前FRB議長のグリーンスパン氏の回顧録、“The Age of Turbulence:Adventures for a New World”―『激動の時代、新世界への冒険』とでも訳せばいいのだろうかーが、ペンギン書店で米時間、9月17日に、発刊されると、WSJ紙(9月15日)が紹介した。
9月17日と言えば、米FOMC発表で、政策金利であるFFレートを引き下げるか、その幅はどうなるか、付帯声明の中身はどうかで、はなはだ注目されている同じ日である。
グリーンスパン氏は、彼の政策が、現在の住宅バブルを招き、このところの金融不安を引き起こしたと非難されている。著書の中で、「共和党議員とブッシュ米大統領に、歯止めない財政支出をやめるよう、たびたび進言したが、聞き入れられなかった。共和党が先の選挙で敗北したのは当然の帰結である」と断罪している。
グリーンスパン氏は、FRB議長を18年間,勤めた。その間多くの大統領の元で仕事をした。「フォ-ドは普通の人に一番近い。彼は選挙で選ばれていない。」「ニクソンを反ユダヤ主義と限定して非難した人がいた。ニクソンは、反ユダヤ、反イタリア、反ギリシャ、反スロバキヤだった。しかし、本物のプロだった」と述懐している。
「クリントンは、長期的観点に立って経済成長を求める、情報狂だった。ただ、モニカ・レウインスキー事件には失望した。悲しかった」と書いている。バーナンキ議長に付いては、「彼は経験豊富な後継者である。彼に職を譲った今、大変居心地がいい(confortable)」とのみ触れていると、WSJ紙は紹介した。
グリーンスパン氏は、米国及び世界がこれから直面する様々な事象について言及している。
その中で、①エネルギー問題について、原子力の一層の活用を勧めている。CO2規制や増税は失敗する。②所得格差が進み、大衆が縛りから解き放れた結果、大規模な暴動に発展する。③共産主義が崩壊した結果、世界中で中央集権制度が信用を失い、それが中国さらにはインドに至るまで、社会主義放棄に発展した。特に中国は政府命令から競売(auction)で物が決められるようになった。④住宅ブームは、共産主義の終焉で、開放された何千万の労働者が生まれたことが原因である、⑤この先数年間のうちに、インフレが抑えきれなくなるだろう。最近見られる中国からの輸入品の値上がりや長期金利の上昇は、早い段階に、そうなることを示唆しているとグリーンスパン氏は書いた。
さらに、現在、米国のインフレ率は、年2%をやや越えている。米FOMCは、1~2%の範囲内で収めようとしているが、それを実現するのであれば、フォード時代以降経験のない、二桁台の金利を余儀なくされるだろうと書いた。
10年物国債の利回りは、現在、年5%を以下である。2030年までの間で、平均すれば年4~5%であろうが、短期間でみれば、少なくとも8%台へ上昇する。それが、株価低迷と債券相場や住宅価格の値下がりをもたらすだろ。1997年初め、グリーンスパンは議会に対して、株バブルを抑えるために早期の利上げを進言した。インフレを主たる理由にした利上げに反対であると新著に書いた。
ペンギン書店は、グリーンスパン氏に、出版にあたり、800万ドル(9億円)以上前払いしたという。グリーンスパン氏の新著を、日本のマスコミも是非紹介して欲しい。(了)

ハイビスカス:住吉宮町六丁目
江嵜企画代表・Ken