三すくみとは、新明解国語辞典(三省堂)によれば、
ヘビはナメクジを、ナメクジはカエルを、カエルはヘビを
互いに怖れるところから、三つのものが互いに牽制
しあって、積極的に行動できないこととある。
最近の米国経済を眺めていると、
原油の話題が後退し、金利が表に出て、
ドルに少し元気が出てきているような
雰囲気が出てきた。
米国では原油とドル相場は80年代から90年代を
通して多少のずれはあっても似たようなトレンドを
たどってきた。
ところがここ3年の動きを見ていると、
原油が上がればドルが下がり、ドルが下がれば
原油が上がる。
ところがドルがほぼ一貫して下げてきた性も
あるのだろうが、原油相場は一貫して上げて
来ている。
金利はカーター時代の年20%近い異常
高金利時代を別にして、手前数年はFFレートで
1%まで下げるなど異常な低金利が続いていた。
その異常金利の手直しが昨年夏以降始まり、
米国の現在のFFレートの目標金利は年2.75%まで
戻してきた。双子の赤字は一朝一夕では収まらない。
そうなればドル防衛、ドル安阻止の切り札として、
利上げが幅を拡大し、ピッチも上げるとの見方が
強まってもおかしくない。
このところのNY株低迷も、日経ダウの連日の安値も
米国の金利政策に微妙に影響されている可能性が
あるだろう。
原油相場は、軽質油WTI相場で見ると、
85年以降は湾岸戦争時期の一時的な高騰を
除けばバレル15ドル上近辺でむしろ低迷期が
長かった。
それが2000年頃から上げ始め、
例の9.11テロ事件以降からは上げ歩調に
転換した。
上げに転じたタイミングがドル安への潮目と
ほぼ一致している点が興味深い。
ドル安基調が鮮明になるたびに反比例的に
ドルは下がり、原油は上げて、ついに
昨年秋にはバレル57ドルまで上昇した。
「落ち着く」という言葉がある。
落ちつくとは、本来、落ちるところまで落ちて
これ以上落ちのない地点に到着して動けないという
意味だそうだ。
現在原油相場はバレル54ドル前後で
素人目には落ちついて来ているように見受けられるが、
原油専門家は、むしろこれから下げ相場に転じ、
バレル40ドル程度でそこではじめて
落ちつくと見ている。
落ち着くという言葉通りでいえば、原油相場は
まだ落ちるところまで落ちていない。座りの悪い
状態にあると原油専門家は見ているのであろう。
原油相場に限らず商品相場全般にも上げ一服感が
強い。中国買いの熱気が高原状態は続くものの、
2003年,2004年と火の玉のように燃え盛って行った
勢いはないと見られている。
ドル相場の方はどうか。
対ユーロで1ドル=1.30ドル近辺で、
対円で1ドル=106円前後で落ちつくか
いまひとつはっきりしない。
金利の方はどうか。
米FRB(連邦準備制度理事会)が先のFOMC
(連邦公開市場委員会)レポートのなかでインフレ懸念を
指摘してから、米国では金利に先高観が強まってきたようだ。
エコノミストの見方では、米国のFFレートは、
年末には4%、公定歩合5%で落ちつくだろうという。
一時3.5%で打ち止めとの見方が大勢だった。
利上げへのアクセルで、景気面でのリスクはあるが、
ドル投資に金利差による利回り魅力が生まれ、
ドル堅調を支援するだろう。昨今のような
世界的な金余り時代では、実需で動くより
どうしても投機的に動き易い。
世界の流れは利上げである。ところが日本では
あい変わらずゼロ金利である。
日本では、新聞、テレビが取り上げれば良し悪し
関係なしに事態は展開する。
日本がゼロ金利から一向に腰を上げないのも、
マスコミが取り上げないから、世間も騒がない。
世間が騒がないから、国会でもゼロ金利について、
詰めた議論何ひとつやろうとしない。
自分のふところ先の預金金利は
ゼロに不満でも、会社に帰れば労働組合は
ゼロ金利賛成である。
帰るのは家であって会社でない。それが会社に
帰るという。自分の健康を犠牲にしてまで、
滅私奉公を営々と続けている人が多い。
話を戻す。
物の値段は基本的には需給関係で決まる。
原油相場がOPECの減産・増産で左右され難くなったのは
OPECの生産余力が少なくなったからであろう。
原油高騰は、中国需要堅調に支えられた面が強いが、
供給面で、OPECの裁量権に陰りが出てきたことが
大きく影響している。
需給で動くよりも、これからの原油相場は、ドル相場に
より連動して動く可能性があることを見ておく必要がありそうだ。
ドル相場も、地政学的要因にも、大きく影響されるが、
基本的には需給で動く。
ドルを売りたい数が買いたい数を上回っていたから
米国の双子の赤字を売り材料に下げてきた。ところが、
最近の流れはユーロを売り、ドルを買う数が増えてきた。
ユーロ安には、EUが、3月20日、財政赤字を国内総生産
(GDP)比3%以内に維持するが、ルールに風穴を開けることを
決めたことが響いている。
景気浮揚に赤ランプが点灯した東ドイツを助けるためだ。
東西ドイツの格差是正を大義銘文にして、
財政赤字幅GDP比[3%以上」枠外OKを出した。
これこそ蟻の一穴であろう。ポーランド、ハンガリーなど
これから東欧の仲間が次々ユーロに参加する。
厳しい市場の目がユーロの行き先を見逃すはずはない。
それでユーロ売りが加速した。
財政協定「3%以下」という厳格なルールがあるから
ユーロも輝いて見えた。それが歯止めを外した。
ドル建て資源国はドル目減りに耐えられない。そこで
「避難先」としてのユーロが美人に見えたのだろう。
外貨準備高をドルからユーロへ一部であろうが、
中国、インド、ロシアなどが鞍替えしたという情報が
流された。ユーロ買いを刺激して意図的に流した
かもしれない。
ユーロのあばたもえくぼに見えた。最近のドル堅調の
裏には買われすぎたユーロ高騰の反動が出ている。
恋が冷めればえくぼもあばた。
相場の世界の常であるが、流れが変われば、あれこれ
理屈を並べてはドルを買わそうとするであろう。
潮目の変わり時には特段の警戒が求められる。
米国経済は、原油・ドル・金利の三すくみ。
郵政民営化も結構だ。ライブドアも大事だろう。
しかしながら、いま日本という国は、政治、経済、
教育あらゆる局面で重要な曲がり角に
立たされているように思えてならない。
マスコミも国会も日本という国の行く末を
深く見据え、腰を入れた議論をして欲しい。(了)
ヘビはナメクジを、ナメクジはカエルを、カエルはヘビを
互いに怖れるところから、三つのものが互いに牽制
しあって、積極的に行動できないこととある。
最近の米国経済を眺めていると、
原油の話題が後退し、金利が表に出て、
ドルに少し元気が出てきているような
雰囲気が出てきた。
米国では原油とドル相場は80年代から90年代を
通して多少のずれはあっても似たようなトレンドを
たどってきた。
ところがここ3年の動きを見ていると、
原油が上がればドルが下がり、ドルが下がれば
原油が上がる。
ところがドルがほぼ一貫して下げてきた性も
あるのだろうが、原油相場は一貫して上げて
来ている。
金利はカーター時代の年20%近い異常
高金利時代を別にして、手前数年はFFレートで
1%まで下げるなど異常な低金利が続いていた。
その異常金利の手直しが昨年夏以降始まり、
米国の現在のFFレートの目標金利は年2.75%まで
戻してきた。双子の赤字は一朝一夕では収まらない。
そうなればドル防衛、ドル安阻止の切り札として、
利上げが幅を拡大し、ピッチも上げるとの見方が
強まってもおかしくない。
このところのNY株低迷も、日経ダウの連日の安値も
米国の金利政策に微妙に影響されている可能性が
あるだろう。
原油相場は、軽質油WTI相場で見ると、
85年以降は湾岸戦争時期の一時的な高騰を
除けばバレル15ドル上近辺でむしろ低迷期が
長かった。
それが2000年頃から上げ始め、
例の9.11テロ事件以降からは上げ歩調に
転換した。
上げに転じたタイミングがドル安への潮目と
ほぼ一致している点が興味深い。
ドル安基調が鮮明になるたびに反比例的に
ドルは下がり、原油は上げて、ついに
昨年秋にはバレル57ドルまで上昇した。
「落ち着く」という言葉がある。
落ちつくとは、本来、落ちるところまで落ちて
これ以上落ちのない地点に到着して動けないという
意味だそうだ。
現在原油相場はバレル54ドル前後で
素人目には落ちついて来ているように見受けられるが、
原油専門家は、むしろこれから下げ相場に転じ、
バレル40ドル程度でそこではじめて
落ちつくと見ている。
落ち着くという言葉通りでいえば、原油相場は
まだ落ちるところまで落ちていない。座りの悪い
状態にあると原油専門家は見ているのであろう。
原油相場に限らず商品相場全般にも上げ一服感が
強い。中国買いの熱気が高原状態は続くものの、
2003年,2004年と火の玉のように燃え盛って行った
勢いはないと見られている。
ドル相場の方はどうか。
対ユーロで1ドル=1.30ドル近辺で、
対円で1ドル=106円前後で落ちつくか
いまひとつはっきりしない。
金利の方はどうか。
米FRB(連邦準備制度理事会)が先のFOMC
(連邦公開市場委員会)レポートのなかでインフレ懸念を
指摘してから、米国では金利に先高観が強まってきたようだ。
エコノミストの見方では、米国のFFレートは、
年末には4%、公定歩合5%で落ちつくだろうという。
一時3.5%で打ち止めとの見方が大勢だった。
利上げへのアクセルで、景気面でのリスクはあるが、
ドル投資に金利差による利回り魅力が生まれ、
ドル堅調を支援するだろう。昨今のような
世界的な金余り時代では、実需で動くより
どうしても投機的に動き易い。
世界の流れは利上げである。ところが日本では
あい変わらずゼロ金利である。
日本では、新聞、テレビが取り上げれば良し悪し
関係なしに事態は展開する。
日本がゼロ金利から一向に腰を上げないのも、
マスコミが取り上げないから、世間も騒がない。
世間が騒がないから、国会でもゼロ金利について、
詰めた議論何ひとつやろうとしない。
自分のふところ先の預金金利は
ゼロに不満でも、会社に帰れば労働組合は
ゼロ金利賛成である。
帰るのは家であって会社でない。それが会社に
帰るという。自分の健康を犠牲にしてまで、
滅私奉公を営々と続けている人が多い。
話を戻す。
物の値段は基本的には需給関係で決まる。
原油相場がOPECの減産・増産で左右され難くなったのは
OPECの生産余力が少なくなったからであろう。
原油高騰は、中国需要堅調に支えられた面が強いが、
供給面で、OPECの裁量権に陰りが出てきたことが
大きく影響している。
需給で動くよりも、これからの原油相場は、ドル相場に
より連動して動く可能性があることを見ておく必要がありそうだ。
ドル相場も、地政学的要因にも、大きく影響されるが、
基本的には需給で動く。
ドルを売りたい数が買いたい数を上回っていたから
米国の双子の赤字を売り材料に下げてきた。ところが、
最近の流れはユーロを売り、ドルを買う数が増えてきた。
ユーロ安には、EUが、3月20日、財政赤字を国内総生産
(GDP)比3%以内に維持するが、ルールに風穴を開けることを
決めたことが響いている。
景気浮揚に赤ランプが点灯した東ドイツを助けるためだ。
東西ドイツの格差是正を大義銘文にして、
財政赤字幅GDP比[3%以上」枠外OKを出した。
これこそ蟻の一穴であろう。ポーランド、ハンガリーなど
これから東欧の仲間が次々ユーロに参加する。
厳しい市場の目がユーロの行き先を見逃すはずはない。
それでユーロ売りが加速した。
財政協定「3%以下」という厳格なルールがあるから
ユーロも輝いて見えた。それが歯止めを外した。
ドル建て資源国はドル目減りに耐えられない。そこで
「避難先」としてのユーロが美人に見えたのだろう。
外貨準備高をドルからユーロへ一部であろうが、
中国、インド、ロシアなどが鞍替えしたという情報が
流された。ユーロ買いを刺激して意図的に流した
かもしれない。
ユーロのあばたもえくぼに見えた。最近のドル堅調の
裏には買われすぎたユーロ高騰の反動が出ている。
恋が冷めればえくぼもあばた。
相場の世界の常であるが、流れが変われば、あれこれ
理屈を並べてはドルを買わそうとするであろう。
潮目の変わり時には特段の警戒が求められる。
米国経済は、原油・ドル・金利の三すくみ。
郵政民営化も結構だ。ライブドアも大事だろう。
しかしながら、いま日本という国は、政治、経済、
教育あらゆる局面で重要な曲がり角に
立たされているように思えてならない。
マスコミも国会も日本という国の行く末を
深く見据え、腰を入れた議論をして欲しい。(了)