川本正一郎氏講演会風景
江嵜企画代表・Ken
母校先輩で「青木町づくり協議会」の世話役をしておられるKさんから「新しい都市づくりについて」と題して、国土交通省、都市局長、川本正一郎氏の講演会が6月29日にある。時間があれば聞きに行かないかと、声をかけていただき楽しみにして出かけた。いつものように会場の様子をスケッチした。
はじめに同窓会会長、西村貞一氏から、同窓会活動によりバリエーションを持たせるねらいから「同窓会会員交流会」なるものを立ち上げた。本日はその第1回目である。54回生、川本正一郎氏にはるばる東京から来てもらった。母校甲陽学院はあと4年で創立100周年を迎える。辰馬育英会の支援で体育館立て替え事業が進められている。諸先輩はじめ現役がしっかりとした歴史を刻んで来た。OBとしても同窓会を支えていきたいと挨拶があった。
川本氏は講演を引き受けたいきさつから話し始めた。今年1月に交流会世話役の先輩から「都市行政について、大阪の街づくりについても触れて欲しいと講演の依頼電話があった。講演はやらないことにしているので言葉を濁していた。ところが東京へ先輩に来られて引き受けたのが第一の失敗。いままで40分以上喋ったことがない。1時間30分話してくれと言われて、なんとなく引き受けたことが第二の失敗です、とユーモアたっぷりに話しははじまった。
お役人の話しは裃を着て堅苦しい。むつかしい話しが多いと相場が決まっている。ところが川本氏は違った。話しが実にうまい。分厚い資料を手許に用意していたが、原稿なし。配布資料もなし。もちろんプロジェクタ―も黒板も一切なし。ここだけの話しも入れて正味1時間半の講演を堪能した。
都市行政は1975年ごろから本格化した。一世帯一住宅を掲げ、田んぼを埋め立て、道路、下水道づくりがスタートラインだった。平成10年、小泉内閣の時に、都市再生構想が生まれた。いわゆる民活だ。それも基本は国内開発、骨格は変えて来なかった。
現状はどうか。地方に人が残っていない。高齢化がすごい勢いで進んでいる。新しい組み立てがうまくいかない。日本のマ―ケットがちじんでいる。所得も伸びない。人口も増えない。一方、その他アジアが急速に伸びて来ている。
人口10万の地方都市を例に取れば生産人口が減り、都市のまんなかが空洞化する現象が起こっている。宮崎市の例では15%が空き地だ。大阪も街づくりが北に集中、街の中心の空洞化が進み、大阪が全体としてまとまっていない。
大阪については特に辛口のコメントが続いた。このひ集まった40数人の名簿をみると建設関係の現役が目立ったが、大阪企業の同窓生は耳が痛かったに違いない。大阪の企業は本社を東京に移す会社が多いが京都、神戸はほとんどないと云うくだりが一番聞いていて面白かった。
1時間半の講演をとても書ききれない。一番印象的な言葉は「歩いて暮らす街づくり」だった。高齢化がどんどん進む。年寄りが安心して街を歩くことができなくなってきているからだ。
訪問介護の話しも出た。昔は医者が往診するのが当り前だった。いつのころからか往診が姿を消した。それに代わるものとしての訪問介護である。街の中に集団で介護医療を受ける施設の建設もアイデアとして求められるとの指摘もあった。
阪神青木駅の高架化が進んでいる。予定ではあと5年だが、50年来の事業が、阪神淡路大震災、3:11東北震災で遅れが出た。神戸市都市計画課が進める事業だが、子供も年寄りも安心して街を歩いて暮らす方向で街づくりが進められることを期待したいと、先輩のKさんと話しながら帰路についた次第である。(了)