昨晩のTVニュースで井上ひさしさんが亡くなられたことを知りました。子供たちと“ひょっこりひょうたんじま”や”ねえ、ムーミン“を歌った日を、そして、数多くの戯曲や小説の場面がよぎりました。
享年75歳、私より5歳年下です。ヘビースモーカーで、肺がんの治療中とは知っていましたが、「遅筆堂」と名乗る方にそぐわない早すぎる幕引きです。
近年の護憲運動や、九条の会の中心メンバーとして、現代社会への発言も多かった作家でした。
江戸戯作者を髣髴させる軽妙な語り口で、笑いのなかに多くの人を誘い込んでゆきながら、いつの間にか、待てよと考えさせられる鋭い切っ先があり、人間の生きるせつなさのようなものが提示されていました。
新聞の文化面で目にした年表を見て、60余の戯曲、小説での受賞の数々、文化功労者にも選ばれておいでなのを知りました。
朝日新聞社から出た“日本語相談“でも、日常生活から生まれる読者の疑問に回答する井上さんの回答は、大野晋、丸谷才一氏らの中にあって、ユニークで分かりやすいものでした。見掛けとは裏腹の日本語に対して、厳しい感覚で磨かれた文章には学ぶところの多かった作家でした。
繰り返し口にされていた「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに書く」の主張が紡ぎ出した多くの作品でした。
手元にある“不忠臣蔵”“吉里吉里人”などを並べて、ご冥福を祈りました。
囀りがやっと美しい音階を持つようになった鶯が今日はことのほかいい音色で囀り交しています。