写真を本格的に学びたいと思ったとき、Avモード(絞り優先AE)やTvモード(シャッタースピード優先AE)を選ぶと出てくる数値の意味が全然わからないとか。
Avモードの場合出てくる「f5.6」などという半端な数字の意味は専門的な書籍を読んでもあんまり理解出来ないこと、結構多いんじゃないかなと思うのだ。
Tvモードでも同様で、「1/125秒」とか「1/15秒」の相関関係とかがモヤモヤしている人多いと思う。
まず手始めにシャッタースピードの数字の説明をしてみたいと思う。
Tvモードで出てくる数字の「シャッタースピード」というのは日本語に置き換えてみると「露出時間」と言うことになる。
イメージセンサーに光を当てる「時間」を示しているわけですね。
シャッタースピードの数値の基本は「秒」で、1秒を基本として、その半分が1/2秒、さらに半分が1/4秒、そのさらに半分が1/8秒という風に、いわゆる倍数系列で表記されているわけです。
「あれ、おかしいじゃないか。125とか500は
1の倍数2の乗数なんかじゃないぞ。」そう思ったあなた、大変良い質問ですね。(池上彰風)
本来の倍数系列であれば、1/8の次は1/16、さらに続けると1/32、1/64、1/128、1/256、1/512、1/1024、といった数になるはずです。
ところがTvモードで出てくる数字では、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125、1/250、1/500、1/1000、となっています。
この微妙な違いは何なのかというと、実は昔のカメラがこうした表記をしていたために、慣習として倍数とは微妙に違う表記をしているだけなんです。
なので、実際のシャッタースピードというのは、1/15と表示されていても本当は1/16で、1/30と表示されていても本当は1/32で、1/125と表示されていても本当は1/128で、1/250も1/256で、1/1000も1/1024を意味するものなのです。
昔のカメラがこうした妙な数字系列で表記されていたため、慣習的に今でも本来のシャッタースピードの数値とは異なる数値で表記され続けているというのが、シャッタースピードの数値の正体なのです。
次に絞りの数値の説明をしてみましょう。
絞りというのは、絞り羽根という複数枚の薄い板で構成され、レンズの中を通る光の量を調節するためのもので。絞りの数値というのは、レンズの焦点距離に対する絞りの穴を「前から見たときの見かけ上の直径(*注1)」との比率を表したものです。(ちょっとややこしい。)
絞りの数値の基本は焦点距離と絞りの穴の直径が同じ場合をf1として、その半分をf2、そのまた半分をf4と表記するわけです。
実例を挙げると、50㎜レンズでf2だったら絞りの穴の直径は50÷2で見かけ上の絞りの大きさは25㎜。f4に絞れば絞りの穴の直径は50÷4なので12.5㎜になる。(ただし、レンズの解放F値の場合は小文字ではなくて大文字の「F」で表記されることが多い。)
でも、Avモードで出てくる絞りの数値って、そんなに倍数系列になんかなってなくて、妙な小数点とかついていたりしますよね。f5.6とかf1.4なんてふうに。
絞りの数値というのは、あくまで絞りの穴の直径を表しているだけなので、絞りの穴の大きさが半分になると、穴の面積は1/4になるため、光の量も1/4になってしまいます。
そのため、シャッタースピードの数字列と同じように光の量を半分ずつの系列にするためには、絞りの穴の直径を1/2ではなく、1/1.141421356つまり「1/√2」にしなければならないのです。
実際の数値で言えば、f1に対して光の量を半分にするためにはf1.41421356…にする必要があるのです。
で、小数点以下2桁以下が面倒臭いので省略してf1.4などという中途半端な数値が出てくるのです。
この理屈で数列をならべると、f1、f1.4、f2、f2.8、f4、f5.6、f8、f11、f16、f22、f32という風になるわけです。
これで絞りの数列をシャッタースピードの数列と同じように「光の量が半分ずつ」に出来るので、シャッタースピードを一段早くした場合には、絞りを一段開ければ同じ露出が得られるようになっているのです。
もう少し具体的に例を挙げると、
絞りがf2.8でシャッタースピードが1/500秒の場合、絞りを3段絞ってf8にしたらシャッタースピードを3段遅く1/60秒にすれば、同じ露出のまま絞りとシャッタースピードの組み合わせを変えることが出来るわけです。
このように露出を変えることなく絞りとシャッタースピードの組み合わせを変えることで多彩な写真表現も可能になるのですが。実際の撮影ではむやみに絞りを絞り過ぎるとシャッタースピードが遅くなり過ぎて手ブレの影響を受けてしまうので、ISO感度を高くするとか、三脚などを用いてカメラを固定するなどの工夫も必要になってくるのです。
ついでに言うと、ISO感度も倍数系列なので、ISO感度を倍にした場合、絞りを一段絞るか、シャッタースピードを一段早くすれば同じ露出が得られるのです。
絞りの数列は覚えずらいと思うでしょうけれども、こればっかりは慣れるしかないですね。本当ならカメラの方に絞りの数列が全部表示されていて、ダイヤル操作で矢印が移動するような形であれば絞りの数値をいちいち暗記する必要性もなく直感的に絞りを操作出来るようになるんだと思うんですけどね。そういうのはカメラメーカーさんにみんなで要望しましょう。
液晶パネルの端に予め絞りの数値が書いてあっても良さそうですけどね。
それこそ「書いてあるだけ」でも初心者にはかなり便利な気がするので、液晶保護フィルムの上から貼る透明な絞り数値表シールとかカメラ雑誌に付録でつければ良いんじゃないのかな。
*注1:写真用光学レンズというのは複数枚の光学ガラスレンズから構成されており、必ずしもレンズ内部に組み込まれた絞り羽根の物理的な穴の大きさが光の量とは相関しません。また、「前から見て見かけ上」というのも、ズームレンズなどではズームした場合に見かけ上変化したり、広角レンズなどでは後ろから見た絞りの見かけ上の大きさが異なったりする場合もあります。 また、絞りの穴の大きさを「瞳径(ひとみ けい)」と呼ぶこともあります。
ついでにもひとつ、
シャッタースピード優先AEの「Tv」は、"time value"の略で、
絞り優先AEの「Av」というのは、"aperture value"の略です。
apertureの意味については
こちらをご参照下さいませ。
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