ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第5番&第6番

2020-07-24 07:45:15 | クラシック(室内楽)

約2ヶ月ぶりのブログ更新です。今回は珍しく室内楽で、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番「幽霊」とピアノ三重奏曲第6番をご紹介します。ベートーヴェンは生涯に7曲のピアノ三重奏曲を完成させましたが、最も有名なのが第7番「大公」で私も既にコレクション済みです。今日ご紹介する第5番「幽霊」はその次くらいでしょうか。第6番は特に愛称が付いてないことからもわかるように地味で取り上げられる機会はあまりありません。2曲とも1808年の作曲です。この頃のベートーヴェンは前年に交響曲「田園」を、翌年にピアノ協奏曲「皇帝」を発表するなど創作活動が一つのピークに差し掛かっていた頃で、本作もピアノ、ヴァイオリン、チェロのコンパクトな編成ながら内容的には大変充実しています。CDはダニエル・バレンボイム(ピアノ)、ピンカス・ズーカーマン(ヴァイオリン)、ジャクリーヌ・デュプレ(チェロ)の豪華トリオによる1969年の録音です。当時夫婦だったバレンボイムとデュプレは当然のことながら息ぴったりですし、そこに若き日の名手ズーカーマンも加わり素晴らしいハーモニーを奏でています。

 


まずは第5番から。「幽霊」という愛称はベートーヴェンが付けたものではなく、後世に付けられたものです。第2楽章の始まりが不安を煽るようなものだったからとか由来は諸説ありますが、正直聴いても「どこが?」と言う感じです。確かに第2楽章は静かで暗めではありますが、別に不気味というほどではありません。まあ日本語の幽霊と言うとどうしてもお岩さん的なおどろおどろしいイメージを思い浮かびますが、西洋のゴーストだと少し違うのかも?いずれにせよ、暗めの曲調は第2楽章だけで、第1楽章なんて冒頭からエネルギッシュな始まりですし、第3楽章も伸びやかで開放的な雰囲気で、全体的には明るめの作品です。

続く第6番は第5番「幽霊」とほぼ同時期に発表された兄弟的な作品ですが、有名な「幽霊」と「大公」の間に挟まれて存在感の薄い作品です。ただ、聴いてみるとそんなことはなく、内容的には全く遜色ない出来の傑作です。全体的に穏やかな曲調で派手さはありませんが、旋律はどれも美しいです。特に子守唄のような優しい旋律の第3楽章と天国的な雰囲気に満ち溢れた第4楽章が出色の出来です。

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メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番

2014-10-19 11:35:56 | クラシック(室内楽)
最近これまであまり聴いてこなかった室内楽作品をちょこちょこ聴くようにしていますが、やはり根本的にオーケストラ作品の方が好きなのかグッと来る作品にはなかなかめぐり合わないですね。音のダイナミックさにどうしても欠ける分、よほどメロディがしっかりしてないと引き込まれないです。その点、今日ご紹介するメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲は親しみやすいメロディの宝庫で、室内楽が苦手な人にも取っつきやすいのではないでしょうか?第1楽章は冒頭こそ哀愁に満ちた旋律で始まりますが、続いて夢見るような美しい主題が現れます。第2楽章も優しく穏やかなアンダンテ。第3楽章は浮き立つようなスケルツォで弦楽器とピアノの掛け合いが絶妙です。第4楽章は一転して激しめの演奏で情熱的なフィナーレを迎えます。



CDはアンドレ・プレヴィン(ピアノ)、チョン・キョンファ(ヴァイオリン)、ポール・トルトリエ(チェロ)によるトリオのものを買いました。トルトリエのことは恥ずかしながらあまり知りませんでしたが、指揮者でも活躍するプレヴィンと世界的ソリストのチョンの組み合わせは豪華そのものですね。1978年の録音ということで、2人とも若い!なお、本CDにはカップリングでシューマンのピアノ三重奏曲第1番も収録されています。こちらもロマン派を代表するピアノ三重奏曲とのことですが、メンデルスゾーンの作品に比べるとかなり落ちる気がします。特に第2楽章、第3楽章は全体的に不安げな旋律で取っつきにくいです。最終楽章だけは華やかな雰囲気で救われます。
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ベートーヴェン/七重奏曲&六重奏曲

2014-10-16 10:00:37 | クラシック(室内楽)
交響曲・協奏曲はじめオーケストラ作品に圧倒的な名作が多いベートーヴェンですが、本人は室内楽やピアノ曲にも等しく情熱を傾けていたようで、膨大な数の作品を残しています。ただ、私自身がオーケストラ作品偏重ということもあり、室内楽はヴァイオリン・ソナタ「春」「クロイツェル」とチェロ・ソナタ、ピアノ三重奏曲「大公」しか持っていませんでした。評論家的には弦楽四重奏曲も傑作揃いとのことですが、作品数が多いこともあり、何となく手が伸びてません。今日ご紹介するのは「七重奏曲」と「六重奏曲」。どちらも室内楽にしては規模が大きめの編成です。前者はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ホルン、ファゴットで弦楽器4+管楽器3という編成です。後者はヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロという通常の弦楽四重奏にホルンが2本加わった編成です。



作曲されたのは「六重奏曲」が1796年、「七重奏曲」が1799年といわれ、どちらもベートーヴェンがまだ20代の頃の作品です。交響曲はじめ多くの傑作を発表するのが30代になってからですので、初期の作品と言えます。ただ、楽曲のクオリティについてはこの時点で文句のつけようがないですね。後期のような重厚さはありませんが、ひたすら天国的で明るい旋律に満ちあふれています。実際に「七重奏曲」は作曲当時は大変な人気で、ベートーヴェンと言えば“あの七重奏曲を書いた人”扱いだったそうです。もちろん、現代ではその後に書いた交響曲や協奏曲の方がはるかに有名で、むしろ陰に隠れた存在となってしまいましたが、作品自体が魅力的なことには変わりありません。個人的に特にお気に入りなのは「七重奏曲」の第1楽章と第6楽章、「六重奏曲」の第3楽章です。CDはウィーン室内合奏団のものを買いました。天下のウィーン・フィルのメンバーが室内楽用に編成したもので、リーダーのゲルハルト・ヘッツェルはコンマスも務める名手だったそうです。もちろん演奏は折り紙付です。
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ドヴォルザーク&スメタナ/弦楽四重奏曲

2014-09-27 11:19:15 | クラシック(室内楽)
ひさびさの更新は室内楽作品です。室内楽はクラシックのジャンルでも交響曲や協奏曲などオーケストラ作品に比べるとついマイナーに扱われがちで、通好みの印象がありますね。特に今日取り上げる弦楽四重奏なんてのはピアノ伴奏もなく、ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロだけというシンプルな構成なので正直私などは取っつきにくいイメージがあります。ただ、その原始的な構成ゆえに作曲意欲をかき立てられるのか、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンらの古典派から20世紀のバルトーク、ショスタコーヴィチまで古今東西ほとんどの作曲家達がこの弦楽四重奏の作品を残しています。今日取り上げるのは19世紀後半の後期ロマン派を代表するドヴォルザークとスメタナの作品です。2人ともチェコ出身で民族音楽を大胆に取り入れたチェコ国民楽派の中心人物というのも周知のとおりですね。



ドヴォルザークは弦楽四重奏を14曲も作曲していますが、そのうち圧倒的に有名なのが第12番です。「アメリカ」の副題でもよく知られるように、ドヴォルザークがアメリカに3年弱滞在していた時に作られた曲です。「新世界」交響曲やチェロ協奏曲と並んでドヴォルザークのアメリカ時代を代表する傑作の一つとされています。解説によると第2楽章に黒人霊歌(ゴスペル)の影響があるとのことですが、言われてみればそうかという程度です。全体的にいかにもドヴォルザークらしい歌心ある旋律にあふれていて、チェコの民族音楽の影響もそこここに感じられます。一方のスメタナの作品は「わが生涯より」の副題が付けられ、青春時代の思い出、妻との恋愛、聴覚を失った後半生の苦しみというようにスメタナの生涯が表現されているようです。とは言え、聴いただけではそれらのイメージは共有できません。初恋を描いた第3楽章はいかにもセンチメンタルな感じですが、苦悩の後半生のはずの第4楽章なんて明るい民謡風の旋律ですし。あまり背景とか深く考えず普通に楽しめる曲だと思います。この2作品は同じチェコの作曲家という括りで多くの場合カップリングで発売されていますが、CDはその中でも定番とされているアルバン・ベルク四重奏団のものです。
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ドヴォルザーク&シューマン/ピアノ五重奏曲

2013-10-04 23:13:01 | クラシック(室内楽)
個人的にはクラシックの醍醐味と言えばやはり重厚なオーケストラサウンドと思っているので、室内楽や器楽曲は滅多に聴きませんが、たまには趣向を変えてピアノ五重奏曲を取り上げてみたいと思います。ピアノ五重奏曲とはピアノと弦楽四重奏(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)からなる室内楽曲でシューベルトやブラームスも有名な作品を残していますが、今日ご紹介するドヴォルザークとシューマンの作品も同ジャンルの代表的作品として知られています。2人ともロマン派の時代を象徴する作曲家だけあって、作風も明朗でわかりやすく私のような室内楽初心者でもとっつきやすいですね。



まず、ドヴォルザークの方ですが、チェコ国民楽派の開祖だけあってここでもチェコの民族音楽を濃厚に取り入れています。ドゥムカというスラブ民謡を題材にした哀愁漂う第2楽章、一転してフリアントという舞曲を下敷きにした跳ねるような第3楽章が特にスラヴ情緒に溢れています。明るく開放的な第1楽章も素晴らしいですね。一方のシューマンの作品も、ロマン派の王道を行く魅力的な旋律が目白押しです。力強さと美しさが同居した第1楽章、愁いを帯びた第2楽章、スケルツォ風の第3楽章、そして輝かしいフィナーレの第4楽章と続きます。CDはヤン・パネンカ(ピアノ)とスメタナ四重奏団の共演盤を買いました。スメタナ四重奏団はチェコの室内楽団で、名前のとおりスメタナの室内楽曲を得意としていますが、同じチェコのドヴォルザークもお手の物ですし、シューマンでも見事な演奏を聴かせてくれます。
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