ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ハロルド・コービン/ソウル・ブラザー

2016-11-17 22:57:32 | ジャズ(ピアノ)
ジャズを聴き始めて20年。これまで50~60年代のジャズを中心に1,700枚を超す作品に耳を通し、それなりの通を自認するようになった私ですが、それでも時として未知のミュージシャンに遭遇することがあります。今日ご紹介するハロルド・コービンなんかがそうですね。これまでリーダー作はおろかサイドマンとしてもただの一度も名前を見たことがありません。それもそのはず、残された録音は1961年にルーレットに残されたこの1枚のみのようです。解説によるとフィラデルフィアに拠点を置いて演奏をしていたピアニストで、地元ではちょいと知られた存在だったようです。ただ、レコードデビューの機会はなかなかなく、ようやく録音機会に恵まれて発売したのがこの「ソウル・ブラザー」。ジャケットに“The Driving New Jazz Piano”と書かれているように、レコード会社としてもそれなりに売り出そうとしていたようですが、その矢先の1962年4月に29歳の若さで世を去ってしまいます。原因はお決まりのドラッグの過剰摂取による中毒死。一体この時代、何人のジャズマンが麻薬で身を滅ぼしたことか・・・



そんなコービンの作品ですが、内容はいたって正統派のジャズピアノ。スタイル的にはアーマッド・ジャマルに近いでしょうか?高音を駆使したきらびやかなタッチでスタンダードや自作曲を奏でていきます。特筆すべきは自作曲のクオリティの高さで、タイトル曲でもあるファンキーな“Soul Brother”、ややモーダルな香りもする“Soul Sister”の2曲を筆頭に、マイナー調のワルツ“Caroline”、ハードドライビングな“JAMF'S”、ロマンチックなバラードの“Rene”“The Girl In The Window”と佳曲揃いです。サイドを務めるのはスパンキー・デブレスト(ベース)とエディ・キャンベル(ドラム)。後者のキャンベルはともかく、デブレストの方は50年代の一時期ジャズ・メッセンジャーズにも在籍していたのでご存じの人も多いかもしれません。黒光りするコービンがアップになったジャケットもカッコいいですし、なかなか掘り出しモノの1枚ではないでしょうか?こんな未知の作品が隠されているとはジャズの世界はまだまだ奥深いですね!
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