前回「エンカウンター」で60年代のプレスティッジについて解説しましたが、同レーベルの絶頂期が50年代半ばだったのは衆目の一致するところですよね。この頃のプレスティッジが得意としていたのは同じ楽器を複数集めたジャムセッション形式の作品で、トランペット2本の「トゥー・トランペッツ」、同3本の「スリー・トランペッツ」、トランペット2本とテナー2本の「インタープレイ」、テナー3本の「ウィーリン・アンド・ディーリン」、同4本の「テナー・コンクレイヴ」、アルト2本の「アルト・マッドネス」、同4本の「フォー・アルトズ」、アルト2本とトランペット2本の「ペアリング・オフ」等々です。どれも同レーベルに所属するスタープレイヤー達が競演したハードバップ黄金期ならではの作品です。
今日ご紹介するのはギター2本の競演作、その名もズバリ「トゥー・ギターズ」です。1957年3月の録音でリーダーはケニー・バレルとジミー・レイニー。バレルは前月に「ブルー・ムーズ」を吹き込むなどプレスティッジのハウス・ギタリスト的存在でしたが、ジミー・レイニーはスタン・ゲッツやボブ・ブルックマイヤーとの共演で知られる白人ギタリストでこの手のハードバップ系のセッションでは珍しい人選です。ギタリスト2人だけで十分だと思うのですが、ここにさらにドナルド・バード(トランペット)とジャッキー・マクリーン(アルト)を加えるのが全盛期プレスティッジならではの贅沢さで、マル・ウォルドロン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)のリズムセクションと合わせて超強力なラインナップですね。
全7曲。歌モノスタンダードは2曲のみで、後は全てメンバーのオリジナルです。特に前半の3曲"Blue Duke""Dead Heat""Pivot"は全てマル・ウォルドロンの作曲で、実質的な音楽的リーダーシップは彼が握っていたことがわかります。本作に限らずこの頃のプレスティッジのジャムセッションはマルが陰のリーダーになっていることが多いですね。どの曲もリーダー2人のギターにバード、マクリーン、マルが入れ代わり立ち代わりソロを取る構成。ギターの聴き分けですがジミー・レイニーのソロは正直そこまで馴染みがないですが、バレルの方は一発でわかりますね。いつもながらのスインギー&ソウルフルなソロが最高です。
その他のオリジナル曲はまずマクリーンの"Little Melonae"。マクリーン自身のほか、マイルス、コルトレーン、ジャズ・メッセンジャーズも取り上げた彼の代表曲です。マクリーンのいかにも彼らしいファナティックなアルトの後、マル→レイニー→バレルとソロをリレーします。ダグ・ワトキンス作の"This Way"は個人的に本作のベストトラックで、11分超の長尺ながらバレル→バード→マクリーン→レイニー→マルの順でハードバピッシュなソロをたっぷりと披露し、聴く者を飽きさせません。スタンダードの2曲はバードとマクリーンは参加せず、さらにギターも1人のみ。"I'll Close My Eyes"はバレル、"Out Of Nowhere"はレイニーがそれぞれマル・ウォルドロンのトリオをバックにじっくり聴かせます。