ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ラロ/ヴァイオリン協奏曲第1番

2018-02-20 23:43:46 | クラシック(協奏曲)
本日はエドゥアール・ラロのヴァイオリン協奏曲をご紹介します。ラロと言えば「スペイン交響曲」が圧倒的に有名ですが、実際は交響曲と題しながらヴァイオリンを主楽器にした協奏曲と言うことまではクラシック好きなら皆知っているところです。ところがラロにはもう1曲正真正銘のヴァイオリン協奏曲があると言うことはあまり知られていないのではないでしょうか?「スペイン交響曲」に先立つこと2年の1872年に作曲したこの曲は、伝説的ヴァイオリニストであるサラサーテに捧げられ、彼の演奏による初演は大成功を収めたとか。ところがその後「スペイン交響曲」がさらなる成功を収めると、次第にこの第1番は陰に隠れ、すっかり目立たない存在になってしまいました。

とは言え、曲自体はとても良いですよ。「スペイン交響曲」ほど濃厚ではありませんが、伝統的なヴァイオリン協奏曲に比べて何となく異国情緒があふれているのは祖父の代までスペイン人だったと言うラロの血のせいでしょうか?第1楽章は序奏こそ重々しいですが、その後にはねるようなリズムの明るい第1主題が現れます。中間部の美しい第2主題も素晴らしいですね。続く第2楽章は穏やかな緩徐楽章で、ヴァイオリンが夢見るような美しい旋律を奏でます。第3楽章はスペインの民族舞踊を思わせるようなエキゾチックかつ華やかな雰囲気にあふれています。



CDですが、「スペイン交響曲」はたくさん名演が残されているのですが、残念ながら「第1番」の方はほとんど出回っていません。かろうじて手に入るのがこのCDで、オーギュスタン・デュメイのヴァイオリン、ミシェル・プラッソン指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団のものです。「スペイン交響曲」とセットになっており、むしろそちらの方がメインでしょうが、この「第1番」の方も単なるおまけ以上の魅力を放っています。デュメイは現在関西フィルハーモニーの音楽監督も務めて、日本のクラシックファンにもすっかりおなじみですが、録音当時(1989年)は40歳でヴァイオリニストとして脂の乗り切った頃の演奏です。「スペイン交響曲」の代表的名盤としても知られているので、作曲家ラロの魅力を知るには最適の1枚と言えます。
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エルガー/チェロ協奏曲

2018-02-13 22:30:05 | クラシック(協奏曲)
先日UPしたヴァイオリン協奏曲に引き続き、エルガーのチェロ協奏曲をご紹介したいと思います。この曲も以前に聞いた際は「何か暗い曲やなあ」と言う感想で、深く聴きこまずに中古屋に売り払ったのですが、ヴァイオリン協奏曲と同様にじっくり耳を傾けるとなかなか充実した内容でした。どうもエルガーと言えば「威風堂々」と言うあまりにも有名かつキャッチーなメロディな曲があるせいで、明るく力強いイメージを持たれがちですが、それは彼の一面に過ぎないようですね。むしろ交響曲や協奏曲は重めの作品が多いです。

第1楽章はいきなり重苦しいチェロの音色がメランコリックな主題を奏でます。この曲の印象を決定付ける暗~い始まり方ですが、そこからオーケストラも加わり盛り上がっていくところがドラマチック。続く第2楽章はチェロがせわしなく不安げな旋律を奏で、途中歌うような明るい旋律が何度か顔を出しますが、また最初のせわしげな旋律に戻ります。第3楽章アダージョはこの曲で唯一穏やかで美しい旋律で箸休め的な存在です。第4楽章は再び重苦しい展開で、チェロとオーケストラが執拗に同じ主題を繰り返し、8分過ぎからは美しい旋律も現れますが、最後は再び冒頭の主題が現れ、そのままクライマックスを迎えます。以上、全体を通して本当に暗~い曲なんですが、それがまたチェロの重低音という特性を活かしていて、随所にドラマチックな展開もあり、聴けば聴くほど味わいの出てくる曲と言えます。



CDですが、ジャクリーヌ・デュプレが60年代に残した演奏が決定版として広く出回っていますが、私が買ったのは最近の録音でイギリスの若手チェリストのナタリー・クラインがヴァーノン・ハンドリー指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団と共演したものです。このアルバムにはチェロ協奏曲以外にもエルガーの小品が6曲も収録アルバムされており、なかなか魅力的です。もともとはピアノやヴァイオリン等他の楽器のために書かれた作品ですが、チェロ用に編曲され、クラインも見事に弾きこなしています。一番有名なのは「愛のあいさつ(Salut d'Amour)」ですが、チャーミングなメロディの「気まぐれ女(La Capricieuse)」、爽やかな風景が脳裏に広がる「朝の歌(Chanson de Matin)」もとても良いと思います。
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ウォルトン/ヴァイオリン協奏曲

2018-02-09 22:42:03 | クラシック(協奏曲)
先日、エルガーのヴァイオリン協奏曲をUPしましたが、同じくイギリスの作曲家であるウィリアム・ウォルトンの作品をご紹介したいと思います。ウォルトンはエルガー、ヴォーン=ウィリアムズ、ブリテンらと並んでイギリスを代表する作曲家の一人ですが、日本での人気は低いですね。エルガーには「威風堂々」、ヴォーン=ウィリアムズには「グリーンスリーヴス」、ブリテンには「戦争レクイエム」と言った代表曲があるのに対し、ウォルトンにはこれと言った有名曲がないのが原因かもしれません。1902年生まれの1983年没ということで、時代的には完全に現代の作曲家ですが、いわゆる現代音楽の要素はあまりなく、わかりやすい作風を持ち味にしているようです。ジョージ6世の戴冠式のために書かれた戴冠行進曲「王冠」や、もともと映画音楽のために書かれたと言う「スピットファイア」を聴いたことがありますが、どちらもメロディがわかりやすく勇壮なイメージの曲ですね。ただ、音楽的な深みには欠けるなあと言うのがこれまでの私の印象でした。

その点、このヴァイオリン協奏曲は展開もドラマチック、かつ現代音楽にありがちな難解さが比較的少なく、非常に充実した内容と言っていいのではないでしょうか?特に第1楽章が素晴らしく、ゆったりしたテンポから哀愁たっぷりの泣きのヴァイオリンが入ってくるあたりが最高です。第2楽章は現代的かつ鋭利な響きで幕を開けますが、途中で歌うような旋律が現れます。演奏記号にalla napolitanaとありますのでウォルトンが当時住んでいた南イタリアの民謡風の響きです。第3楽章は幻想的なイメージで始まり、途中でやや現代的な響きも挟みながら、最後は再び冒頭の泣きの旋律が登場し、そのままクライマックスへと向かいます。



CDですが録音が非常に少なく、おそらく国内盤で容易に手に入るのはこの諏訪内晶子のCDぐらいではないでしょうか?シベリウスのヴァイオリン協奏曲とセットになったもので、もちろんシベリウスの方がメインでしょうが、カップリングにウォルトンを持ってきたのがなかなか渋いチョイスですね。指揮者はフィンランド人のサカリ・オラモ、オケはイギリスの名門バーミンガム市交響楽団と言うことで、フィンランド+イギリスという選曲になったのかもしれません。シベリウスのヴァイオリン協奏曲についてはあえてここでは触れません。私の大好きな曲でベートーヴェン、ブルッフと並んで個人的3大ヴァイオリン協奏曲の一つに数えています。ここでの演奏も素晴らしいの一言です。実は諏訪内晶子のCDを買うのはこれが初めてで、ジャケ写を見ればわかるように美人ヴァイオリニストとして昔からメディアによく取り上げられていましたが、演奏の方も文句の付けようがないですね。こりゃ人気も出るわなと今さらながら納得。いつか生で聴いてみたいものです。
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