ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

オペラ間奏曲集

2013-11-30 16:08:26 | クラシック(管弦楽作品)
今日はちょっと変わったオムニバス作品としてヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるオペラ間奏曲集をご紹介します。間奏曲とはインテルメッツォ(intermezzo)とも言い、オペラの幕の間に演奏される管弦楽作品のこと。長時間のオペラともなれば観客も疲れてきますので、その間の気分転換変わりに演奏されるものです。従って演奏時間もほとんどが3~4分と短めで、構成も単純です。それに対し序曲や前奏曲はオペラの前に演奏されるもので、時間も長め、構成も複雑で独立した管弦楽作品として演奏されることも多いです。CDも序曲集なら実にたくさんの種類がありますが、間奏曲ばかりを集めたものはほとんどないですね。ただ、このカラヤン盤は選曲も抜群で、演奏も天下のベルリン・フィルだけあって実に聴き応えのある作品となっています。



曲は全12曲。うちヴェルディ「椿姫」第3幕間奏曲、マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲、マスネ「タイス」瞑想曲の3曲はクラシック好きなら誰でもが知ってる名曲ですね。ただ、個人的にはそれ以外の曲に魅力を感じます。特に素晴らしいのがレオンカヴァッロ「道化師」間奏曲とプッチーニ「マノン・レスコー」第3幕間奏曲。どちらも短い曲の中にドラマチックな展開がコンパクトに詰まっています。この2曲とは対照的に、おどけた感じのヴォルフ=フェラーリ「マドンナの宝石」第3幕間奏曲も楽しい作品ですね。1曲だけロシア・オペラからの選ばれたムソルグスキー「ホヴァンシチナ」第4幕間奏曲、優しい調べのチレア「アドリアーナ・ルクヴルール」第2幕間奏曲、終盤に怒涛の盛り上がりを見せるマスカーニ「友人フリッツ」間奏曲も捨て難いですね。他ではオペラ自体はほぼ無名ですが、シュミット「ノートルダム」間奏曲、ジョルダーノ「フェドーラ」第2幕間奏曲、プッチーニ「修道女アンジェリカ」間奏曲も隠れた名曲と言えるでしょう。
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ベルリオーズ/イタリアのハロルド

2013-11-27 23:14:35 | クラシック(交響曲)
本日はエクトル・ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」をご紹介します。ベルリオーズと言えば「幻想交響曲」ばかりが有名ですが、個人的にはむしろ本作の方が完成度が上では?と思います。有名な詩人バイロンの長編詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」にインスパイアされて作曲されたもので、4楽章とも詩に基づいた副題が付いていますが、特に予備知識がなく音楽だけ聴いても十分楽しめる内容です。元々は伝説的なバイオリン奏者でヴィオラの名手でもあったパガニーニに依頼されて作った曲だけあって、ヴィオラが大きくフィーチャーされており、独奏の時間もたっぷり与えられています。



第1楽章「山におけるハロルド」は冒頭不安げな旋律で始まりますが、3分過ぎからヴィオラが美しい主題を奏で、終盤はエネルギッシュな展開に。ヴィオラは最後まで大活躍します。第2楽章「夕べの祈祷を歌う巡礼の行列」は一転して黄昏時を想い起させるゆったりした旋律。ここでもヴィオラが大きな役割を果たしています。第3楽章「セレナード」は明るく軽快な冒頭部の後に牧歌的な主題が現れます。第4楽章「山賊の饗宴」はフィナーレを飾るにふさわしいドラマチックな展開で、荒々しい山賊の主題に続き、狂乱の宴を思わせる盛大なオーケストレーションでド派手に締めくくります。ちなみに終盤はヴィオラ独奏はほとんど出てきません。CDはレナード・バーンスタイン指揮フランス国立管弦楽団のものを買いました。「幻想交響曲」と違ってディスクの数も決して多くはないですが、巨匠バーンスタインとフランスの名門オケとの共演ということでイチ押しの1枚です。
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チャイコフスキー/マンフレッド交響曲

2013-11-23 23:10:25 | クラシック(交響曲)
チャイコフスキーと言えば後期の3大交響曲(4番、5番、6番)があまりにも有名ですが、もう一つ番号の付いていない交響曲があります。それが今日ご紹介する「マンフレッド交響曲」です。有名な詩人バイロンが書いた劇詩「マンフレッド」にインスパイアされて作った曲で、順番的には第4番と第5番の間に書かれています。普通なら第5番「マンフレッド」と言う風に呼ばれてもおかしくないのですが、なぜかチャイコフスキーは番号を付しませんでした。そういう変則的な扱いゆえかチャイコフスキーの作品群の中でもお世辞にもメジャーとは言えず、つい忘れられがちな存在です。ただ、作曲されたのは大傑作である第5番のわずか3年前とあって、出来自体そんなに悪いはずもなく、規模的にも実に堂々とした交響曲だと思います。



第1楽章は17分近くもある長大な楽章。いきなり不安げな旋律で幕を開けますが、これが主人公マンフレッドの主題で作品全体を支配します。その後強弱を繰り返しながら同主題が繰り返されますが、特にラスト2分あまりの盛り上がりがドラマチックですね。第2楽章は一転してスケルツォなんですが、そんなに楽しげではなく、どことなく不安げな感じが続きます。第3楽章はこの曲の中で唯一明るく牧歌的な楽章で、アルプスの草原を思わせる優美な旋律が一服の清涼剤の役割を果たしてくれます。第4楽章は再び重苦しいムードで、最後に冒頭のマンフレッド主題がフルオーケストラで再現され、壮麗なフィナーレを迎えます。CDはユージーン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団のものを買いました。3大交響曲と比べてマンフレッド交響曲は録音も少ないですが、その中では唯一とも言える巨匠による演奏です。
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リヒャルト・シュトラウス/ホルン協奏曲第1番&第2番

2013-11-20 23:02:16 | クラシック(協奏曲)
リヒャルト・シュトラウスのキャリアは主に2つに分かれていて、30代半ばまでは交響詩を中心とした管弦楽作品を、それ以降はオペラを中心に作曲活動を行いました。そんな中で異色の存在が今日ご紹介する2曲のホルン協奏曲です。第1番は18歳の時の作品で、続く第2番はそのなんと60年(!)後の78歳の時の作曲です。キャリアの最初期と最晩年にお世辞にもメジャーとは言えないホルンを主楽器としたコンチェルトを作曲した理由としては、シュトラウスの父親が高名なホルン奏者であり幼少の頃から親しんでいた楽器ということが大きいようですね。



ホルン協奏曲と言えば他にモーツァルトの作品が有名ですが、シュトラウスの第1番もその影響を強く受けたと思しき古典的な作風です。後の「ツァラトゥストラ」や「英雄の生涯」のスペクタキュラーなオーケストラサウンドのイメージが強いシュトラウスですが、同時にモーツァルトの信奉者でもあったようですね。華やかな第1楽章、ロンド形式の明るい第3楽章と18世紀さながらの音楽が繰り広げられます。

続く第2番は1942年の作曲で時代は完全に現代です。後期ロマン派の大家シュトラウスも一時は無調音楽を試みるなど前衛の波をくぐり抜けましたが、最晩年は再び古典的な作風に逆戻りしており、1番同様モーツァルト風の古典的なサウンドです。60年の月日を経たにも関わらず、お互いに良く似てるのが面白いですね。中でも静謐な美しさの第2楽章が秀逸です。CDはズデニェク・ティルシャルのホルン、イジ・ビエロフラーヴェク指揮プラハ交響楽団のものを買いました。
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ベートーヴェン/三重協奏曲

2013-11-16 23:43:30 | クラシック(協奏曲)
ベートーヴェンのコンチェルトと言えば5曲あるピアノ協奏曲、そしてヴァイオリン協奏曲が有名で、私も全て所有しています。ただ、今日ご紹介するピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲、通称三重協奏曲は取り上げられる機会も少ないですね。そもそもコンチェルトと言うのは独奏楽器が1つしかないのが基本。二重協奏曲ならモーツァルト(フルート&ハープ)やブラームス(ヴァイオリン&チェロ)等の例がありますが、三重協奏曲と言うのは調べても他にバッハ(フルート、バイオリン&チェンバロ)ぐらいしか出てきません。理由は簡単で独奏楽器が3つもあったらソロの部分が十分に取れないからです。普通のコンチェルトはオーケストラパートの後に満を持したようにヴァイオリンやピアノが存分に技巧を披露するんですが、3つもあるとそうもいかない。結局、室内楽的なピアノ三重奏になってしまい、そこに無理矢理オーケストラがくっついてるような感じになってしまいます。従ってこの曲もベートーヴェンの失敗作、凡作と言うのが一般的な評価です。



ただし、それでも作曲者はあのベートーヴェン。そこで奏でられる旋律はやはり魅力的です。作曲時期は1804年であの「英雄」と同じ年ですから、30代前半のベートーヴェンらしい活力に溢れています。ゆったりした中に雄大さを感じさせる第1楽章、静謐な美しさの第2楽章、天国的な明るさに包まれた第3楽章。改めてじっくり聴くとやはり素晴らしいとしか言いようがないですね。あのベートーヴェンだから凡作扱いされているだけで、普通に名曲ですよ。CDはソリストがジャック・ルヴィエ(ピアノ)、ジャン=ジャック・カントロフ(バイオリン)、藤原真理(チェロ)、オーケストラ演奏はエマニュエル・クリヴィヌ指揮オランダ室内管弦楽団のものです。この三重協奏曲にはオイストラフ(バイオリン)、ロストロポーヴィチ(チェロ)、リヒテル(ピアノ)の3人がカラヤン指揮ベルリン・フィルと共演した超豪華メンツによるCDもあるので、それに比べると全員小粒ですが、演奏の方はとても素晴らしいですよ。
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