ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

クロード・ウィリアムソン・トリオ

2017-11-27 23:56:22 | ジャズ(ピアノ)

本日は西海岸の白人ピアニスト、クロード・ウィリアムソンを取り上げたいと思います。トランぺッターのステュ・ウィリアムソンの兄で、ラス・フリーマンやマーティ・ペイチらと並んで50年代のウェストコーストを代表するピアニスト、と言うのが世間的な評価でしょう。ただ、クロード本人は自らがウェストコースト・ジャズにジャンル分けされるのが嫌だったようで、音楽的にはあくまでビバップを志向していたようです。特に影響を受けたのがバド・パウエルで、そのせいか“白いパウエル”というニックネームも付けられています。アルトのバド・シャンクの作品に多く参加していますが、リーダー作としてはベツレヘムの2枚、どちらも1956年に録音された「ラウンド・ミッドナイト」と本作「クロード・ウィリアムソン・トリオ」が真っ先に挙げられます。メンバーはシャンクのバンドでも共演したドン・プレル(ベース)とチャック・フローレス(ドラム)です。



全9曲、オリジナルが2曲とスタンダードが7曲という構成です。オリジナルはどちらも典型的なバップ・チューンで特にアルバム冒頭を飾る“June Bug”が最高です。ここでのプレイはパウエルというよりむしろ同時期に人気絶頂だったホレス・シルヴァーをも思わせるようなファンキーなタッチです。「ラウンド・ミッドナイト」でもシルヴァー作の”Hippy”をカバーしていますので、実際影響を受けていたのでしょうね。一方でスタンダード曲では歌心あふれるプレイを披露してくれます。バラードの“Moonlight In Vermont”や‟Embraceable You”ではきらびやかなタッチでロマンチックなムードを演出しますし、一転して‟I'll Remember April”では息もつかせぬようなテンポで華麗なアドリブを繰り広げます。その他ではドン・プレルのベースソロを大きくフィーチャーした‟Have You Met Miss Jones”、ラストのハードドライヴィングな‟Hallelujah”も出色の出来です。ウェストコーストなのかビバップなのかジャンル分けはひとまず置いといて、普通に上質のピアノトリオ作品として楽しめる内容だと思います。

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カーティス・カウンス/エクスプローリング・ザ・フューチャー

2017-11-16 23:26:23 | ジャズ(ハードバップ)

前回の「デクスター・ブロウズ・ホット・アンド・クール」に引き続き、ドゥートーンの復刻輸入盤をご紹介したいと思います。このドゥートーンと言うレーベル、超マイナーレーベルと言うこともあってなかなか手にする機会はありませんでしたが、このたび輸入盤のCDが復刻されていましたのでゲットした次第です。今回ご紹介するのはカーティス・カウンス。デクスター・ゴードンに比べるとかなりマイナーですが、50年代のウェストコーストで活躍した黒人ベーシストです。一般的にウェストコーストジャズと言うと白人中心のジャズを連想しますが、彼らに交じって多くの黒人ミュージシャンも活躍していました。ピアノのハンプトン・ホーズ、カール・パーキンス、ベースのリロイ・ヴィネガー、ドラムのローレンス・マラブルあたりがその代表格でしょうか?カウンスもその一人で、チェット・ベイカー、ショーティ・ロジャース、メイナード・ファーガソンら白人ジャズメン達の作品にサイドマンとして参加するだけでなく、自身のリーダー作もコンテンポラリーに4作、そしてドゥートーンの本作と計5作残しています。残念ながら1963年に37歳の若さで病死してしまうのですが、短い活動期間で確かな足跡を残したと言えるでしょう。



録音は1958年。メンバーはロルフ・エリクソン(トランペット)、ハロルド・ランド(テナー)、エルモ・ホープ(ピアノ)、カウンス(ベース)、フランク・バトラー(ドラム)から成るクインテット編成です。エリクソンだけはスウェーデン出身の白人ですが、後は全員が黒人と言うこともあり、ウェストコースト録音ながらもサウンド的にはバリバリのハードバップです。注目すべきはエルモ・ホープの参加。彼のことは以前に当ブログで紹介したことがありますが、ハードバップ界の隠れた才人として玄人筋に評価の高いピアニストです。本作では‟So Nice”‟Into The Orbit”‟Race For Space”‟The Countdown”と8曲中4曲も自作のオリジナルを提供しており、実質的にはホープの作品と言っても良いぐらいかもしれません。中でも‟So Nice”と‟Into The Orbit”はけだし名曲と言ってよいでしょう。フロントライン2人の演奏も素晴らしく、ブラウン&ローチ・クインテットでも名を馳せたランドが全編に渡ってノリノリのテナーを披露すれば、白人のエリクソンも意外とパワフルなトランペットを聴かせてくれます(録音があまり良くないのか音が割れた感じになるのが玉にキズですが・・・)。カウンスはと言うと、スタンダードのバラード‟Someone To Watch Over Me”では長々とベースソロを披露しますが、ほかの曲ではあくまでリズムセクションに徹しています。宇宙服を着たカウンスがベース片手に浮遊するジャケットがなんともシュールですが、内容的には正統派のハードバップ。あまり語られることのないウェストコーストの黒人ジャズの実力がわかる1枚です。

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デクスター・ゴードン/デクスター・ブロウズ・ホット・アンド・クール

2017-11-15 23:41:34 | ジャズ(ハードバップ)

前々回に続いてデクスター・ゴードンです。と言っても時代は20年も遡って1955年の録音。西海岸にあったドゥートーンというマイナーレーベルから発表された作品です。ジャズファンならご存じとは思いますが、50年代のゴードンは低迷期。40年代にワーデル・グレイとのテナーバトルで名声を博しながらも、その後は重度の麻薬中毒に陥り、50年代をほぼ棒に振ってしまいます。唯一の例外が1955年で、この年の後半は一時的に健康を回復し、9月にベツレヘムにリーダー作「ダディ・プレイズ・ザ・ホーン」を吹き込み、同じ月にドラマーのスタン・リーヴィの「ジス・タイム・ザ・ドラムズ・オン・ミー」に参加。そしてこの12月に本作「デクスター・ブロウズ・ホット・アンド・クール」を収録します。とは言え、結局それも長続きせず、その後は再び麻薬所持で刑務所を出たり入ったり。完全復活は1960年まで待たないといけません。



メンバーですが、当時のゴードンは生まれ故郷でもあるロサンゼルスに住んでいたため、西海岸で活躍する黒人ミュージシャンがバックを固めています。ピアノがカール・パーキンス、ベースがリロイ・ヴィネガー、ドラムがチャック・トンプソンという面々で、さらに9曲中3曲だけジミー・ロビンソンという正体不明のトランぺッターが参加しています。9曲中スタンダードが5曲、ゴードンのオリジナルが4曲という構成で、前者はバラードが中心。“Cry Me A River”“Don't Worry About Me”“I Should Care”“Tenderly”と言った良く知られた曲をムードたっぷりに歌い上げます。“I Hear Music”だけがアップテンポで、軽快に飛ばすリズムセクションをバックにゴードンが快調にフレーズを繰り出していきます。一方、オリジナルの4曲はどれもこれぞハードバップと言ったナンバーばかり。60年代に復帰して以降のゴードンはスタイルを超越したどっしりとしたブロウを持ち味としますが、この頃のゴードンのプレイは典型的なバップスタイルで、フレージングも細かく、アップテンポの曲でも次々とメロディアスなアドリブを繰り広げていきます。特に疾走感あふれる“Rhythm Mad”“Bonna Rue”が最高ですね。その他、冒頭の明るい“Silver Plated”、ドゥートーン社長のドゥーツィ・ウィリアムズにささげたファンキーな“Blowin' For Dootsie”も捨てがたいです。これだけ素晴らしい演奏ができるにもかかわらずモダンジャズ全盛の50年代をほぼ塀の中で過ごしたゴードン。もし麻薬がなければもっと素晴らしい名演を残してくれたかもしれませんが、一方でこの時期に多くのジャズメンが麻薬が原因で命を縮めたことを考えると、その後完全復活してくれた方を良しとすべきかもしれませんね。

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ケニー・ドリュー/ダーク・ビューティ

2017-11-14 12:04:42 | ジャズ(ヨーロッパ)

前回に引き続きスティープルチェイスの再発盤ということで、ケニー・ドリューの「ダーク・ビューティ」をご紹介します。ドリューのことは以前にリヴァーサイド盤「パル・ジョーイ」で取り上げたことがあります。50年代から60年代前半にかけて、リヴァーサイドに4枚、ブルーノートに2枚のリーダー作を残し、その他サイドマンとしても多くの作品に顔を出すなどハードバップ期を代表するピアニストの一人でした。ただ、彼も人種問題で騒がしいアメリカに嫌気がさしたのか、早くも1961年にパリに移住。1964年からはコペンハーゲンに定住し、終生を北欧で過ごしました。とは言え、決してのんびり隠居生活を送っていたわけではありません。演奏活動はむしろアメリカ時代よりも活発なぐらいで、70年代から80年代にかけて多くのリーダー作を残しています。



1974年発表の本作「ダーク・ビューティ」はドリューの北欧時代の代表作、と言うよりも彼の全てのキャリアの中でも最も有名かつ評価も高い作品と言っていいでしょう。ニールス・ヘニング・ペデルセン(ベース)、アルバート・ヒース(ドラム)を従えたトリオ作品で、円熟のプレイを繰り広げてくれます。全11曲、オリジナルは4曲だけで後は有名スタンダード中心ですが、決してありきたりの演奏に終わることなく、私のような口うるさいジャズファンをも十分満足させてくれる内容です。特にお薦めはドライブ感抜群の“It Could Happen To You”“Stranger In Paradise”、マイルス・デイヴィスの原曲よりかなりハイテンポな“All Blues”、ペデルセンのベース・ソロが大きくフィーチャーされる“A Felicidade”“Love Letters”あたりですね。50年代のドリューにもリヴァーサイド盤「ケニー・ドリュー・トリオ」等の有名作もありますが、内容的にもこちらの方がより洗練されていると思います。

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デクスター・ゴードン/ステイブル・メイブル

2017-11-09 12:21:18 | ジャズ(ヨーロッパ)
本日は久々にスティープルチェイスの再発シリーズを取り上げたいと思います。同レーベルのことは以前ホレス・パーランの「アライヴァル」の頁で説明しました。70年代にデンマークに設立されたレーベルですが、当時のコペンハーゲンは治安も良く人種差別も少ないのに加え、モダンジャズを愛する聴衆も多く存在したことから、黒人ジャズメン達にとって格好の移住先になっていました。デクスター・ゴードンはその代表格の一人。彼の場合、ブルーノートから多くの名盤を発表し、キャリアの絶頂にあった1962年に早くもパリに移住。その後はコペンハーゲンに居を移してマイペースに活動を続けていました。スティープルチェイスにはライブ盤を含めて20枚を優に超える作品を残しており、デューク・ジョーダンと並んで同レーベルの“顔”と呼んで差し支えないでしょう。本作「ステイブル・メイブル」は1975年3月にコペンハーゲンでスタジオ録音されたもの。サイドマンはピアノが上述のホレス・パーラン、ベースが地元出身のニールス・ヘニング・ペデルセン、ドラムが同じくアメリカから移住してきたトニー・インザラコとなっています。



曲は別テイク3曲を除けば6曲。オリジナル曲は1曲もなく、全て良く知られたスタンダードばかりですが、録音当時52歳のゴードンが貫禄たっぷりのプレイで「これぞジャズテナー!」とでも呼ぶべきプレイを繰り広げます。冒頭“Just Friends”は数え切れないほど多くのジャズメンに演奏されたスタンダードですが、ゴードンの朗々と歌い上げるテナー、続くパーランの躍動感あふれるピアノソロ。どちらも素晴らしく、新たな名演と呼んで良い出来です。続く“Misty”はゴードンお得意のバラード。ダンディズム溢れる雄大なプレイに惚れ惚れします。3曲目はチャーリー・パーカーの“Red Cross”。バップの古典を豪快に吹きまくっています。4曲目はマイルス・デイヴィスの“So What”。モード・ジャズの古典ですが、ここでは原曲よりかなりテンポアップして演奏しています。ペデルセンのベースも大活躍です。5曲目“In A Sentimental Mood”はエリントン楽団のバラード曲。珍しくゴードンがソプラノサックスで演奏していますが、正直言ってあまりピンとこない。やっぱりテナーの方がいいですね。ラストはベニー・ゴルソンの名曲“Stablemates”。これもストレートアヘッドな演奏で締めくくります。ゴードンと言えばやはりブルーノートの名作群が外せませんが、スティープルチェイスの作品も今後発掘していきたいと思います。
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