本日はジャマイカ出身のトランぺッター、ディジー・リースをご紹介します。ジャマイカと言えば何と言ってもレゲエ。ボブ・マーリーやジミー・クリフの名前をまず思い出しますが、彼らが台頭するのは60年代後半になってからのこと。それ以前の40年代~50年代はジャズが結構盛んだったようです。ジャマイカ出身のジャズマンには他にピアニストのモンティ・アレキサンダー、テナー奏者のウィルトン・ゲイナー等がいます。当時のジャマイカはまだイギリス領(独立は1962年)。リースも他のジャマイカ人ジャズメン同様に距離的に近いアメリカではなく、まずロンドンに向かいます。ロンドンを中心にヨーロッパ各地で演奏活動を行い、名を上げたリースに注目したのがブルーノート社長のアルフレッド・ライオン。1958年に「ブルース・イン・トリニティ」、翌年に「スター・ブライト」の2枚のリーダー作を吹き込み、1960年5月12日録音の本作が3作目にあたります。(それ以外にお蔵入りになったスタンリー・タレンタインとの「カミン・オン」というセッションがあるようですが私は未聴です)
本作「サウンディン・オフ」はリースのワンホーンカルテットで、メンバーはウォルター・ビショップ・ジュニア(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)です。ちなみにタイトルに使われているsound offとはサウンドをオフにする=静かにするという意味ではなく、むしろ逆で大声でまくし立てるという意味らしいです。その通りにリースが全編で高らかにトランペットを鳴り響かせますが、決してうるさいわけではなく、きちんとコントロールもされています。
曲はスタンダード中心ですが、注目したいのがその選曲。1曲目のバラード”A Ghost Of A Chance”、2曲目ミディアムの”Once In A While"ともにクリフォード・ブラウンの名演で知られる曲です。なかなかチャレンジングなチョイスですが、リースはブラウンばり、とまではさすがに言えないものの十分に説得力のあるプレイを聴かせてくれます。3曲目”Eb Pob"も偉大なる先輩トランペッター、ファッツ・ナヴァロの楽曲。Be Bopを逆さ読みした軽快なバップ曲です。続く定番スタンダード”Yesterdays"”Our Love Is Here To Stay"はややベタな気もしますが、最後は自作曲の痛快ハードバップ”Blue Streak"で鮮やかに締めくくります。ウォルター・ビショップ・ジュニアはじめリズムセクションも安定のサポートぶりです。