紅茶の中に落ちた秋
風がそよぐ
雑木林のこずえを揺らし
きれいに刈り込まれた下草の間を通り抜けて
ヴェランダの明るい日差しの中に
還ってきた
小さな木製の古いテーブルの上に置かれた
テイーカップ
紅く色付いたわくらば一枚
風と一緒に還ってきて
淡いべにいろの紅茶の中に落ちた
予期せぬ出来事に
秋の風のさざ波に揺られ
紅茶の海に落ちた秋色の遠い昔の思い出が
カップの中に浮かんでくる
父よ 母よ 姉よ 兄よ
逝きて還らぬ大切な私のなつかしい人たちよ
秋の気配の降りてくる林の中のヴェランダで
今日は一日
黄昏がやわらかい光の帯をたたみ
夜のとばりが林をつつむまで
思い出の船に乗って語りつくそう
私たちが歩んてきた「道」のことについて……
(2019.9.27記) (季節の香り№32)
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