雀の手箱

折々の記録と墨彩画

地に燃える紅葉

2019年12月17日 | できごと



 夜来の時雨に濡れて一入の鮮やかさをました紅葉が美しく、足を止めました。こうした風情を美しいと感じるのは、日本人独自のものかもしれないと、ふと頭をよぎるものがありました。
 かつてアメリカからの来客を案内して久住を訪れた折、霧雨に煙る水墨画のような山並みを前に 感動する私を不思議がられた思い出が蘇ったのです。

 陽が照って落ち葉が乾けば、大量の片付けが待っていますが、「林間煖酒焼紅葉」(林間に酒を煖ためて紅葉をたく)ことは叶わず、今は市役所のゴミ処理のお世話になるより仕方がないわけですが、しばらくはこの風景を秋の余韻と楽しむことにします。



師走の月

2019年12月10日 | できごと


 今年の紅葉は例年からは随分遅れました。冴えない黒ずんだ色のまま落ち葉になるのかと思っていましたら、この二三日の4度とか5度といった1月並みの冷え込みで一気に鮮やかに色づきました。朝と夕方、また日によっては全く違った表情を見せてくれます。足元では満天星の紅葉も今が盛りです。
 門の前の大きな椎の樹が半分になったので、遠くからも鮮やかな色づきが目につきます。
 借景の銀杏も、並木の銀杏はすっかり葉を落としているのに、ここでは今が黃葉の盛りで、見事なコントラストです。
 夕刊を取りに出て、東の空に丸い月を眺めました。外灯に照らされた紅葉の老樹の狭間に覗く月はまるで琳派の画題のようですが、師走の冴え冴えとした姿で、今宵は一点の雲もなく、満月に近い月はいっそ清々しいものでした。

 こうした風景を目にするとき、いつも思い出すのは、去来抄の中で、猿蓑選の折、芭蕉と去来、凡兆の間に交わされた其角の句に対しての問答です。
 この句の月は上弦の月ではないかと勝手に陋屋の門に注ぐ月光に想像を逞しくしてみるのも愉しいものです。


 
此木戸や錠のさゝれて冬の月   其角