パラリンピック⑤ 忘れ得ぬ選手たち②
スメエ・ボヤジ(18歳) 競泳 トルコ
(写真・朝日新聞)
イルカのように泳ぐ
2003年トルコに生まれた。
生まれつき両腕がなく、股関節が脱臼していた。
推測で申し訳ないが、おそらくこの状態がボヤジにとって普通の状態なのだろう。
両腕がないことをコンプレックスにしなかったボヤジの積極性が
今日のボヤジを作って来たのだろう。
そのために必要だった天性の明るさと、
好奇心の旺盛さが今のボヤジを形作ったのだろう。
おそらく両親のバックアップもあったのでしょう。
五歳のころ、水族館で魚を見て泳ぐことに興味を抱いた。 |
母親に背中を押され、リハビリを兼ねての水泳を始め、以来はまっているという。
そして、2020東京パラリンピック
8月25日、200㍍自由形で7位を獲得。
続く26日、競泳女子100㍍自由形(運動機能障害S5)予選。
イルカのように体を動かしながら水の中を進んで行く。
水泳というよりも、
人魚が力強く泳ぐようにボヤジは、
水の中で肢体を流線形つくり若鮎のように水に乗る。
全力で泳ぐボヤジ。
しかし、勝負は勝負だ。技術を伴った力と力のせめぎ合いだ。
予選落ち。
水泳だけではない、ボヤジの興味の範囲は可能性を求めて、
足を使って料理を作り、糸と針で服を縫うことも出来る。
もちろんミシンを使うことも出来る。
水彩画の技法で絵の具を水に浮かべて模様を作る『墨流し』は、
個展を開くほどの腕前。
できないことなんてない。私たちができることを、その力を見せつけてやろう |
次のパラリンピックに向けて、ボヤジは果敢に挑戦を続ける。
ボヤジにとって、『生きること』そのものが挑戦なのだから。
(昨日の風 今日の風№126) (2021.11.8記)
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