ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ミルト・ジャクソン/バラッズ&ブルース

2014-04-27 22:37:48 | ジャズ(ハードバップ)
本日は久々にミルト・ジャクソンのアルバムをご紹介します。ミルトは言わずと知れたジャズ・ヴァイブの第一人者で、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の一員としても有名ですが、個人的にはソロでの演奏の方がよりブルースフィーリングに溢れていて好きですね。アトランティック・レコードに数多くの名作を発表していますが、本作はその記念すべき第一弾。かの名作「プレンティ・プレンティ・ソウル」の前年の1956年に録音された作品です。タイトル通りバラードとブルースばかりを集めた内容で、バラードではMJQの同僚ジョン・ルイスらと組んで端正なムードたっぷりの演奏を、ブルースでは縦横無尽なアドリブでソウルフルな演奏を聴かせてくれます。



全9曲、3つのセッションに分かれており、それぞれ3曲ずつを演奏しています。“So In Love”“Solitude”“They Didn't Believe Me”のスタンダード3曲は、ラルフ・バーンズ指揮のオーケストラをバックに従え、バリー・ガルブレイス(ギター)、ジョン・ルイス(ピアノ)、オスカー・ペティフォード(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)がリズムセクションを務める編成。MJQを思わせるような端正な演奏で、ミルトのプレイもおとなしめ。随所に挟まれるルイスのピアノソロが美しいです。“How High The Moon”“Hello”“Bright Blues”はルイス、ペティフォード、クラークはそのままで、ギターがスキーター・ベストに変更。そしてラッキー・トンプソンのテナーが大きくフィーチャーされています。コールマン・ホーキンスを思わせるようなトンプソンの豪快なテナーに煽られるように、ミルトもよりブルージーな側面を見せてくれます。“These Foolish Things”“The Song Is Ended”“Gerry's Blues”は当時西海岸で活躍していた白人ギタリストのバーニー・ケッセルをゲストに迎え、同じく西海岸のドラマー、ローレンス・マラブルとMJQの同僚パーシー・ヒースがベースを務める異色の編成。軽やかなミルトのプレイもさることながら、ケッセルのスインギーなギターが素晴らしいです。以上、三者三様の組み合わせですが、そこから生み出されるジャズはどれも良質。地味ながら拾いモノの佳作です。
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アイヴィーリーグ・ジャズ・コンサート

2014-04-26 11:20:44 | ジャズ(クールジャズ)

本日はちょっと変わり種でアメリカ東部の名門エール大学で1959年11月に行われたコンサートの模様を収録した作品をご紹介します。日本でも大学の学園祭でアイドル歌手やロックバンドのコンサートはつきものですが、50年代のアメリカでは同じようなノリで各地のキャンパスでジャズコンサートが行われていたようですね。まあ、当時はジャズもいわゆる流行音楽の一種でしたから学生達も軽いノリで参加していたのでしょうね。同じような企画としてはチェット・ベイカーがミシガン大学で行った演奏を収めた「ジャズ・アット・アナーバー」、バド・シャンクがカリフォルニア工科大学で行った演奏を収めた「ジャズ・アット・カルテック」などがあります。



参加メンバーはズート・シムズ(テナー)、サム・モスト(フルート)、ジミー・レイニー(ギター)、テディ・チャールズ(ヴァイブ)、デイヴ・マッケンナ(ピアノ)、ビル・クロウ(ベース)、エド・ショーネシー(ドラム)の7名。全員が白人ミュージシャンで当時東海岸でプレイしていた面々です。一応、テディ・チャールズがリーダーということになっていますが、実質はリーダー不在で冒頭の“Rifftide”以外は各自が曲ごとにイニシアチブを取るという一風変わった構成です。名義上のリーダーであるチャールズはエール大学の学生歌“Whiffenpoof Song”で美しいバラード演奏を聴かせますが、もともと実験的な音楽を得意としているだけあって“Yale Blue”“Nigerian Walk”の2曲でトンがった演奏を聴かせます。ただ、個人的には他のオーソドックスな演奏の方が好きですね。マッケンナによる“Struttin' With Some Barbecue”、レイニーによる“Yesterdays”、モストによる“That Old Black Magic”。どれもストレートな演奏ですが各人のソロがたっぷり楽しめます。ただ、イチ押しはやはりズート・シムズによる2曲。スインギーな“Too Close For Comfort”もいいですが、続く“These Foolish Things”が最高。テナーによるバラードプレイの真髄とでも言うべき名演です。エール大学のキャップをかぶったブルドッグのジャケットも何ともユニークですね。

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ザ・ハッピー・ジャズ・オヴ・オシー・ジョンソン

2014-04-20 11:49:50 | ジャズ(スイング~中間派)

本日はいぶし銀の名ドラマー、オシー・ジョンソンをご紹介します。同時代に活躍したブレイキー、ローチ、フィリー・ジョーらに比べると格落ちの印象は否めませんが、それでも50年代から60年代にかけて多くのセッションに顔を出し、モダンジャズの屋台骨を支えた名手です。見ての通り黒人ではありますが、アル・コーン、ズート・シムズなど白人ジャズメンとの共演が多く、他にもクリス・コナーら歌手の伴奏、あるいはビッグバンドでの演奏が多く、いわゆるハードバップとはやや距離を置いていたようです。1955年、ベツレヘム録音の本作もバップ色よりスイング色の強い内容です。



全11曲、セッションは3つに分かれており、クインテット4曲、セクステット4曲、そしてオクテット3曲という構成。メンバーは入れ替わりが多いので全員列挙しませんが、全曲に登場するのがフランク・ウェス(テナー&フルート)、その他セクステットとオクテットにサド・ジョーンズ(トランペット)が加わります。トロンボーンは各セッションごとにベニー・パウエル、ビル・ヒューズ、ヘンリー・コーカーと入れ替わります。勘の良い方は既におわかりと思いますが、これは当時のカウント・ベイシー楽団のメンバーですね。オシー自身はベイシー楽団に所属したことはありませんが、ホーン陣との呼吸もピッタリで、スモールコンボ版ベイシーサウンドとでも言うべき魅力的な内容になっています。なお、ピアノは御大ベイシーではなく、白人ピアニストのディック・カッツが務めています。曲はオリジナル中心で特にオシーが6曲を作曲していますが、どれも魅力的な内容で“Cat Walk”“Jumpin' At The Waterhole”“Osie's Oasis”等はベイシー楽団のレパートリーになっていてもおかしくない仕上がり。唯一“Osmosis”だけがハードバップ調で、これは後にズート・シムズやデイヴ・ベイリーにもカバーされたオシーの代表曲です。他ではオシーの意外とシブいボーカルが堪能できる“Don't Bug Me, Hug Me”もユニークです。地味なのでスルーしてしまうかもしれませんが、タイトル通りハッピーな楽曲がいっぱい詰まった隠れ名盤と言えるでしょう。

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スリー・トランペッツ

2014-04-12 12:43:27 | ジャズ(ハードバップ)

本日はプレスティッジの7000番台再発シリーズからアート・ファーマー、ドナルド・バード、イドリース・スリーマンの3人のトランペッターによる共演盤をお送りします。50年代中盤のプレスティッジにはテナー4人による「テナー・コンクレイヴ」、トランペット2人&テナー2人による「インタープレイ・フォー・2トランペッツ&2テナーズ」など同一楽器による共演盤が数多くありますが、本盤もその一環と言えます。リーダーのうちファーマーとバードに関しては今さら説明するまでもないビッグネームですよね。特に本作が録音された1957年頃は超売れっ子としてあちこちのセッションに引っ張りだこでした。2人はこの前年にもプレスティッジ盤「2トランペッツ」で共演を果たしており、本作はそこにイドリース・スリーマンが加わったという構成です。スリーマンは2人に比べるとマイナーかもしれませんが、50年代のプレスティッジのセッションにはよく登場する名前です。リズムセクションは白人ピアニストのホッド・オブライエン(ピアノ)、アートの双子の弟アディソン・ファーマー(ベース)、後にオスカー・ピーターソン・トリオで活躍するエド・シグペン(ドラム)という顔ぶれです。



曲は全5曲。全てメンバーのオリジナルと書いてありますが、ウソですね。ラストの“You Gotta Dig It To Dig It”は誰がどう聞いても“Cherokee”そのものです。4曲目の“Forty Quarters”も“You Stepped Out Of A Dream”のコード進行を少し変えただけです。著作権があまりうるさくなかった50年代にはよくあった話ですが・・・それはともかく、肝心の演奏は素晴らしいの一言。特に私のような全楽器の中でもトランペットが一番好きという輩には3人の豪華共演はたまりません。60年代以降はソフト路線に転向するファーマーもこの頃は熱きハードバッパーですし、クリフォード・ブラウンの後継者として飛ぶ鳥を落とす勢いだったバードのブリリアントなプレイ、過小評価されがちですがパワフルな音が持ち味のスリーマンと三者三様に持ち味を発揮しています。ベストトラックは“Cherokee”もとい“You Gotta Dig It To Dig It”。スピード感あふれるリズムセクションに煽られるように3人が渾身のアドリブをリレーしていきます。終盤の掛け合いも実にスリリング。他ではホッド・オブライエン作のメロディアスな“Diffusion Of Beauty”、1曲目のファンキーな“Palm Court Alley”もお薦めです。

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サド・ジョーンズ&メル・ルイス/コンサメーション

2014-04-05 10:42:43 | ジャズ(ビッグバンド)
本日はブルーノート4300番台シリーズからサド・ジョーンズ&メル・ルイスの双頭リーダーによるビッグバンド作品をピックアップします。サド・メル楽団については以前ソリッド・ステイト盤のエントリーでも解説済みですが、カウント・ベイシー楽団出身のサド・ジョーンズとウェストコーストの名ドラマーだったメル・ルイスの双頭リーダーによるビッグバンドです。ベテランor若手、黒人or白人を問わない多彩なメンバー構成が特徴で、本作にも総勢25名が参加しています。全員は多すぎるのでソロを取るメンバーだけを列挙すると、トランペットがリーダーのサドに加えスヌーキー・ヤング、マーヴィン・スタム、ダニー・ムーア。サックスがエディ・ダニエルズ、ビリー・ハーパー、ジェローム・リチャードソン、ジェリー・ドジオン。トロンボーンがベニー・パウエル。ピアノがローランド・ハナ、ベースがリチャード・デイヴィス、そしてドラムがメルと言う顔ぶれです。



全8曲サド・ジョーンズのオリジナル曲で、バラードありアップテンポあり、古典的ビッグバンド風の曲ありフリージャズっぽい曲ありとバラエティ豊かな構成です。ベイシー楽団で輝かしい経歴を持つサドですが、過去の栄光にとらわれず、1970年という時代に対応した曲作りをしているのはさすがですね。切れ味鋭いホーンセクションが冴えわたる“Dedication”、ロックテイストあふれるファンキーな“Us”“Ahunk Ahunk”、10分を超える大作の中で各メンバーがアグレッシブなソロを繰り広げる“Fingers”と意欲的なラインナップが続きます。ただ、本作の目玉はやはりバラードの2曲“A Child Is Born”“Consummation”ではないでしょうか?特に前者はサドの代表曲として数多くのジャズメンにカバーされた名曲中の名曲。波間をたゆたうようなホーンアンサンブルの中をサドが美しいフリューゲルホルンを聴かせてくれます。アップテンポの曲が多いだけに一際光る究極のバラード演奏です。
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