チャイコフスキーは番号なしの「マンフレッド交響曲」を含めて7曲の交響曲があり、本ブログではあらかた紹介してきました。一般的に有名なのは後期の3大交響曲(第4番、第5番、第6番ですが、知名度の低い第3番「ポーランド」や第2番「小ロシア」も捨てがたい魅力があります。唯一未聴だったのが本日ご紹介する第1番「冬の日の幻想」で、これでチャイコフスキーの交響曲はコンプリートです。本作はチャイコフスキー26歳の時に書かれたキャリアの中でも初期の作品ですが、意外と人気が高く、演奏会で取り上げられることもそれなりに多いようです。CDは、カラヤン指揮ベルリン・フィルのものもありますが、私が購入したのは第3番、第2番に続きムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団のものです。
曲は標準的な4楽章形式です。第1楽章はチャイコフスキー自身が「冬の旅の幻想」と標題を付けましたが、特定の情景を描写したわけではなくあくまでイメージです。標題からすると寒風吹きすさぶロシアの大地をイメージしますが、意外に力強く堂々とした曲風です。第2楽章は「陰気な土地、霧の土地」の副題が付けらており、チャイコフスキーの真骨頂とでも言うべき哀調を帯びながらも思わず口ずさんでしまうような歌心溢れる旋律です。第3楽章はスケルツォですが中間部ではロマンチックなワルツ風の旋律も顔を見せます。第4楽章はロシア民謡をベースにした哀愁溢れる第1主題で静かに始まりますが、中間部で高揚感に満ちた第2主題が現れます。その後再び暗い第1主題に戻った後、最後はエネルギーを爆発させるかのようなド派手なフィナーレを迎えます。初期の作品ではありますが、親しみやすい旋律にフィナーレの盛り上がりとチャイコフスキーらしさが存分に発揮された傑作だと思います。