学校で教えてくれない経済学
いま米国経済は、前門の虎(原油高騰)を追い払っても、
後門に狼(利上げ)を進めている状態に近い。
NY株式市場は、米国経済を写す鏡のような存在であるから
株式相場を見ていると米国が抱えている問題点を比較的
分かり易く説明してくれているようだ。
4月29日のNYダウは、原油相場が49ドル台へ急落したことを
好感して前日下げ幅をほぼ埋める、122ポイント反発、
10,192ポイントで取引を終了した。
4月27日のNYダウも、原油が予想以上の下げで、
株価は驚いて上げたという表現に近い。
ただNY株価は、前日下げた分を戻したに過ぎず、
4月に入ってからみれば、NYダウは311ポイト下げ、
Nasdaq指数も253ポイント下げているから
この先何が起こるかしれたものではない。
手離し楽観出来ないことは当然であろう。
ここ1年、原油マーケットは供給不安を材料に
上げてきた経緯がある。原油はいまその調整
過程であろう。値上げというゲームが終了した
具体的な徴候は見えていない。
原油相場が下げると、買い方はきまって、OPEC産油国に
原油増産余地が少ないことを材料にする。そして、
中国、インドの需要増を持ち出して相場を引き戻してきた。
株の売り方は、原油高騰が続けば消費者の節約心を
刺激して、個人消費減退から景気後退を売り材料に
利用してきた。
原油高騰が続けば、利上げスタンスを緩めぬ
米FRBを援護する。利上げ継続は、借金漬けの
米国経済にブレーキをかけると株の売り方は
売りに誘導する。
米FRBは、景気後退とインフレ懸念を天秤に
かけると、どうしてもインフレ退治に賛成票を投じる性癖が
伝統的にあると指摘して、売り方は、株の先行きを悲観的に
見ようとする傾向が強い。
今年1~3月期の米GDPは年率3.1%増と
米商務省は発表した。3月の米耐久材受注高も急減した。
4月第3週の新規失業保険申請件数も増加した。
にもかかわらず米FRBは、インフレ率が年2.2%と
ここ7年で最高となったと利上げ継続の姿勢をかたくなに
守っている。
それもこれも原油高騰が下地にあったからだろうが、
もし原油高騰に歯止めがかかれば、利上げムードは
気持ち後退すると買い方はいいたいようだ。
原油相場は、2004年はじめころから上がり始めた。
2004年秋に一端ピークをつけ、あと急落、2005年
4月1日に再び過去最高値のバレル57.27ドルを
記録した。
原油相場が、このところ落ちついているかにみえる。
現に、昨日のように急落すると買い方が色めきたつ
ところも責められない。
原油高騰という「前門の虎」がうしろを見せる気配が
多少とも見えたかもしれないが、虎がシッポを巻いて
退散するかどうか、はなはだ疑問であろう。
虎(原油)が逃げても、狼(米FRB)が利上げ
打ち止め感を出して来ない限り、NYダウの底が
見えないと主張してはばからない一部の
アナリストがいるのもうなずける。
なぜ米FRBの番人、79歳のアレン・グリースパン氏
は、利上げにかくも固執するのだろうか。
彼の人気は一向に衰えを見せていないと伝えられる。
よくやったという評価である。しかしこと任期ということになると、
余程の突発事件でもない限り、来年の1月で切れる。
米利上げは、ドル相場にも直接間接影響を与えている。
4月29日、NY為替市場では、ドルは対円で1ドル=104円台へ
値下がりした。しかし、対ユーロでは、1ユーロ=1.2896ドルと、
むしろドルは買われたから、横一線ではない。
ドルが対円で下げた背景は、中国人民元の
変動幅拡大が、円連れ高の連想を呼び、円が買われ
ドルが売られた面が強そうだ。
ドル安は輸入インフレを結果としてもたらす。
米FRBのグリーンスパン議長が、景気後退のリスクを
敢えて承知で利上げにこだわるのも歯止め無くドル安が
進むと輸入インフレがこわいからだと思われる。
利上げにより、海外から資金をアメリカに引き込み、
双子の赤字をバランスさせなければならない。
ドル安を阻止する劇薬が、景気を冷やすという
副作用には目をつむる止むを得ない選択であろう。
ユーロが売られたのは、米FRBの利上げテンポが
早まると見たかもしれない。
既定路線の「慎重なペース」(Measured Pace)
という文言が次回のFOMCの会合で外されるとする
見方が米金融関係者の間でにわかに台頭しているらしい。
そうなれば0.25,0.25刻みの呪縛から解き放たれて、
いつでも0.5%幅の利上げが可能となる。利上げを材料にした
ドル買いだ。
前門の虎(原油高騰)が逃げても、後門の狼(利上げ)が
きばをむいているように見える。
原油・為替・金利の三すくみ。いま正に米国で
デッドヒートしている話題である。
このような話題が、日本ではさっぱり取り上げられない。
日本という国の不思議である。(了)
いま米国経済は、前門の虎(原油高騰)を追い払っても、
後門に狼(利上げ)を進めている状態に近い。
NY株式市場は、米国経済を写す鏡のような存在であるから
株式相場を見ていると米国が抱えている問題点を比較的
分かり易く説明してくれているようだ。
4月29日のNYダウは、原油相場が49ドル台へ急落したことを
好感して前日下げ幅をほぼ埋める、122ポイント反発、
10,192ポイントで取引を終了した。
4月27日のNYダウも、原油が予想以上の下げで、
株価は驚いて上げたという表現に近い。
ただNY株価は、前日下げた分を戻したに過ぎず、
4月に入ってからみれば、NYダウは311ポイト下げ、
Nasdaq指数も253ポイント下げているから
この先何が起こるかしれたものではない。
手離し楽観出来ないことは当然であろう。
ここ1年、原油マーケットは供給不安を材料に
上げてきた経緯がある。原油はいまその調整
過程であろう。値上げというゲームが終了した
具体的な徴候は見えていない。
原油相場が下げると、買い方はきまって、OPEC産油国に
原油増産余地が少ないことを材料にする。そして、
中国、インドの需要増を持ち出して相場を引き戻してきた。
株の売り方は、原油高騰が続けば消費者の節約心を
刺激して、個人消費減退から景気後退を売り材料に
利用してきた。
原油高騰が続けば、利上げスタンスを緩めぬ
米FRBを援護する。利上げ継続は、借金漬けの
米国経済にブレーキをかけると株の売り方は
売りに誘導する。
米FRBは、景気後退とインフレ懸念を天秤に
かけると、どうしてもインフレ退治に賛成票を投じる性癖が
伝統的にあると指摘して、売り方は、株の先行きを悲観的に
見ようとする傾向が強い。
今年1~3月期の米GDPは年率3.1%増と
米商務省は発表した。3月の米耐久材受注高も急減した。
4月第3週の新規失業保険申請件数も増加した。
にもかかわらず米FRBは、インフレ率が年2.2%と
ここ7年で最高となったと利上げ継続の姿勢をかたくなに
守っている。
それもこれも原油高騰が下地にあったからだろうが、
もし原油高騰に歯止めがかかれば、利上げムードは
気持ち後退すると買い方はいいたいようだ。
原油相場は、2004年はじめころから上がり始めた。
2004年秋に一端ピークをつけ、あと急落、2005年
4月1日に再び過去最高値のバレル57.27ドルを
記録した。
原油相場が、このところ落ちついているかにみえる。
現に、昨日のように急落すると買い方が色めきたつ
ところも責められない。
原油高騰という「前門の虎」がうしろを見せる気配が
多少とも見えたかもしれないが、虎がシッポを巻いて
退散するかどうか、はなはだ疑問であろう。
虎(原油)が逃げても、狼(米FRB)が利上げ
打ち止め感を出して来ない限り、NYダウの底が
見えないと主張してはばからない一部の
アナリストがいるのもうなずける。
なぜ米FRBの番人、79歳のアレン・グリースパン氏
は、利上げにかくも固執するのだろうか。
彼の人気は一向に衰えを見せていないと伝えられる。
よくやったという評価である。しかしこと任期ということになると、
余程の突発事件でもない限り、来年の1月で切れる。
米利上げは、ドル相場にも直接間接影響を与えている。
4月29日、NY為替市場では、ドルは対円で1ドル=104円台へ
値下がりした。しかし、対ユーロでは、1ユーロ=1.2896ドルと、
むしろドルは買われたから、横一線ではない。
ドルが対円で下げた背景は、中国人民元の
変動幅拡大が、円連れ高の連想を呼び、円が買われ
ドルが売られた面が強そうだ。
ドル安は輸入インフレを結果としてもたらす。
米FRBのグリーンスパン議長が、景気後退のリスクを
敢えて承知で利上げにこだわるのも歯止め無くドル安が
進むと輸入インフレがこわいからだと思われる。
利上げにより、海外から資金をアメリカに引き込み、
双子の赤字をバランスさせなければならない。
ドル安を阻止する劇薬が、景気を冷やすという
副作用には目をつむる止むを得ない選択であろう。
ユーロが売られたのは、米FRBの利上げテンポが
早まると見たかもしれない。
既定路線の「慎重なペース」(Measured Pace)
という文言が次回のFOMCの会合で外されるとする
見方が米金融関係者の間でにわかに台頭しているらしい。
そうなれば0.25,0.25刻みの呪縛から解き放たれて、
いつでも0.5%幅の利上げが可能となる。利上げを材料にした
ドル買いだ。
前門の虎(原油高騰)が逃げても、後門の狼(利上げ)が
きばをむいているように見える。
原油・為替・金利の三すくみ。いま正に米国で
デッドヒートしている話題である。
このような話題が、日本ではさっぱり取り上げられない。
日本という国の不思議である。(了)