雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

それぞれの人生から生まれた言葉(2)

2016-03-12 08:00:00 | ことの葉散歩道

それぞれの人生から生まれた言葉(2)          ことの葉散歩道№25

若きもの名もなき者 ただひたすら駆けのぼる ここに青春ありき 人よんで無銘坂

※ 仲代達也の「無名塾」

 青春 生きてるあかし

 坂はしばしば人生にたとえて、表現される。

「苦労坂」「なみだ坂」「別れ坂」等々、又実在する坂にもいい名前の付いた坂がある。

「暗闇坂、柘榴坂(東京)」、「あかり坂(金沢)」、「月見坂(中尊寺境内)」「ささやき坂、ゆうれい坂、忍び坂(長崎)」等。

 俳優の主宰仲代達矢さんの稽古場・無名塾に掲げられた額には直筆の

「若きもの名もなき者……」が掛けられている。

 東大に入学するよりも難しいと言われる「無名塾」の坂を上り、

若き俳優の卵たちが、真剣勝負の俳優修業を繰り広げる。

 明日の俳優を夢見る卵たちを静かに見守る40年の歴史が、

俳優業を続ける限り人生そのものが修行だと語りかける。

青春が火花を散らし、燃えている無銘坂である。

人が作ったものはいつか必ず、ぼっ壊れんだ、自然の力にかなうわけねえんだって、おやじが言ってた通りになったんだから。して、5年もたって、まだだれも責任とってねえんだから

          ※ 農業 樽川和也

東京電力福島第一原発事故から約2週間後の朝、父久志さんは自ら命を絶った。

その日は、国から野菜の出荷停止の連絡が届いた翌朝だった。

遺書はない。

土を慈しみ、撫でるように土を作り、誰にも負けないと自負できる自慢の野菜を作ってきた。

そのおやじが死んで、「8代目の俺の代で、田んぼを荒らすわけにはいがねがら続けてんだ」。

農作物への賠償は、人と人の話し合いで解決の糸口を見つけることができる。

しかし、失われたものはあまりに大きく、取り返すことができない。

汚染された農地、家族の絆、コミュニティーの崩壊は地域の過疎化に拍車をかける。

 被災者への責任ばかりではなく、

原子力発電を国策として推進し、「安全神話」を作り上げた責任を

国や電力会社はうやむやにしてしまうのか。

 

「5年もたって、まだだれも責任を取ってねえ」と、楢川和也は叫ぶ。

       (2016.03.09記)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

避難生活17万 (東日本大震災№1)

2016-03-11 15:04:13 | 東日本大震災

 今日11日で、5年を迎えた東日本大震災だ。5年もたったのに、なお17万人を超す避難者がいる。

仮設住宅から災害公営住宅という計画も思い通りに進んでいない。

当初の計画から半分の達成率だ。

 土地の問題、災害特需による人件費・建設費の高騰、震災から5年も経過してしまえば、

避難先の土地に生活の根拠を移す人も多い。

また、放射能被害で避難指示区域に指定され、

帰りたくても帰れない人などもいる。

 政府が決めた集中復興計画は今年3月末で終わるが、

被災地が以前の日常を取り戻すのには、なお多くの時間が必要だ。

 こうした状況を表にしてみると次のようになる。

被災の状況と復興の現状
 

 

岩   手

宮   城

福   島

死   者

 4673

9541

1613

行方不明者

1124

1236

197

震災関連死

455

918

1979

仮設住宅入居戸数

90503

20533

23723

災害公営住宅完成個数

2748

8077

3217

     〃 完成率

47.6%

50.7%

40.8%

  関連死:震災後の体調悪化や自殺による死は福島県が圧倒的に多い。地震・津波に加えて原発事故による行く先の見えない不安           が関係していると思われる。
  孤独死:プレハブ仮設住宅での孤独死も3県合わせて202人と多い(昨年末時点警視庁まとめ)
  被難者:震災直後の47万人から減少したものの、今も17万4千人が避難生活を続けている。

 東電福島第一原発事故による避難指示区域からの避難者は、約7万人に及ぶという。

 田村市と川内村の一部、楢葉町で避難指示が解除されたが、それぞれの地区に帰還したのは、
            田村市69%
            川内村20%
            楢葉町  6%

    一度失ったものを、とり戻すには、まだまだたくさんの時間が必要かと思われます。

 2時46分 市の防災無線のサイレンが流れた。

 窓を開け、黙祷を捧げました。

 テレビでは天皇皇后両陛下のお言葉が流れてきます。

 震災で亡くなった人々に哀悼の意を捧げます。

                   (2016.3.11記)

 

      

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

それぞれの人生から生まれた言葉

2016-03-10 08:00:00 | ことの葉散歩道

それぞれの人生から生まれた言葉

ことの葉散歩道№24

(片隅に一輪咲くすみれが)どんなやまのなかでも、たにまでも、ちからいっぱいにさきつづけて、それから わたし かれたいの。それだけがわたしのいきているつとめです。

       ※ 北条民雄著 童話「すみれ」より

 命のかがやき

 小説家・北条民雄は、ハンセン病となり、当時の国の政策で隔離生活を余儀なくされた。

「いのちの初夜」は文学界賞を受賞。

1934(昭和12)年、23歳で早逝する。

 一輪のすみれに托して、人生を前向きに一生懸命生きる姿が感動的です。

命の儚さを知り、だからこそ一生懸命生きて、終わりたい。

それだけが私が生きている務めなのだと、

欲もなく、命への未練も持たず、ひたすら生きつづけたいと

隔離施設の高い壁の中で民雄は命の灯を燃やし続けたのだろう。

親や兄弟たちからも絶縁され、

ともすれば希望を失いそうな環境の中で、

北条は、命を見つめ、まっすぐに生きようとした。

 

野球はピンチになれば代打やリリーフがあるけど、人生にはそれがない。

           ※ 桑田真澄

 ピンチは自分で乗り越える

 元プロ野球の清原和博容疑者が覚せい剤で逮捕され、

旧友の桑田真澄が求められて言った。

さらに桑田は、「彼はそれがわかっていると思う」と続ける。

つまり、桑田が言いたかったのは、

人生に代打はないぞ、自分で歩いていく以外に解決の道は開けないのだと。

野球人生を共に歩いてきた、桑田にして言える励ましの一言だ。

名声におぼれ、こんなわけではなかったと振り返る自分自身の後ろ姿に、

清原は愕然とする。

栄光のざわめきも、スポットライトに映し出された輝かしい未来もない。

 清原よ!!

覚醒剤の呪縛から逃れるためには、

一生かけての辛い戦いが待っているのだ。

それを克服した時、

桑田の言葉がどんなに真実を語り、

温かさに満ちていたかを知るだろう。

    (それぞれの言葉は、朝日新聞天声人語2016.02.29より引用。)

                                                            (2016.03.08記)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いじめで骨折 「転んだことに」

2016-03-08 08:00:00 | いじめと自殺

いじめで骨折「転んだことに」

 教諭うその説明指示

『昨年7月、部活の練習中に1年生の男子生徒が、上級生二人からひざ蹴りを受けるなりして胸部を骨折、

教諭は病院に連れて行こうとした副顧問にうその説明をすることを指示し、生徒は病院で指示通り説明した。(兵庫県教育委員会発表)』(朝日新聞)

 さらに、その後の学校側の調査で、

上級生2人が昨年4月以降、計3人の1年の男子生徒を殴ったり、

プールに沈めたりするいじめを繰り返していたことが判明。

 校長は3年の男子生徒を同年8月(いじめ隠蔽のあった翌月)の近畿大会に出場させないよう指示したが、

顧問の男性教諭は、それを無視して出場させ、チームは優勝したという。

 なんとまあ、お粗末な話か、あきれてしまう。

「いじめ問題」は今年1月に5回にわたって「いじめと自殺」というジャンルでアップしたので興味のある人は、読んでみてください。

その時浮き彫りになったのは、学校側の姿勢、校長の責任逃れ等でした。

 今回の問題点は「隠蔽工作」と「職務命令違反」の二点です。

おそらく骨折の事実がわかれば、翌月に控えた近畿大会への出場が危ぶまれたからなのだろう。

部活顧問としての名前に傷がつくということも、関係しているだろう。

さらに加害者生徒を大会出場させないという校長の命令を無視し、

出場させたことへの「職務命令違反」だ。

 いじめによる生徒のけがを真摯に受け止め、

いじめ防止の策をとることなど、この58歳の教諭には微塵もなかったのだろう。

部員の不祥事を隠蔽してまで、参加させることにどんな意味があったというのか。

 

 教師として絶対にしてはいけないことが一つある。

「隠蔽工作」に被害生徒を巻き込み、

「病院では階段から転んだことにしておけ」と虚偽の説明を病院に連れて行こうとした副顧問に指示、

生徒は病院で指示通りに説明したという。

 

 「嘘をついてはいけない」と小さい時から親や先生に教えられた生徒が、

顧問に嘘をつくことを指示されたという。

 

 教師と生徒の間で培われてきた信頼関係が、一瞬にして失われた瞬間である。

 県教委は「教師としてあるまじき行為」として、この教諭を6カ月の停職処分にした。

ということだが、「してはいけない行為、職務倫理違反は明確」なのに、

6カ月の停職処分とは、あまりにも軽すぎる処分です。

 停職処分中に、「依願退職」してしまえば、

退職金も規定通り支給されるという程度の、軽い処分でいいのか。

 名前さえ公表されていない。そんなに軽い「隠蔽工作」だったのか。

校長は、指導監督不十分とし「訓告処分」を受けたという。どちらの処分も、温情主義、事なかれ主義による処分で、

教育界に良い影響は及ぼさないと思います。

                    (いじめと自殺 №6)         (2016.3.7記)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読書案内 「天才」 石原慎太郎著

2016-03-03 10:00:00 | 読書案内

読書案内「天才」石原慎太郎著 幻冬舎2016.1.20刊

 

 悪い癖だが、今回も宣伝コピーにつられて読んでしまった。

「ノンフィクション・ノベル」と歌っているように、

石原慎太郎が沢山出版されている角栄本をつなぎ合わせ、慎太郎流の解釈を加えた本。

しかし、人間田中角栄の側面に光を当てたことは確かだ。

 興味のそそられることが二つある。

 

 一つは「ロッキード事件」で、現職の総理大臣が逮捕されるという、前代未聞の事件であった。

被告本人が脳梗塞に倒れ、事件は本当に解明されたのだろうか。

ロッキード・スキャンダルは

「まさかの一審判決が出るまでに6年半、さらに二審判決の出るのに4年、

そして最高裁への上告の後のあいまいな裁判の進行で、俺の生殺しの年月が続いた」。

「判決は、5億円の授受と請託があったとみとめ、

裁判史上初めての総理大臣の職務権限による収賄罪の成立をみとめた」。

 詳しくは書けないけれど、果たしてアメリカの謀略があったのか、

政界にまつわる贈収賄事件は、いつもすっきりしないままに幕を閉じてしまう。

 

「アメリカに嵌められた」と角栄は言う。

日本列島改造論をかざし、高速道路、新幹線の設置に、確かに経済は活性化した。

しかし、角栄の動くところ「金」がついてまわり、「金権政治」との批判があったことも確かです。

 

 ブルトーザーのように強引に日本経済をけん引した逸材が消えてしまったのは残念だ。

 

 一つは脳梗塞に倒れた角栄の苦悩が如実に表現されている。

この部分は、著者の石原慎太郎の伝聞による創作だろう。

指導者として上に立つもの、特に宰相の孤独と重圧には計り知れないものがある。

 病に倒れ、言葉を失った田中。

ロッキード事件の弁明もできず、日ごとに減少し去っていく取り巻き連中。

今を時めく田中が涙を流す。声にならない声を田中は涙に代えて訴えた。

 

 著者石原慎太郎は最後にこう述べている。

「私たちは田中角栄という未曾有の天才をアメリカという私たちの年来の支配者の策謀で喪ってしまったのだ」と。

 はたして田中は、

「ロッキード事件」というアメリカが仕掛けた罠にハマってしまったのだろうか。

良きにつけ悪しきにつけ稀なる才能の持ち主を私たちは失ったのだ。

 ロッキード事件や金権政治、闇将軍、女性問題といった一般受けする題材だけで評価するのは

田中の評価を一方的に低くしてしまうことになる。

 田中が大臣時代に、提案者となって成立した議員立法は33法あり、

かつて在任中にこれだけ多くの議員立法を成立させた議員は田中以外には見当たらない。

 

 急速に変わりゆく時代の気流のなかを駆け抜けた宰相・田中角栄のご冥福を祈る。

                                  (2016.03.02記)                  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読書案内「暴雪圏」佐々木譲著

2016-03-01 13:05:59 | 読書案内

読書案内「暴雪圏」佐々木譲著 新潮文庫2011年刊

  冬型の季節配置が強まる。東北の日本海側と北陸は雪や吹雪。東北の太平洋側と関東甲信は晴れ。各地で真冬の寒さ。北海道では大荒れ。今日夕方にかけて暴風雪ピークになり、観測史上1位の風速にも。2016.03.01付朝日新聞による。

 このような天気予報を読むと、佐々木譲の小説「暴雪圏」を思い出します。この読書案内は2014年12月21付ブログで紹介済みですが、その気性の激しさを感じていただくには、とても良い小説だと思いここに転載します。また、数年前に起きた、北海道での猛吹雪で100㍍さきの知人の家の所在が猛吹雪のために確認できず、父と幼い女の子の凍死した痛ましい事故なども思い出します。凍死した幼子には、父のジャンパーがかけてあったと当時のニュースは伝えます。父として娘にしてやれる最後でたった一つの愛情だつたのでしょう。心が痛みます。

 

   それでは、小説「暴雪圏」の案内に入ります。

  冒頭から読者を捉えて離さない。

季節外れの風と雪が北海道東部の釧路地方の寒村を襲う。

 三月彼岸の頃に襲来する嵐は、『厳寒期とは違い、湿った重い雪が大地に吹き荒れる』。

幹線道路の交通は完全にマヒし、途絶してしまう。

 

北海道東部・釧路方面志茂別(しもべつ)駐在所の駐在員川久保篤は一本の電話を受ける。

「赤っぽい上着が、雪の下から出ている」。

 

 住民からの通報である。

 

 事故か事件か、雪と風が強くなる中、

吹きだまりの深い雪の中を現場に到着した川久保が目にしたものは、

一部白骨化した女の変死体。事件の始まりだった。

 

 組長の家に強盗に入り、組長夫人を射殺し逃亡する二人の男、

会社の金庫から2000万円を奪い逃走する会社員、

義父の魔手から逃げてきた少女美幸、不倫関係を清算するために家をとびだした明美。

 刻々と激しさを増す雪と風、湿った雪が凍りつき、道路は白い闇の中で封鎖される。

それぞれが抱えた心の闇は深く、

一刻も早くこの町をぬけだしたいと思うが、

これを阻止するように猛吹雪がこの町を呑みこんでいき、

吹きだまりに寄せ集められるように、

町外れの小さなペンションに吸い寄せられていく。

錯綜する情報の中、本庁からの応援は来ない、

孤立無援の駐在の警察官・川久保篤は暴雪・暴風の中をどのように事件と向き合い、

警察官としての使命を果たすのか……

 

  暴雪・暴風の描写が臨場感にあふれ一気に小説の世界にとらわれてしまう。

警察官・川久保篤の孤独と責任感に共感し、ノンストップで読ませてしまう。

刑事ではなく、警察官の視点で描かれるところに、一味違う警察小説になっている。

駐在警官・川久保篤シリーズの第二作目にあたり、前作は「制服警官」。

他に「警官の血」(親子三代にわたる警官がテーマ)などもお薦めの作品。

私の好みとしてはいずれの作品も少し内容が暗いところが難点です。

         (2014.12.21ブログ転載)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする