ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア、鳥、風変わりな店

2019-10-23 09:24:40 | クラシック(管弦楽作品)
本日はレスピーギです。レスピーギと言えばローマ三部作が圧倒的に有名ですが、それ以外にも「教会のステンドグラス」「ロッシニアーナ」のような名曲があることも当ブログで紹介しました。一方で彼は熱心な古楽の研究者としても知られており、17~18世紀のバロック時代、さらにはその前の15~16世紀のルネサンス時代の楽曲をも研究し、自らアレンジして発表していました。

本日取り上げるのはレスピーギの古楽編曲作品を集めたCDでネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オヴ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズのものです。まず最初が「リュートのための古風な舞曲とアリア」。リュートはギターが普及する以前に使われていた弦楽器で形は日本の琵琶に似ています。本作はバロック時代に書かれたリュートのための曲をレスピーギが編曲したもので、実際にリュートが演奏に使われているわけではありません。全部で3つの組曲がありますが、CDに収録されているのは第3組曲。この中の「シチリアーナ」がコマーシャルに使われたりしたそうです。哀調を帯びたはかなげな旋律が印象的です。他には「宮廷のアリア」も古式ゆかしい感じの佳曲です。



ついでは「鳥」。こちらは全5曲からなる組曲で、バロック時代の作曲家であるベルナルド・パスクイーニ、ドメニコ・ガロ、ジャン=フィリップ・ラモーの楽曲をレスピーギが編曲したものです。それぞれの曲には鳥の名前が付けられており、とりわけ木管楽器が美しい旋律を奏でる「夜うぐいす(ナイチンゲール)」、そしてフルートがカッコウの鳴き声を模す「カッコウ」が素晴らしいです。

最後がバレエ音楽の「風変わりな店」。こちらは古楽とはちょっと違いますが、19世紀の偉大な作曲家であるロッシーニが晩年に書いた「老いの過ち」と言う未発表の小品集を甦らせたもの。全8曲、平均して2~3分程度の短い曲ばかりで、「タランテラ」「マズルカ」「コサックの踊り」「カンカン」「ギャロップ」等各国の踊りの名前が付いています。1曲だけスローテンポの「ノクターン」があり、なかなかムードのある佳曲です。以上、3作とも水準以上の出来ですが、個人的には「鳥」が一番のお薦めです。
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ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編曲版)

2019-10-13 23:06:47 | クラシック(管弦楽作品)

本日はブラームスのピアノ四重奏曲第1番をご紹介します。と言っても原曲の方ではなくて、アルノルト・シェーンベルクによる管弦楽編曲版の方です。ムソルグスキーが作曲しラヴェルが編曲した「展覧会の絵」を例にとるまでもなく、ピアノ曲や室内楽の名曲を他の作曲家が編曲することは珍しいことではないのですが、本作の場合編曲者がシェーンベルクと言うのがミソ。音楽史的に彼は現代音楽の先駆者として知られ、調性を排除した無調音楽さらには十二音技法なる複雑な理論を駆使した楽曲で知られています。初期の代表作「浄められた夜」あたりはまだ普通に聴けるのですが、中期以降の作品については現代音楽好きでないと受け入れられないでしょう。

そんなシェーンベルクがブラームスをどう料理しているかなんですが、これが驚くほど正統派。本作が発表されたのは1937年で、時期的には完全に無調時代に突入していますが、ここでのシェーンベルクは原曲の旋律を活かしつついかにもブラームスらしい格調高い交響曲風の楽曲に仕上げています。シェーンベルク自身も編曲の出来栄えに満足していたらしく、この曲をブラームスの「交響曲第5番」になぞらえていたとか。第1楽章アレグロはこれぞブラームスと言った旋律で暗めの出だしですが、中間部にはドラマチックな盛り上がりも見せ、聴き応えたっぷりです。第2楽章は間奏曲でこちらも旋律は暗め。同じ旋律が繰り返しで演奏されるので、正直やや単調かな?第3楽章アンダンテは本曲のハイライトで、交響曲第1番を思い起こさせるような優美かつ壮麗な楽章です。もちろんブラームスの書いた旋律の良さが大前提としてあるのですが、ここまで空間的広がりを感じさせてくれるシェーンベルクのオーケストレーションは見事だと思います。最終楽章はハンガリー舞曲風のロンド。ブラームスらしからぬエネルギッシュかつエンターテイメント性溢れる曲調で原曲もかなり盛り上がるのですが、シェーンベルクはさらに打楽器や金管楽器もフル動員してエキサイティングなフィナーレを演出します。ここら辺のオーケストレーションはシェーンベルクの独自色が出ていると言えるでしょう。



CDですが数はあまり多くないです。コンサートではかなりの人気曲なんですが。やはり他人が編曲した作品と言うことでブラームスの本物の交響曲に比べるとイロモノ扱いされているのかもしれません。私が購入したのはロバート・クラフト指揮シカゴ交響楽団のものです。このCDには他にもシェーンベルクによるバッハのコラールの編曲やウェーベルンによるシューベルトのドイツ舞曲の編曲が収録されていますが、個人的にはほぼスルーです。ただ、ピアノ四重奏曲だけでも買う価値はあると思います。1964年の演奏とかなり古いですが、音も悪くないですよ。

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エルガー/交響曲第1番&第2番

2019-10-03 22:20:22 | クラシック(交響曲)
本日はエドワード・エルガーの交響曲2曲をご紹介したいと思います。エルガーについては本ブログでもたびたび取り上げていますが、彼の場合「威風堂々」と言う超有名曲の存在が実像を掴みにくくしているような気がします。「威風堂々」は言うまでもない名曲で旋律もシンプルで分かりやすいのですが、エルガーにはどちらかと言うとチェロ協奏曲ヴァイオリン協奏曲のように最初は取っつきにくいが噛めば噛むほど味が出るタイプの楽曲が多いと思います。今日取り上げる2曲の交響曲も決して広範な人気を有しているとは言えませんが、地味ながら充実した傑作だと思います。

作曲時期は第1番が1908年、第2番は1911年で、どちらもエルガーが50代の円熟期に書かれた作品です。第1番は第1楽章冒頭から「威風堂々」第1番の中間部を思い起こさせる壮麗な旋律で幕を開けます。この旋律はその後もたびたび現れ、本曲のメイン主題とも呼べる重要な旋律です。第2楽章は勇ましい行進曲風で中間部は楽しげな舞曲風。第3楽章は哀愁を帯びた緩徐楽章で美しい弦楽合奏が印象的です。第4楽章は前半は不安げな旋律ですが、後半になると再びメイン主題が現れそのまま輝かしいフィナーレを迎えます。

第2番は第1楽章がvivace e nobilementeと記されており、文字通り活発でいて気高い旋律が魅力的です。第2楽章はラルゲット。全体的に哀調を帯びていますが中間部と後半に静かな盛り上がりを見せます。第3楽章はエネルギッシュなロンド。第4楽章は後半に向けて盛り上がり、そのまま華々しく終わるかと思いきや、最終盤で再び第1楽章冒頭の気高い旋律が現れ、消え入るように静かに幕を閉じます。余韻を残す美しい終わり方ですね。

 

CDはサー・ゲオルク・ショルティ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団のものです。第1番には序曲「南国にて」、第2番には序曲「コケイン」がそれぞれ収録されています。うち「コケイン」に関しては以前に当ブログでも紹介したので割愛します。「南国にて」は別名を「アラッシオ」とも言い、エルガーが旅行で訪れたイタリアの町の名前です。当時のイギリスのセレブ達は冬になると暗く寒い本国を抜け出し、イタリアやフランスの地中海で長期滞在するのが恒例でした。この曲もイタリアの陽気な雰囲気を表した色彩豊かな名曲です。
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