今回はフローダイバーターと外科手術の比較について紹介します。
日本ではすでに3種類のフローダイバーターが使用可能ですし、治療数も年々増加しています。一方、この新しい治療法が良いのか、従来の外科手術が良いのか、直接比較したデータはありませんでした。
今回紹介する論文は、これら2つの治療法を比較した臨床研究です。患者さんをランダムにそれぞれの治療法に割り付け、治療結果(患者さんの状態)と動脈瘤が治癒したかどうかが比較されています。
全体の症例数は101例でフローダイバーター群に55例、外科手術(バイパス術)群に56例が割り付けられています。その後、この2群の中でマッチングをして40例ずつを選び出して比較がなされています。
その結果、フローダイバーター群の97.5%(40例中39例)で予後良好であったのに対して、バイパス術群では80%(40例中32例)で予後良好でした。この結果から、統計学的に有意にフローダイバーター治療の方が結果が良かったことになります(p = 0.029)。
一方、動脈瘤の完全閉塞率については、治療1年後の時点でバイパス術群では97.5%、フローダイバーター群では 65%と明らかにバイパス術群で良い結果でした(p = 0.001)。
以上から、動脈瘤の完全塞栓率は低いものの、術後の患者さんの状態はフローダイバーター治療の方が良かった、ということになります。
ただし、この論文にはいくつかの問題点があります。その中で最も大きな問題は、ランダムに振り分けたのにも関わらず、2群間に大きな差があったため、そこから40例ずつを抜き出して比較しなければならなかったことです。このためにこの論文はトップジャーナルに掲載されなかったものと考えます。
一方で、この論文から学ぶべきこともあります。バイアスが存在する可能性はあるものの、背景に差のない2群間の比較結果で、フローダイバーター治療の方が治療後の患者さんの状態が良かったことです。フローダイバーター治療後、動脈瘤の完全消失率は年々上昇することが知られており、数年間で差はもっと小さくなることが予想されます。
今後、さらに質の高い研究がなされている可能性がありますが、現時点での比較として最も信頼できる研究を紹介させていただきました。皆様のご参考となれば幸いです。