国内最大私鉄K社株主総会風景
江嵜企画代表・Ken
創業明治43年(1910)、国内最大私鉄K社の株主総会が、大阪上本町6丁目にあるシエラトン都ホテル大阪で開かれるというので、はじめてだったがどんなやり取りがあるのかと興味深々で出かけた。
神戸からJRに乗り地下鉄を乗り継いで小1時間かかった。開始20分前だったが前のほうの席はまだ空席があった。いつものように座るなりスケッチを開始した。帰り会場出口で本日の参加者数はと聞いたら、2000人少し超えましたと親切に答えてくれた。
株主総会メインの第一会場と溢れた株主のために第二会場があらかじめ用意されていた。ひとしきり議事を進めた後恒例の質疑応答がはじまった。議事内容は配布された資料を読めばいい。関心があるのは株主が何を聞き、社長や会社の担当役員がどう答えるかである。
10数人が質問した。つまらない質問をする株主も居るが、これはどこの総会でも同じで、議長も心得たもので巧に捌いた。
第一会場で3名質問があり、それでは第二会場の株主さんどうぞと声をかけた。最初に立った株主は、①ガソリン代が上がったが、乗客の数は増えているか、②電力代の値上げが必至であるが、電力コストは全体のどれくらいを占めるのか,③海外からのツーリストは増えているか。具体的な誘致策は、④社債で資金調達しているが、いずれ金利が上がるが、利上げの対策はどうなっているかと理路整然と尋ねた。
運輸担当役員さんが答えた。①については、数字的にはまだ現れていない。車をやめればバスに乗るだろう。直に電車に反応しない。JRでも新幹線は増えているが、在来線は増えていない。②については、関西電力と中部電力から年間90億円買っている。11円/KHくらいになる。電気代は即コストに跳ね返る。全体のコストの5%を占める。ガソリン代が上がり現在44億払っているバスのコストも増えると答えた。ツーリストは別会社が鋭意工夫してがんばっている。
利上げ対策は、借入金の85%は5年固定金利だからそれまでは問題ない。その先はわからないと答えた。
当社の奈良駅と阪神三宮駅との間で列車相互直通運転が来年春に始まることで株主が質問した。当社は8両編成だが6両になるというが困ると訴えた。8両で阪神の尼崎まで行き尼崎で二両切り離す案もありまだ決まっていない。神戸乗り入れは大いに期待していると答えた。
当社の長距離特急が線路の様子を画面に映している。自殺を奨励しているようなものだから工夫して欲しいという依頼もあった。JRもほぼ毎日のように人身事故で遅延している。当社も最近特に自殺が増えていることを認めていた。
ある株主は、「当社は2010年9月14日に創立100周年を迎える。なにか株主に特別の恩典はあるのか」と聞いた。「まず財務基盤を強化する。21年度目標の計画達成をクリアしたい。その上で株主さんに何が出来るか慎重に検討したい」と担当役員はかわした。
社長が口を挟み、「現在3円の配当を100周年記念増配を考えているが、一年前倒しして今期末に5円配当に持っていきたい」と話したところ、拍手が起こった。
当社の株価は現在300円割れ寸前まで値下がりしている。質問も株価下落の責任を経営陣は取れという声も出た。「役員が17名は多い。報酬が高い。監査役5名は不要だ」などと辛らつな声が続いた。
株価低迷には「申し訳ない」と社長自ら詫びた。「土地についても前期できれいに出来た。トンネルの先に光が見えてきたと思っている。これからも当社を暖かく見守って欲しい」とはじめから終わりまで低姿勢だった。(了)