クレイジーでいこう。
2021.10.26の朝日新聞朝刊の広告に、紙面一面+1/4の大きな広告が掲載された。
表題のタイトルの大きな広告だ。
物品の販売を目的とする広告でもなく、特定会社のイメージ広告でもない。
よく見ると画面の下に社名らしき英文字が三つ横並びに印字されている。
これを見てもどんな団体なのか見当がつかない。
【クレイジーでいこう。】と大きく印字されたその横に、gocrazy-project.comの文字が見える。
QRコードもあり、調べてみると
GoCRAZY Projectは、
FRACTA、Whole Earth Foundation、Menlo Park Coffeeが連盟となってスタートした
「世の中をもっとよくするクレイジーな人やアイデアを応援する」プロジェクトです、とある。
つまり、上記の三つの団体が起こした、社会活動であり、文面は「世の中をもっとよくする」
ための啓蒙広告である。
興味を引く内容なので以下に紹介します。
皆と同じで安心している自分を許していないか。 |
これを読んで、「うん、そうだよな」と肯定するのはいいのだが、
「ちょつと待てよ」としばし躊躇する。
この世の中、生きていくのをつまらなくするのも、楽しくするのも
そして、おもしろくて、やさしくするのも自分だ。
なるほど、しっかりと自分の足で立ち、両目を開いて
自分の眼で見ることの少なくなった社会に私たちは生きている。
ワイドショーで聞いた知識を切り売りする似非評論家のコメントを
さも、自分の考えのように錯覚してしまう現実がある。
「受け売り」をしているのに、自分の意見のように錯覚してしまう現実がある。
テレビドラマ「ドクターX」を思い出した。
ドクターXに学ぶ
天才的な腕を持ちながら組織に属さず、病院を渡り歩くさすらいの女外科医。群れを嫌い、
権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器である。
職場で孤立し孤立無援の境地に立たされても、
誰かが手を差しのべ、
「たたき上げのスキル」に裏打ちされた自信が
「私、失敗しないので」という台詞を彼女に言わせる。
自由気ままに生きていく彼女を理解する仲間たちもいる。
私生活では雀卓を囲んで馬鹿騒ぎをしたり、
食べたいものを大口を開けて食べる行儀の悪い彼女を認めてしまう仲間もいる。
文面にあるようなことをすれば、
それは「クレイジー」な生き方になってしまう社会の在り方が問題なのかもしれない。
ドラマの中で作られたバーチャルヒロインとはいえ、
権威と策謀の渦巻く白い巨塔の中で、
群れから離れ、正しいことは正しいと正義を貫く大門未知子に共感を覚える。
「私、失敗しないので」と自信に満ちた言葉を投げつける。
「いたしません」と、理にかなわない指示を平然と断り、
「時間ですので」と、平然と定時に退勤してしまう。
嫌われることを怖れずに、胸のすくような啖呵を切る。
ピンヒールの靴音高く、風を巻き起こすように病院の廊下を闊歩し、
白衣をひるがえして歩く姿に、
視聴者は自分たちの胸のうちでくすぶる薄汚れたしがらみの中で、
生きていかざるを得ない自分の代弁者のように行動できる大門未知子に、
無意識のうちに拍手している自分に気づく。
一人ひとりが「クレイジーでいこう」と行動を起こせば、好機は必ず訪れ、
その先に見えてくるのは、「次の世界の入口」なのだと、GoCRAZY Projectは
啓蒙の言葉を広告という形で意思表示しているのだろう。
大門未知子のように、華々しい活躍はできないけれど、
せめて自分の生き方に、
豊かな感性と優しさだけは忘れないように生きていければいいと思う。
(昨日の風 今日の風№128) (2021.11.11記)
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