ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

シューマン、サン=サーンス他/ホルン協奏曲集

2018-05-22 12:27:11 | クラシック(協奏曲)
ホルンはオーケストラの金管楽器の中でも花形と呼べる存在で、単に低音アンサンブルに欠かせないだけでなく、ソロパートも多く、時には重要な主題を任せられることもあります。とは言え、コンチェルト形式となるとさすがにピアノ、ヴァイオリン、チェロ等に比べると圧倒的に少なく、有名な作品と言えばモーツァルトのホルン協奏曲1番&4番、リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲1番&2番ぐらいですかね。今日ご紹介するのはそれらメジャー作品ではなく、知る人ぞ知るといった感じのウェーバー、サン=サーンス、シューマンらのホルン作品集です。演奏者はドイツが誇る世界的ホルン奏者のペーター・ダムと彼が首席奏者を務めていたシュターツカペッレ・ドレスデン。指揮者はジークフリート・クルツと言うよく知らない人です。



本作には合計4曲のホルン作品が収録されています。まず1曲目はカール・マリア・フォン・ウェーバーの「ホルン・コンチェルティーノ」。彼がまだ20歳だった頃に書かれた作品です。単一楽章で16分程度の作品ですが、短いながらも親しみやすい旋律がたっぷり詰まった佳曲だと思います。ウェーバーと言えば代表作の「魔弾の射手」序曲でもホルンが大活躍しますね。2曲目はアルベルト・ロルツィングの「ホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュトゥック」。ロルツィングと言われてもピンときませんが、19世紀のドイツでそこそこ人気のあったオペラ作家だそうです。この曲は一般的には全く知られていませんが、オペラのアリア風の旋律に全編彩られたなかなかの隠れ名曲だと思います。

3曲目はカミーユ・サン=サーンスの「ホルンと管弦楽のための演奏会用小品」。こちらは大作曲家サン=サーンスが50代の円熟期に書いた作品だけあって、短いながらも強い魅力を放った逸品です。哀調を帯びた導入部分、中間部の美しいアダージョ、そして華やかなフィナーレとわずか9分あまりの小品ながら盛り沢山の内容です。さすがはサン=サーンスですね。最後はシューマンの「4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック」。こちらもシューマンが39歳の時の作品で、代表作「ライン」と同時期に書かれた作品だけあって、ドイツ・ロマン派の王道を行く名曲です。シューマンの協奏曲と言えば、まずピアノ協奏曲、次いでチェロ協奏曲が有名ですが、個人的にはこの作品もそれらと比較しても遜色ないどころか、むしろチェロ協奏曲よりも優れた内容だと思います(さすがにピアノ協奏曲には劣りますが)。ホルンが主楽器と言うことで地味な存在に甘んじていますが、もっとメジャーになっても良い作品だと思います。
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モーツァルト/ピアノ協奏曲第5番&第9番

2018-05-15 12:33:53 | クラシック(協奏曲)
モーツァルトは生涯に交響曲を41曲、ピアノ協奏曲を27曲も残しましたが、一般的に傑作とされるのはやはり後期に集中しており、交響曲だと35番以降、ピアノ協奏曲だと20番以降が演奏される機会も多いようです。とは言え、それ以前が凡作かと言うともちろんそんなことはなく、特にピアノ協奏曲に関してはモーツァルト自身が売れっ子ピアニストだったということもあり、キラリと光る作品が残されています。以前にご紹介した第7番、第10番なんかもそうですね。本日紹介するのは第5番と第9番。若き日のダニエル・バレンボイムがイギリス室内管弦楽団を弾き振りしたものを取り上げます。




第5番は1773年、モーツァルトが17歳の時に書いた作品で、実質最初のピアノ協奏曲だそうです(1番から4番は他人の作品の編曲)。第1楽章は陽気なアレグロで、冒頭のベタな旋律に17歳ならではの“青さ”が感じられますが、それ以降は魅力的なメロディのオンパレードです。続く第2楽章アンダンテは夢見るような美しい緩徐楽章。個人的には後期の名曲群と比べても遜色ない出来栄えと思います。続く第3楽章も躍動感あふれるロンドで締めくくります。17歳にしてこのレベルの作品を書き上げるとはやはりモーツァルト、天才としか言いようがないですね。

続く第9番は第5番から4年後に書かれた作品で、「ジュノーム」の愛称で親しまれています。この作品の特徴は何といっても第2楽章アンダンティーノ。明るい雰囲気の作品が多いモーツァルトのピアノ協奏曲の中では珍しく短調で書かれており、物悲しくはかなげな、それでいてハッとした美しさを感じさせる旋律です。第1楽章と第3楽章は明るく、特に第3楽章のフィナーレの盛り上がりは心が浮き立ちます。モーツァルトの初期のピアノ協奏曲には他にも聴いていないものもたくさんあるので、これから色々聴いてみたいと思います。
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