それぞれの人生から生まれた言葉(2) ことの葉散歩道№25
若きもの名もなき者 ただひたすら駆けのぼる ここに青春ありき 人よんで無銘坂 ※ 仲代達也の「無名塾」 |
青春 生きてるあかし
坂はしばしば人生にたとえて、表現される。
「苦労坂」「なみだ坂」「別れ坂」等々、又実在する坂にもいい名前の付いた坂がある。
「暗闇坂、柘榴坂(東京)」、「あかり坂(金沢)」、「月見坂(中尊寺境内)」「ささやき坂、ゆうれい坂、忍び坂(長崎)」等。
俳優の主宰仲代達矢さんの稽古場・無名塾に掲げられた額には直筆の
「若きもの名もなき者……」が掛けられている。
東大に入学するよりも難しいと言われる「無名塾」の坂を上り、
若き俳優の卵たちが、真剣勝負の俳優修業を繰り広げる。
明日の俳優を夢見る卵たちを静かに見守る40年の歴史が、
俳優業を続ける限り人生そのものが修行だと語りかける。
青春が火花を散らし、燃えている無銘坂である。
人が作ったものはいつか必ず、ぼっ壊れんだ、自然の力にかなうわけねえんだって、おやじが言ってた通りになったんだから。して、5年もたって、まだだれも責任とってねえんだから ※ 農業 樽川和也 |
東京電力福島第一原発事故から約2週間後の朝、父久志さんは自ら命を絶った。
その日は、国から野菜の出荷停止の連絡が届いた翌朝だった。
遺書はない。
土を慈しみ、撫でるように土を作り、誰にも負けないと自負できる自慢の野菜を作ってきた。
そのおやじが死んで、「8代目の俺の代で、田んぼを荒らすわけにはいがねがら続けてんだ」。
農作物への賠償は、人と人の話し合いで解決の糸口を見つけることができる。
しかし、失われたものはあまりに大きく、取り返すことができない。
汚染された農地、家族の絆、コミュニティーの崩壊は地域の過疎化に拍車をかける。
被災者への責任ばかりではなく、
原子力発電を国策として推進し、「安全神話」を作り上げた責任を
国や電力会社はうやむやにしてしまうのか。
「5年もたって、まだだれも責任を取ってねえ」と、楢川和也は叫ぶ。
(2016.03.09記)