車で家から5分足らずの隣町、水巻町で文化連盟二十五周年記念に能楽鑑賞の会がありました。呼び物は野村萬斎さんの狂言「附子」でした。
二部構成で実施され、一部は無料の、町民対象の能楽教室風のもので、我が国の伝統芸能に親しんでほしいという強い意気込みを感じました。
プログラム一部は、初めにこの町に残る立屋敷の砧姫伝説に基づく「砧の響き」と題した創作劇で、能楽師による本格的な面をつけた形で能の「砧」が取り入れられ、背景に朗読の会の方による語りが流れ、伝説の八釼神社の樹齢1800年という大銀杏の幻想的な映像が映し出されていました。
砧打つ音を表現する子供たちの太鼓が最後を盛り上げていました。
「いざ!謡わん 能楽謡隊―うたいタイ―」と記された二番目は、二曲あって、子供の部は「鶴亀」大人の部は「土蜘」一部が謡われました。
子供たちは3歳から中学生までが参加した大合唱で、昨年7月から稽古を積んだ「鶴亀」が無本で全曲謡われました。揃いの着物に袴をつけて背筋を伸ばして舞台に緊張して正座した姿は立派なものでした。
最後は能楽師シテ方の佐野 登氏による「わかりやすい能楽」で、第二部で上演される「土蜘」の解説と、ここで用いられるツレの装束の着付けを、希望者を募って舞台に上げ、鬘、鬘帯をつけ、赤襟、唐織の着流しの着付けをし、面をつけるところまでを実演されました。 こうした試みで日本の古典芸能を体験をすることは、情感の滋味となって今は意味も分からず謡っていたとしても、いつか何かの折に花開くことでしょう。関係者各位の努力を尊いものに思いました。
会の趣旨から選定された曲目は入門の手ほどきにふさわしく派手で、わかりやすい有名なものでした。
二部のプログラム 舞囃子 「砧」 武田孝史
狂言 「附子」 太郎冠者 野村萬斎 次郎冠者 深田博治
主 高野和憲
能 「土蜘」 シテ前・後 佐野 登 頼光 和久荘太郎 ほか
早打 野村萬斎