ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アルベニス/イベリア & ファリャ/スペインの庭の夜

2013-05-31 23:42:25 | クラシック(管弦楽作品)
スペインと言えばヨーロッパの中でも異国情緒あふれる国で、ビゼーの「カルメン」、ラロの「スペイン交響曲」、リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」など昔から多くの作曲家をインスパイアしてきました。ただ、それらは全て外国の作曲家の描いたスペイン像であり、スペイン人自身の手によるメジャー作品となると何と20世紀初頭まで待たなければなりません。それが今日ご紹介するイサーク・アルベニス「イベリア」とマヌエル・デ・ファリャ「スペインの庭の夜」です。いずれもスペインの民俗音楽的な要素をふんだんに取り入れてはいますが、決して通俗的になりすぎることなく、普遍的なクラシック音楽として高い完成度を誇っています。



まず、アルベニスの「イベリア」ですが、こちらは元々ピアノ曲として作られた作品だそうです。後にスペインの指揮者アルボスが管弦楽用に編曲し、今ではこちらの方が多く出回っています。原曲は知りませんが、このオーケストラバージョンが実に素晴らしいので是非お薦めしたいです。全5楽章ありますが、いずれもスペイン情緒にあふれた旋律を色彩豊かなオーケストレーションで味付けした名曲です。特に祭の情景を描いた賑やかな「エル・プエルト(港)」、どことなくムソルグスキーの「キエフの大門」を想起させる荘厳な「セビーリャの聖体祭」、フラメンコ調のエキゾチックな「トリアーナ」が素晴らしいです。一方、ファリャの「スペインの庭の夜」はピアノを大きくフィーチャーした作品で、いわゆるコンチェルト形式ではないものの広い意味のピアノ協奏曲と言えなくもないです。有名なグラナダのアルハンブラ宮殿や古都コルドバの情景を、エネルギッシュなピアノと幻想的なオーケストレーションで描いています。CDはダニエル・バレンボイム指揮パリ管弦楽団のもので、「スペインの庭の夜」ではマルタ・アルゲリッチがピアノを弾いています。2人ともアルゼンチン出身ということでラテン色の強い本作の演奏は実に生き生きとしていますね。
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シベリウス/レンミンカイネン組曲

2013-05-28 22:57:03 | クラシック(管弦楽作品)
最近、個人的にはまりつつあるのがフィンランドの作曲家シベリウスです。以前から交響曲第2番やヴァイオリン協奏曲は愛聴していましたが、以前に当ブログでも紹介した交響曲第5番&第7番も素晴らしかったですし、今日取り上げる「レンミンカイネン組曲」も期待を上回る内容でした。フィンランドの民族叙事詩に出てくる英雄レンミンカイネンを題材にした全4曲の組曲で、中でも物哀しい旋律が印象的な「トゥオネラの白鳥」は単独で取り上げられることも多いようです。ただ、僕としては4曲全体で聴くことをお薦めします。特に1曲目の「レンミンカイネンと島の乙女たち」はいかにも冒険の始まりを思わせるような明るく力強い曲で、個人的にはこの曲こそがハイライトだと思います。続く死をテーマにした「トゥオネラのレンミンカイネン」はやや陰鬱すぎますが、最後の「レンミンカイネンの帰郷」で再び勇壮なクライマックスを迎えます。組曲ながら46分を超える大作で、スケール的にも他の交響曲群と肩を並べる傑作だと思います。



CDはユッカ=ペッカ・サラステ指揮トロント交響楽団のものを買いました。「トゥオネラの白鳥」の収録されているCDはたくさんありますが、組曲全曲となると種類も限られており、中でも廉価盤シリーズで出回っている本作が最も手頃でしょう。サラステはフィンランド出身の名指揮者で、同国人のシベリウスはお手の物ですね。本CDにはさらに交響詩「夜の騎行と日の出」も収録されています。シベリウス作品の中でも比較的マイナーな曲ですが、この曲も悪くない。前半の「夜の騎行」の部分は執拗に繰り返される弦の響きが不安げなムードを醸し出しますが、後半の「日の出」の場面では一転して美しく雄大なシベリウス節でラストを締めくくります。
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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番&第2番

2013-05-26 21:20:21 | クラシック(協奏曲)
生涯に多くの傑作を残したベートーヴェンですが、有名なものは30代半ば以降に集中しています。交響曲第3番「英雄」が34歳、ヴァイオリン協奏曲が36歳の頃で、ここから「運命」「田園」、そしてピアノ協奏曲「皇帝」と人類の遺産とも言うべき名作が続々と生み出されます。一方で、それ以前の20代のベートーヴェンについては軽く扱われがちですね。このピアノ協奏曲第1番&第2番は彼が25歳の時に作曲したもので、キャリア最初期の作品とあってかディスクの数も決して多いとは言えません。ただ、内容は素晴らしいですよ。青年時代の作品だけあって、後期のベートーヴェンにありがちな苦悩の要素は感じられず、ひたすら天国的な明るさに満ちあふれています。



1番&2番ともに同時期の作曲だけあって良く似た曲調で、雄大な第1楽章、ひたすら美しい緩徐楽章の第2楽章、そして跳ねるようなリズムが楽しいロンド形式の第3楽章、という構成です。メロディなど一瞬モーツァルトを思い出せる部分もありますが、勇壮なオーケストレーションなどはこの頃からベートーヴェンの個性が滲み出ています。CDはフリードリヒ・グルダのピアノ、ホルスト・シュタイン指揮ウィーン・フィルのものを買いました。オーストリア出身の名ピアニストですが、特にモーツァルトとベートーヴェンに関しては世界的な大家として知られています。1200円の廉価版ですし、この曲を知るにはもってこいの名盤ですね。
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ヴィラ=ロボス/ブラジル風バッハ

2013-05-20 23:08:29 | クラシック(管弦楽作品)
本日はサンバの国ブラジルが生んだ作曲家、エイトル・ヴィラ=ロボスをご紹介します。主に20世紀の前半に活躍した作曲家で、クラシックの世界では唯一名の通ったブラジル人と言っていいかもしれません。生前は交響曲からピアノ曲まで膨大な数の作品を残したようですが、今でも演奏機会の多いのはこの「ブラジル風バッハ」ですね。何でもヴィラ=ロボスは“音楽の父”バッハをことのほか敬愛していたらしく、彼の作風にブラジルの民俗音楽の要素を加えたのがこの作品だとか。ただ、正直言わしてもらうと、バッハとの共通点はあまり見つけられません。特にバロック的な要素も感じられないし、あくまで20世紀の音です。かと言ってブラジルっぽいかと言われると、それも違う。サンバやボサノバのような明るく爽やかなイメージからはほど遠く、どちらかと言えばやや重い曲です。「ブラジル」や「バッハ」という先入観は捨てて聴くのが正解でしょう。



曲は1番から9番まであり、全曲だとかなりのボリュームになるそうですが、私が買ったポール・カポロンゴ指揮パリ管弦楽団のCDはそのうち第2番、第5番、第6番、第9番が収録されています。それでも54分もありますが。聴き所はやはり2番と5番ですね。特に2番は重厚なオーケストラを伴った荘厳な名曲です。哀調漂う「カパドシオの歌」&「われらが大地の歌」、力強くワイルドな魅力に溢れた「奥地の思い出」「カイピラの小さな汽車」と耳に残る旋律のオンパレードです。続く第5番はガラッと雰囲気が変わり、ソプラノとチェロが大きくフィーチャーされています。メランコリックな「カンティレーナ」と小鳥がさえずるような「マルテロ」。どちらも不思議な余韻の残る曲です。第6番はこれまた曲調が激変し、オーケストラはなくフルートとバスーンの二重奏になります。僕的にはこの曲だけちょっと浮いてる感じ。最後の第9番「プレリュードとフーガ」は弦楽合奏のために書かれた曲で、あえて言うならこの曲が一番バロックっぽいかもしれません。後半ちょっとダレる感は否めませんが、第2番の4曲だけでも一聴に値する名曲です。
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ドリーブ/コッペリア 他

2013-05-17 23:50:39 | クラシック(管弦楽作品)
コープランド、グラズノフとバレエ音楽が続きましたが、今日もフランスの作曲家レオ・ドリーブによるバレエ音楽「コッペリア」を取り上げたいと思います。ドリーブは19世紀に活躍した作曲家で、生前はバレエとオペラを中心に多くの作品を残したそうですが、現代でも演奏される機会の多いのは本作ぐらいですね。フランス産のバレエですが、舞台はポーランドで楽曲も東欧の民族音楽をモチーフにした親しみやすい旋律です。バレエは全部で3幕あり、曲数も30曲以上あるようですが、演奏会用に編曲した全6曲の組曲があり、そちらの人気が高いようです。ポーランドの「マズルカ」、ハンガリーの「チャルダッシュ」など民族舞踊を巧みに織り交ぜながら、ロマン派特有の華やかなオーケストラで味付けしたドリーブ一世一代の傑作です。全編に渡って明るく楽しい旋律のオンパレードなので、誰にでも安心して薦められる作品です。



CDはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルのものを買いました。録音数も決して多いとは言えない作品ですが、それだけに帝王カラヤンによる演奏は貴重です。本作には他にショパンの楽曲をバレエ用に編曲した「レ・シルフィード」、そしてポンキエッリの「時の踊り」が収録されています。前者はショパンの有名なピアノ曲である「前奏曲」「華麗なる円舞曲」などにオーケストラをつけたもので、20世紀に入ってイギリスの作曲家ダグラスが編曲したものだそうです。創造性と言う意味では果たしてどうなの?という気もしますが、曲自体はもちろんいいですよ。後者の「時の踊り」はもともとポンキエッリのオペラ「ラ・ジョコンダ」の中の1曲ですが、今ではこの曲だけ独立して有名になりました。ディズニー映画に使われたり、ポップスに編曲されたりしたので、冒頭の部分はクラシックに何の興味もない人でも必ず知っているポピュラーな旋律ではないでしょうか?ベタと言えばベタですが、心が浮き立つ名曲ですね。
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