読書案内「電池が切れるまで」
子ども病院からのメッセージ②
この記事は前回(11月23付)の続編になります。
①を未読の方はこちらを先に読んでいただけると理解が深まると思います。
特に、宮越由貴奈ちゃんの詩「命」は是非読んでいただきたいと思います。
宮越由貴奈ちゃんの詩には、『宮越由貴奈さんの詩「命」』というタイトルで山本厚男教諭(豊科南小学校勤務・子ども病院院内学級担当)が一文をよせていますので、紹介します。
(要約)
この詩は由貴奈さんの遺作となってしまいました。
後日、お母さんのいわれるには、
院内学級で受けた理科授業「乾電池の実験」直後に作られたということでした。
亡くなられたあと、富士見小学校児童たちも参加しての葬儀では、
同級生の弔辞の中でこの詩が朗読されました。
…略…しばらくして、宮越由貴奈さんの詩「命」はある学校の道徳の授業に使われました。
また、長野県人権擁護委員会の会誌に掲載されたり、
あるお坊さんの法話やNHKテレビにも紹介され、
他にもたくさんの方々が、講演等で紹介されました。
多くの人たちが「命」の詩に感動し、由貴奈ちゃんの想いは、
由貴奈ちゃんが亡くなった後も水辺の波紋のように広がって行ったのでしょう。
詩に託された命への思いが、
賢明に生きている由貴奈ちゃんの姿は、読む人の魂を揺さぶります。
どんなに高名な哲学者も、カウンセラーも脱帽です。
宮越由貴奈ちゃんの詩
ほたる
ほたるはとてもきれいだ
見てるだけでこころがなごむ
でも最初に見たときは少し怖かった
だけどオスとメスで
一生けんめい光をだしあって
自分のいばしょを教えあっているんだね
このごろは
住む自然がなくなってしまって
ごめんね本当にごめんね
来年の夏にもまた
きれいな光を見せてね
一生懸命光をだしあって生きる姿と、辛い闘病に負けないで生きる姿が重なっていますね。
病と闘っているにもかかわらず、「ごめんね」と言えるやさしい心の持ち主だった。
入院中の友だちを元気づけ、明るくするムードメーカーでもあった由貴奈ちゃんでした。
一緒に戦ったご両親の手記を紹介します。
由貴奈ちゃんのお母さん陽子さんの手記
五歳の時、神経芽細胞腫と診断され十一歳で亡くなりました。
信大病院での抗ガン剤治療や腎臓を片方取る手術に始まり、
子ども病院に移っての自家骨髄移植やその他にもいろいろな辛い治療を受けながら、
入退院を繰り返していたころ、書いたものです。
命という作品を書いたころ、テレビで流れるニュースと言えば、
いじめだとか自殺だとかが多く、
同じころ病院では、一緒に入院していた友達が何人かなくなりました。
生きたくても生きられない友だちがいるのに自殺なんて……そんな感じでした。
それにちょうど院内学級で電池の勉強をしたばかりだったそうです。
この詩を書いた四か月後に亡くなりましたが、これに書いたとおり充分精一杯生きました。
書くことがそんなに得意ではなかった娘のこの『命』という詩は
十一年という短いけれども凝縮された人生の中で得た勉強の成果なのではないかと思います。
合 掌
(2017.11.27記) (読書案内№115)
どうぞご自愛ください。
いつもありがとうございました
の方に載せさせていただきました。