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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ハロルド・ヴィック/ステッピン・アウト

2024-04-01 20:40:44 | ジャズ(ソウルジャズ)

50年代後半のハードバップ黄金時代を支え続けたブルーノート・レコードですが、60年代に入ると新たな路線を模索し始めます。一つがモード~新主流派路線でウェイン・ショーター、ジョー・ヘンダーソン、ハービー・ハンコックらで、評論家からはジャズの王道として高く評価されています。一方、もう一つの路線であるオルガン入りのソウルジャズは、後世のジャズファンからは無視されることが多いです。売り上げ的にはむしろこちらの方が高かったにもかかわらずです。まあ確かに特に60年代後半のソウルジャズにはダンスフロアを意識し過ぎた軽薄な作品が多くあるのも事実ですが、聴き応えのある作品も少なからずあります。本作「ステッピン・アウト」はそんな作品の一つ。リーダーであるハロルド・ヴィックはジャック・マクダフのグループのレギュラーメンバーとしてプレスティッジに多くの録音を残しています(「クラッシュ!」参照)が、自身のリーダー作はブルーノートに残した本作が初です。録音年月日は1963年3月27日。メンバーはブルー・ミッチェル(トランペット)、グラント・グリーン(ギター)、ジョン・パットン(オルガン)、ベン・ディクソン(ドラム)です。

全6曲。うち1曲だけスタンダードの”Laura”が入っていますが、後はヴィックのオリジナルです。その”Laura”も内容的には取り立てて特筆することもなく、中盤の箸休め的な存在です。何と言っても聴きどころはソウルフルなナンバーの数々。1曲目の”Our Miss Brooks”から濃厚なソウルジャズの世界が広がります。レイジーなテンポで悠然とブロウするヴィック、ホーンライクなグリーンのギター、アーシーなパットンのオルガン。ブルー・ミッチェルもこの曲ではソロを取りませんが、他の曲ではファンキーなトランペットを聞かせてくれます。5曲目"Vicksville"やラストの”Steppin' Out”もR&B色の強いナンバーです。その一方、2曲目”Trimmed In Blue”や4曲目”Dotty's Dream”はそこまでコテコテではなく、ややモーダルな雰囲気も漂わせており、当時のブルーノートの空気感が感じられるようです。

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ケニー・バレル&ジャック・マクダフ/クラッシュ!

2024-03-06 21:12:37 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日はケニー・バレルをご紹介します。バレルについては以前「ブルージン・アラウンド」をご紹介しましたが、私にとってナンバーワン・ジャズ・ギタリストです。バレルはとにかく多作なことで知られており、ブルーノートやプレスティッジを中心に数々のセッションに参加し、ハードパップの屋台骨を支えました。一方、バレルはいわゆるソウルジャズとも親和性が高く、ジミー・スミス、フレディ・ローチ等オルガン奏者との共演も多くあります。本作「クラッシュ!」はプレスティッジを代表するオルガン奏者、ブラザー・ジャックことジャック・マクダフとの共演作です。録音年月は1963年1月8日と2月26日。メンバーはバレル、マクダフに加え、ハロルド・ヴィック(テナー)、ジョー・デュークス(ドラム)、レイ・バレト(コンガ)です。

内容ですが、1曲目”Grease Monkey”はダンスフロア向けのソウル・ジャズで、さすがにポップ過ぎますね。2曲目のスタンダード”The Breeze And I”も軽めの演奏。3曲目が本作のハイライトであるホレス・シルヴァー作”Nica’s Dream”。レイ・バレトの野生的なコンガに煽られるように、マクダフ→バレル→ヴィックが熱のこもったソロをリレーしていきます。4曲目”Call It Stormy Monday"はコテコテのブルースで、マクダフの糸を引くようなオルガンソロの後、バレルが十八番のブルージーなソロを聴かせます。5曲目はガーシュウィン・ナンバーの”Love Walked In”。この曲だけカウント・ベイシー楽団のフルート奏者エリック・ディクソンが参加しており、曲調もスインギーです。ラストの”We’ll Be Together Again"はほぼマクダフとバレルのデュオでスローバラードをムードたっぷりに演奏します。以上、決して名盤とは言えませんが、気軽に楽しめる一枚だと思います。

 

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シャーリー・スコット/クイーン・オヴ・ジ・オルガン

2021-02-18 17:00:55 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日は女流オルガン奏者シャーリー・スコットのインパルス盤をご紹介します。本ブログでも夫であるスタンリー・タレンタインのページ(「ディアリー・ビラヴド」「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」)で取り上げましたね。1950年代後半から名門プレスティッジに多くの録音を残し、リーダー作だけでも20枚を超える売れっ子でした。オルガン奏者としては性別の括りを超えてジミー・スミスに次ぐ人気だったと言っても過言ではないでしょう。デビュー当初はエディ・ロックジョー・デイヴィスと共演することが多かったですが、1960年にタレンタインと結婚してからは夫婦で多くの共演作を残しています。契約の関係もありブルーノートから発売されるものはタレンタイン名義、プレスティッジとインパルスから発売されるものはスコット名義ですが実質は2人の共同リーダー作と言って差し支えないと思います。本作は1964年12月にニュージャージー州にあるクラブで録音されたライブ盤です。メンバーはスコット(オルガン)、タレンタイン(テナー)、ボブ・クランショー(ベース)、オーティス・フィンチ(ドラム)です。

曲は全5曲。ただし、最後の”The Theme”は1分だけのエピローグのようなもので実質は4曲です。1曲目はスタンダード”Just In Time”でのっけからタレンタインのテナーが絶好調です。ライブと言うこともあってかいつも以上にブリブリ吹きまくっているのですが、決して野暮ったくはならずメロディのツボはしっかり押さえています。スコットのオルガンソロも充実しているのですが、どちらかと言うとアルバム全体を通じてタレンタインの目立ち度の方が高い気がしますね。2曲目はエリントン・ナンバーの”Just Squeeze Me”でこちらは落ち着いたバラード演奏で、出来はまずまずと言ったところ。3曲目の”Rapid Shave”は他では聞いたことがない曲ですがおそらくはR&Bナンバーでしょう。これぞソウルジャズと言ったノリノリのナンバーです。4曲目”That's For Me”はロジャース&ハマースタインのミュージカル曲。どちらかと言うとマイナーな曲ですが、ここではミディアムテンポで料理されています。タレンタインの歌心あふれるマイルドなテナーとスコットのオルガンが醸し出す快適なグルーブ感が最高です。以上、スコットのリーダー作ではありますが、タレンタインのファンも必聴の1枚です。

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フレディ・ローチ/グッド・ムーヴ

2020-11-16 12:51:40 | ジャズ(ソウルジャズ)

前回のベビーフェイス・ウィレットに引き続き、本日もブルーノートのオルガン・ジャズを取り上げます。フレディ・ローチに関しては以前に「ダウン・トゥ・アース」でも取り上げました。一応ジャンル的にはソウル・ジャズになるのでしょうが、単なるノリ重視のR&B風の演奏に終始せず、ハードバップ的な要素も感じられます。1963年発表の本作も基本メンバーはローチ(オルガン)、エディ・ライト(ギター)、クラレンス・ジョンストン(ドラム)から成るオルガン・トリオですが、8曲中4曲でテナーとトランペットを加えたクインテット編成となっており、しかもそれがハンク・モブレーとブルー・ミッチェルと来れば、ハードバップ愛好者も思わず食指が動いてしまいますよね。

実際、クインテット編成の曲はマイナーキーのハードバップ”When Malindy Sings”、ローチ自作曲で哀愁漂う”On Our Way Up”と佳曲揃い。リチャード・ロジャースの知られざるスタンダード”Lots of Lovely Love”も軽快なハードバップに仕上がっています。ブルー・ミッチェルはともかくハンク・モブレーとオルガンの組み合わせは異色ですが、ローチのオルガンと違和感なく馴染んでいます。一方、トリオ編成の方もバラエティ豊かで、エロール・ガーナ―作の美しいバラード”Pastel”、サイ・オリヴァー作の軽快な”'Tain't What You Do”と魅力的なナンバーが揃っています。ギトギトしたR&B系が苦手と言う人にもお薦めできる良質のソウル・ジャズです。

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ベビーフェイス・ウィレット/ストップ・アンド・リッスン

2020-11-13 06:34:29 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日はオルガン・ジャズを取り上げたいと思います。先日のジミー・スミス「ザ・チャンプ」の項でも解説しましたが、スミスの登場によりそれまでジャズの世界では日陰者扱いだったオルガンが俄然注目を浴び、各レーベルともスミスに次ぐ新たなオルガン奏者を探し始めます。動きが早かったのはプレスティッジの方で、ジョニー・ハモンド・スミス、ジャック・マクダフ、女流のシャーリー・スコットらと次々と契約。ソウル・ジャズ路線を確立していきます。一方のブルーノートはスミスという安定したドル箱収入があったせいか、しばらくは他のオルガン奏者とは契約せず。スミス以外で初めて契約したのがこのベビーフェイス・ウィレットです。ベビーフェイスと言うのはもちろんニックネームで、本名はローズヴェルト・ウィレット(これはこれでインパクトのある名前ですが・・・)と言い、シカゴでジャズやR&Bを演奏していました。1960年にニューヨークに出て来て、翌年1月にルー・ドナルドソンの「ヒア・ティス」、グラント・グリーンの「グランツ・ファースト・スタンド」に参加。同じ月に自身名義の「フェイス・トゥ・フェイス」、5月に本作「ストップ・アンド・リッスン」を録音します。と、ここまでは怒涛の勢いですが、ブルーノートでの活動はそこでプッツリと途切れ、その後はシカゴに戻ってアーゴ・レーベルから2枚の作品を出しただけで、1971年に37歳の短い生涯を終えます。一瞬の輝きだけを残してシーンから姿を消したウィレットですが、ブルーノートのオルガン・ジャズ路線の先鞭を付けたと言う点では確かな足跡を残したと言えるでしょう。彼に続いてジョン・パットン、フレディ・ローチ、ラリー・ヤング、ロニー・スミス、ルーベン・ウィルソンらが次々と登場し、60年代ポスト・バップ期のブルーノートを支える存在となります。

メンバーはウィレット(オルガン)、グラント・グリーン(ギター)、ベン・ディクソン(ドラム)から成るトリオです。名義上のリーダーが違うだけで「グランツ・ファースト・スタンド」と全く同一メンバーです。特にグリーンとは上記のブルーノート4作品全てで共演しており、完全に”ニコイチ”状態ですね。曲は全7曲で、ウィレットのオリジナルとスタンダードが半々ずつです。歌モノスタンダードは"Willow Weep For Me"と”At Last”の2曲で、特に後者が出色の出来です。”At Last”はもともとミュージカル・ナンバーでグレン・ミラーが好んで演奏していたそうですが、前年にR&B歌手のエタ・ジェイムズがヒットさせており、本アルバムの演奏もそちらを意識したようなソウルフルなバラード演奏です。ジャズ曲だとナット・アダレイのファンキーな”Work Song”、ベニー・ゴルソンの”Blues March”をほぼ丸パクリした”Soul Walk”もキャッチーな出来ですね。自作曲は3曲ですが、中では”Jumpin' Jupiter”が全編ノリノリのファンキー・ナンバーで楽しめます。演奏面ではリーダーであるウィレットのソウルフルなオルガンもさることながら、グラント・グリーンも同じぐらいの存在感を発揮しており、彼のホーンライクなギター・プレイも存分に味わえる1枚です。

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