雀の手箱

折々の記録と墨彩画

後の月のころ

2018年10月26日 | すずめの百踊り
 今年は片見月にならずに済みました。先月の中秋の名月は、ちらと深夜に垣間見たお月様でしたが、後の月、十三夜は琳派の月を思わせる黄金色の大きな顔を宵のうちから拝むことができ、25日の満月も晴れ渡る空にかかる見事なお月様でした。

 家居のつれづれに身辺のものを片端から写して遊んでいます。片づけねばならない事柄は限りなくあるというのに、手を付けられずに溜息ばかりついています。


 








今回は横書きのものだけをUPしました。

  うしろ姿は勝気な角度十三夜    楸邨

  旅心いづこに仰ぐ後の月     汀子

  一滴の目薬に澄む後の月     蓬風 

秋を写す

2018年10月18日 | すずめの百踊り
   











 懸念していたとおり、週に2回の博多通いはやはり無理だったようようで、情けないことになかなか疲れが取れません。このところの急激な温度差に体がついてゆけなくて、厚着をしてしのいでいます。起床時は13度、昼間は25度の差は、正直堪えます。

 家に篭っていると、本を読むのに倦むと絵筆に逃避することが多くなり、冴えない作品?が多くなるみたいです。通称(平太郎)で、お酒のつまみに好んでいたオキヒイラギの干物は、最近まったく見かけなくなりましたが、どこへ行ってしまったのでしょう。想い出のおつまみです。



 
 お口直しの1枚は遠賀川河川敷のコスモスです。秋櫻とはよく名づけたもので、今日は近くの金山川でもコスモスまつりで、賑わうことでしょう。 

薪能 「葵上」古式

2018年10月16日 | できごと


 久しぶりの薪能でした。福岡シンフォニーホールのコンサートホールに設定された能舞台で、照明を落とした暗がりに篝火(ガス)を焚いての演能です。
 先ず狂言の「千鳥」が上演され、シテの太郎冠者を人間国宝の山本東次郎師が、アドの酒屋を山本則俊師が演じられましたが高齢のご両所の動きは軽く、よく通る声にも張りがあり、シテの何とかしてあるじの使いを果たさんものと津島祭の話を取り上げ子供たちが千鳥を捕る様子や、流鏑馬の仕草、など調子よく囃しながら隙を狙って酒樽を持ち去ろうとする物まね芸が見ごたえがありました。
 休憩を挟んで、火入れ式があり、以後は篝火の灯りのもと、「葵上」の上演でした。源氏物語に題材を取った幽玄の世界は、優美高雅なものが多い中で。この曲目は趣を異にし、六条御息所という貴婦人の凄惨な嫉妬を写した曲です。
 光源氏の正妻葵上が物の怪に苦しんでいる枕辺に、照る日の巫女の呪文と、梓の音に導かれて現れ出たのは御息所の生霊でした。華やかであった昔も今は衰え、源氏の君との仲も途絶えた恨みの数々を述べ、巫女の制止を振り切り病臥した葵上を扇で打ち、さらに連れ去ろうとして姿を消します。 中入りの後、豪華な壷折の衣装は鬼女の面と三角鱗に緋の袴に変わり錫杖を手に、召された横川の小聖の加持と渡り合い、やがて五大明王の名を唱えての祈りに打ち伏せられて、さすがの怨霊も心を和らげて成仏して立ち去るという変化に富んだ筋書きです。
 古式で上演されるのを拝見するのは初めてでした。葵の上を象徴する赤の小袖が正面に述べられるのは定式どおりですが、御息所を深く傷つけたかつての賀茂の葵祭の折の「車争い」の場面の破れ車の作り物が出ることと、御息所に青女房のツレが出るのは初めてでした。観世元正師や、梅若六郎師の御息所とはまた違った若い背の高い観世喜正師のシテのこれからが楽しみです。夢見心地で博多を後にしました。








Windous7のセキュリティーのバージョンアップをしたため動作がおかしくなり更新ができないでいました。やっとほぼ正常に戻ったようで、遅れながらの記録を留めました。


福島善三展

2018年10月11日 | できごと


 このところ私の体調が回復してきているのを知ってか、弟から迎えに行くから出かけないかと誘いがありました。お世話になっている整形外科の先生とご一緒に、福岡三越へ出かけてきました。人間国宝認定記念の企画展です。台風一過の心地よい快晴に恵まれた2年ぶりの博多天神は歩きにくいほどの人出でした。
 中野飴釉や赫釉、鉄釉といった多彩な福島先生の作品の中でも、中野月白青瓷の凛とした気品あるたたずまいに惹かれて、私は自分用のぐい飲みと湯呑をもとめていました。特別な折のお酒の味わいを格別にしてくれる少し大ぶりのものを愛用しています。
 今回は世に問う記念の個展ですから、広い会場は大作が中心で、宮内庁お買い上げのものと同じ窯の大皿や、暦年の受賞作品が並び華やいだ会場は 最終日にも関わらずかなりの来場者でした。
 まだ50代の若さもあってか、気さくな福島先生ご夫妻は終始和やかに歓談されていました。盛会のお祝いを申し上げ、小石原への再訪をお約束して会場を後にしました。







私の秋の七草

2018年10月04日 | 日々好日
 萩が花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また 藤袴 
朝顔の花

 山上憶良が旋頭歌で数えた万葉集のよく知られた七草で、捨てがたく納得するものです。私もこれに倣って自分なりの好みでしばしば秋の七草を選んで愉しみます。
 今年の私の「七草」は、
 尾花、吾亦紅 水引草 野菊 彼岸花 赤まんま 仙人草 です。
 萩は年により仙人草と入れ替わります。
 齢を重ねるうちに好みがはかなげな風情のものが多くなっていくようです。自身でも変化してゆくのに興があります。若いころの、秋桜(コスモス)や竜胆、桔梗などが消えて、赤のまんまや吾亦紅が定着しましたが、彼岸花は画題に好むからでしょうか、華やかな中に何か哀愁を感じて今も健在です。
 先日、私の七草を聞いた友人に教示されたのは、昭和10年に日日新聞が企画して当時の七名家にそれぞれの一種ずつを持ち寄ってもらい七草を選んだことがあったのだそうです。教わった通りに次に挙げておきます。

   長谷川時雨  雁来紅(けいとう)
   菊池 寛   秋櫻(コスモス)
   齋藤茂吉   曼珠沙華(彼岸花)
   高浜虚子   赤まんま(いぬたで)
   牧野富太郎  菊
   与謝野晶子  おしろい花
   永井荷風   秋海棠(断腸花)
 

 並べてみると、選んだ人のキャラクターとよく釣り合っているようにも思えてきます。
 吉井勇や北原白秋といった方ならなるほどと思ったでしょうが、斉藤茂吉が彼岸花を挙げているのが、ちょっと意外でしたが嬉しくなりました。

 ところで、わが七草、万葉集や新七草とどうしても重複してしまうもの>があるのですが、知らなかったこととして、あえて挙げておきます。並べてみると、やはり田舎暮らしの選択です。あなたの「七草」に選ばれる草々は?