雀の手箱

折々の記録と墨彩画

虚しき時計

2010年05月29日 | 塵界茫々
 亡き姑が親しく往き来していた家が2軒、今は住む人が居なくなっています。T家はあるじの趣味が庭木の剪定と盆栽で、玄人はだしの腕前をいつも羨ましく拝見していました。奥様の介護疲れから寝込まれて今は病院に入られたと聞いています。門からのアプローチの片側に棚を組んで並べておられた盆栽が、まばらになっているのは、人にあげられたのでしょう。遺された盆栽は赤茶けた無惨な姿です。松も芽を摘む人もなく伸び放題になって荒れています。
 もう1軒のほうは、今日通りがかりにみると、時計草が誰に時を報せるでもなくフェンスに一杯に咲きこぼれていて、ひとしお哀れを誘います。
 多分この家のおばあさまと格別の仲よしだったので、わが家のを株分けして姑が持参した分だろうと思います。皆さん次々に亡くなられて、隣県に嫁いだ娘さんがたまに帰ってこられて風を通しておられるようです。わが家を含めて高齢者だけの住いが多い地区ですから、今後もこうした家が増えるのではないでしょうか。

 先日来入院中のデジカメが、丁寧な包装で返送されてきました。「電子部品の電気的接続不良によりCCD回線が正常動作しませんでしたので、CCD基板を交換致しました。」と報告書に記されていました。
 電話で応対された通り、返送料まで含めて総て無料でした。このご時世、稀有のことと驚いています。
 もし、次回購入があるとすれば、フジフイルムFINEPIXを選択しないと義理が立たないと言い合っています。調子も上々で、色のバランスも具合がよくなっています。
 早速、試し撮りをかねての今時のわが庭の周辺画像です。

今日の庭小景
<<MARQUEE id="vs2" scrollamount="3" direction="up" onmouseover="this.stop()" onmouseout="this.start()" height="380">
■時を報せるあるじなき時計草■
■お盆のお供え用のほおずき■
■上品な香をただよわせる梅花空木■
■お彼岸のころ花を咲かせたユスラ梅の今■
■今年初めて仲間入りした可憐な姫ヒオウギ■
■毎年律儀に立ちあがるタチアオイ■
<</MARQUEE>
<<INPUT type="button" value="オンマウスで上へ"style="font-size:9pt; color:blue" onmouseover="vs2.direction='up'"><<INPUT type="button" value="オンマウスで下へ"style="font-size:9pt; color:blue" onmouseover="vs2.direction='down'">


季節を彩る

2010年05月26日 | すずめの百踊り




 毎年描く薊ですが、今年の分から3枚です。(クリックとWクリックでどうぞ)
 裏の斜面には、一面に蛍袋がたわわに花をつけてうつむいて揺れています。今日は一日雨に打たれて重たげに頭を垂れています。

  雨は午後から上がり、盛りの白い花をつけている柑橘の甘く爽やかな香を五月の風が運んで、「昔の人の袖の香ぞする」とばかりにかぐわしく薫っています。かすかな遠い思い出もよみがえる午後です。









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楽しみ

2010年05月22日 | すずめの百踊り
 先日、月例の絵の稽古が終った後、弟の窯場に出かけて、友人達と絵付けをさせてもらいました。
 勧められるままに各自何枚か絵付けした中から、秀品?を展示して窯開きとします。

 邪魔にもせず、快く自分の作陶した皿に絵付けをさせてくれる弟に一同大感激でした。満ち足りた思いで、焼き上がりを期待しながら話が弾む帰途でした。来月あたりかと思っていましたら、早々に焼きあがってきました。また一段と賑やかな話が弾むことでしょう。

 ただいま私のカメラは入院中です。焼きあがった皿を撮影中、遂に突然ダウンしました。そのため一部の作品ですがUPしておきます。
 愛用のデジカメは、持ち主同様、年を経て不具合を抱えていました。購入した7年前からみれば、半値近くでもっと高性能のカメラが買えますが、新しい機種に慣れるまでのストレスが辛いので、たいした費用もかからないようなら修理することにしました。それに、この7年間の歓びと悲しみを滞りなく記録してくれた愛しい友です。さて、診断はどう出るのでしょう。

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 やきものの写真が撮れないので更新も思うに任せずにいましたが、サービスセンターから、無償で修理できますと電話があり、大喜びで返送される1週間を待っています。

みまき会の小さな旅

2010年05月16日 | 雀の足跡
 毎年1回、母方の従兄弟の集まり「みまき会」を続けてきました。最高齢は山口県光市から参加する92歳です。一番若い奈良から参加の妹も還暦を迎えましたから、推して知るべしの高齢者グループです。数年前までは夫婦参加で二十数名の賑やかな団体でした。山陰の油谷温泉に1泊して、金子みすずの生地、仙崎まで足を延ばして散策を楽しんだりしたものです。
 この間に他界し遠く旅立つもの、病を得て長距離のマイクロバスを敬遠して欠席となるものもあり、今回は16人参加という寂しさです。バスも小型になりました。なるべく近い温泉地というので、当番が選んだのは連休明けの大分県天が瀬温泉野高台にある宿でした。
 ともあれ、会えば、幼い日に戻って、上下の関係も、利害関係もない年の差だけの間柄で、楽しく会食します。かつてとは打って変わった酒量の減少で、1本ずつの宿のサービスのお酒で大方事足りる侘しさです。

 筑後小郡のインターで高速を下りて最初に立ち寄ったのは、昨年オープンした太刀洗平和記念館です。西日本における陸軍の航空拠点で、大正8年開設の飛行場がありました。ここで訓練を受けた航空兵がこの飛行場から特攻出撃し、また知覧はじめ各地へ配属されていったものです。18歳前後の若い兵士ちの残した遺書も展示されていて涙を誘います。館内には、今では唯一の現存機である零式艦上戦闘機三二型が展示されています。
 昭和20年3月米軍の大空襲でこの地は壊滅的な被害を受け、多くの命が失われました。
 お互いに戦時下を生き抜いてきた身には、万感の想いがこみ上げ、この尊い犠牲の上に今の平和があることが身にしみて、みな口数が少なくなっていました。
 お昼は田主丸の「和くら野」で昼食です。元禄12年創業の酒蔵で利き酒をしながら食もすすみました。みんなお酒の土産を買い込んでいました。天ヶ瀬への道筋で、天領日田の原次郎左衛門の味噌醤油蔵に立ち寄り、天瀬には4時近くの到着でした。

 快晴に恵まれた二日間、帰途は童話の里、玖珠から緑一色で、この季節は紅葉の時期と違って人の気もない深耶馬渓の一目八景で一休みし、名物の蕎麦饅頭をいただき、耶馬溪に出て、中津経由で帰宅しました。途中、夏場所中のことだし「双葉の里」に寄って行こうということになり、生地の小さな藁屋の記念館に立ち寄りました。4時前の早い帰着でしたが京都からの連続の旅で少々疲れました。

 旅の途中で目に止まった小景から5点をUPします。

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<太刀洗平和記念館の零戦'>



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耶馬溪案内2枚

樂美術館

2010年05月15日 | 雀の足跡



 樂美術館は、相国寺から、元気な人なら歩いてもたいした距離ではないところにあるのですが、寺の門を出たところで車が拾えたので、樂美術館で開催中の春期特別展の「樂歴代展」を見て行くことにしました。主な出品作は、
       初代長次郎作 黒樂茶碗   銘 面影
       田中宗慶作  黒樂茶碗   銘 いさらい
       二代常慶作  香炉釉井戸茶碗
       三代道入作  赤樂茶碗   銘 山人
       四代一入作  樵乃絵黒樂茶碗   名 山里
       五代宗入作黒茶碗 
 以下、現在の十五代吉左衛門に至る樂家の450年間を支えてきた歴代当主たちの代表作の茶碗の展示です。
 樂を好む夫が、珍しく立ち寄りを主張してお付き合いしました。私には五代あたりまでの茶碗が好ましく思えました。
 志野や信楽が好みなのですが、使い込まれた古いものには、きりっとした気品があるものもがあり、良いなと足が止まるものものがありました。



承天閣の柴田是真

2010年05月12日 | 雀の足跡

 6日はゆっくりして遅めの朝食の後、予定していた相国寺の承天閣美術館へと車を走らせました。

 ここでは柴田是真の漆工芸品と漆絵展が開催されています。一般には余り知られていない作家ですが、日曜美術館のアート・シーンで取り上げられたときから、巡回を心待ちにしていました。たまたま検索していて見かけた「京都であそぼう」という記事に、アンケートとコメントを入れていたところ抽選に当選、招待券を送ってくださいました。


 




 相国寺は、予ねて若冲と深いゆかりの寺ですから、是非ともゆっくり訪ねたかったお寺です。
 同志社大学に隣接する広い境内には、多くの塔頭があり、夢窓疎石が開山の禅寺ですから簡素ながらも風格のあるお寺です。如拙や雪舟といった画僧を輩出しています。(昨日の等伯は「自雪舟五代」せっしゅうよりごだいを名乗っています。)
 車は相国寺の門の内、承天閣の前まで入ってくれました。美術館らしからぬ寺院の入り口では靴を脱いでそのままの入館でした。
 図録を見ると東京展よりも少し作品が少ないような気がしますが、それでも二つに分かれた展示室に、併せて百点近く、画帖の70点余も加えると大掛かりなものでした。

 (この展覧会に関しては、相国寺のホームページに画像の大きなものや詳しい解説がありますので詳細はそちらでごらんください。)

 江戸っ子らしいきりりとした洒落とモダンなデザイン、発想のユニークに見とれました。
 墨彩画にもそのまま“いただき“のヒントもあって、人もそれ程多くは無くて肩肘張らずにゆっくり楽しめました。

 ホームページに紹介されたものの他にも、私のハンドルネームの「ふくら雀」が、ちょこんと嘴の出た愛らしい顔の背に、菊花文の金銀蒔絵をのっけた根付の姿で並んでいました。(4,1x3,8x1,9cm)


 再現の夕佳亭茶室(相国寺・鹿苑寺)の玉座の間におかれた鉄刀木の煙草盆、流水に蝙蝠をモダンにデザインした欅の木目をいかした角盆などが目を惹きました。
 第二展示室には思いもかけず、肩入れの若冲、鹿苑寺大書院障壁画「葡萄小禽図床貼付」と「月夜芭蕉図」三の間の床貼付に対面できて、予定の時間を大きくはみ出して至福のときを過ごしました。
 会場には変り漆の製作工程も、未知の世界ながら、青海波塗り、紫檀塗り、青銅塗り、と細かく解説してありました。

相国寺・承天閣美術館  相国寺本堂  鐘楼の三枚です。クリックとwクリックでどうぞ

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「待合掛」展

2010年05月11日 | 雀の足跡
5日は、正午に京都に到着、そのままホテルに直行し、昼食のあと部屋に荷物を置いて、細見美術館で開催中の「待合掛」展をみることにしました。

 京都国立博物館の「長谷川等伯」展がメインなので余り大きな展覧会見学は避け、こじんまりした細見美術館が、博物館への道なりでもあり、4時半までの時間をつぶすのに最適と判断しました。
 老いて茶道入門した夫にも興味があるだろうという判断からです。ここで待合掛けの小品以外に芦屋釜が展示されていて、思いがけない嬉しい出会いがありました。
 重要文化財の「豊公吉野花見図屏風」が特別展示されていたのですが、こちらは大きさと描き込みの丹念な仕事を感心して眺めただけで待合掛けの小品に集中しました。

 細見美術館のことで若冲の小品も出ていました。図録で見てイメージを借りて描いたことのある抱一の寒牡丹図、其一の笹雛図(笹舟に菜の花の塊りを顔に見立てて挿したもの)や描き表装の新年の掛け物、雪佳の竜胆、宗達の初期の扇面、団扇に描かれた秋草なと四季折々が表現された、こじんまりと纏った展示でした。

 人の影もまばらで落ち着いた雰囲気の美術館の午後を堪能してお茶の後京都博物館へと向いました。





芦屋釜・霰地楓鹿図真形釜(重要文化財)

京都とびめぐり

2010年05月10日 | 雀の足跡


 8日から予定されている"みまき会"参加の都合で、G・Wの最終日の5日に1泊で京都に行く羽目となりました。
 というのも、長谷川等伯展の会期を、勝手な思い込みで23日までと思っていて、連休があけ、葵祭が終わってから出かけるつもりにしていました。まさか会期が27日間とは思わず妹に誤りを指摘され、一旦は縁が無かったと諦めていました。
 楽しみにしていたのを知っている夫がつきあうから出かけようと誘ってくれて、慌しい旅立ちでした。



 会期が短いため、連日入館待ちの行列で、時に二時間待ちもあると聞かされ、覚悟していましたが、開館時間が1時間延長されて7時までになっているのを利用して、4時半過ぎに到着と予定したのが効を奏し、待ち時間は5分足らずでした。
 二人とも故障をもつ身ですから、はじめから10点くらいに的をしぼってみてまわり、時間を決めて落ち合うことにしました。私は「松林図屏風」とか「枯木猿猴図」がお目当てでしたが、やはり、等伯のこと、途中、予定していなかった「萩芒図屏風」の前で足が止まり、溜息をつきながら、一面の薄原の線の多彩をなぞっていました。萩屏風も琳派先駆をおもわせて、それとは異なる華麗で豪壮な反復するパターンのなかを、風が吹き抜けていました。

 最後の部屋に置かれた松林図は、予想どおりの迫力で、日本水墨画の最高峰の名にそぐわない堂々とした姿で待っていてくれました。人垣が途切れるのを待ってご対面しましたが、なぜか一番に訴えてきたのは悲しみの情感でした。荒々しく激しい筆捌きで風に耐える松の葉を微妙な変化で描きつくし、大きな空間が語りかけたのは悲しみでした。
 まだ書き足りないのですが、分厚い図録を楽しみながら当分の間反芻する至福の時間が待っていますので、また項をあらためて記すことにします。



 萩芒図屏風をUPしたかったのですが、図録のススキは色も線も実物とは 異なったものに見えますので除外しました。
 大きく美しい画像は京都国立博物館のホームページでごらにただけます。

トバタアヤメ

2010年05月01日 | すずめの百踊り

 この季節になると鉢に上げられるトバタアヤメが、花を開き始めました。
 草丈は20センチたらずで、花も葉の影に隠れるように咲き、普通のアヤメよりずっと小型です。花の季節が終わるとまた雨落ちの、もとの居場所にもどされます。
 かつて戸畑の原野に自生していて、絶滅したと思われていた「伝説の花」です。今年2月新種と認定され、晴れて、学名「イリス・サンギニア・バラエティー・トバタエンシス」と命名され、和名「トバタアヤメ」となりました。
 今月の県政便りにも大きく紙面を割いて紹介がされており、戸畑の地では 「戸畑あやめまつり」も計画されているようです。
 世界に認知された新種は今年からは株分けされて、どうやら、雨落ちの定位置から昇格しそうです。