ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

サン=サーンス/ピアノ協奏曲第1番、第2番、第3番

2018-07-30 12:56:06 | クラシック(協奏曲)
本日はカミーユ・サン=サーンスの初期のピアノ協奏曲をご紹介したいと思います。サン=サーンスは生涯に5曲のピアノ協奏曲を作曲しましたが、そのうち4番と5番については過去ブログでもご紹介しました。いずれも作曲者が名声を確立した40代以降の作品で、特に「エジプト風」の副題を持つ第5番は円熟味あふれる傑作と思います。今日ご紹介する1番から3番までの3曲は20代から30代前半までに書かれた初期の作品で、それだけにまだ作風に“青さ”が残るものの、一方で青年期ならではの瑞々しさにあふれた作品となっています。CDはナクソスから出ているマルク・スーストロ指揮マルメ交響楽団のサン=サーンス作品集を購入しました。ピアノはロマン・デシャルムというフランスの中堅ピアニストです。

  

まず第1番から。サン=サーンス23歳の時に書かれた作品で彼のキャリアの中でも最も初期の作品です。第1楽章はホルンの奏でる印象的な主題で始まり、続いてロマンティックな第2主題に。以降はその繰り返しですが、12分近くあるためかやや冗長なのは否めません。続く第2楽章はオーケストラは伴奏程度でピアノがほぼ独奏に近い形で幻想的な旋律を奏でてゆきます。第3楽章は一転してきらびやかな音の洪水。ピアノとオーケストラが一体となってフィナーレに向けて突き進んでいきます。全体的な完成度はイマイチですが、最後の盛り上がりはなかなかのものです。

続いで第2番。第1番の10年後に書かれた作品で、その間に作曲者として大きな成長を遂げたのか完成度の高い作品となっています。特に第1楽章が素晴らしく、メランコリックな旋律とドラマチックなオーケストレーションが融合した真の名曲と言ってよいでしょう。続く第2楽章は一転して軽やかなスケルツォ。中間部の夢見るような第2主題が印象的です。第3楽章は再びメランコリックな旋律で、フィナーレに向けてドラマチックに盛り上がって行きます。全体で25分ほどの小品ですが、短い中に聴きどころがギュッと詰まっており、文句なしの傑作と言っていいでしょう。実際、この曲はコンサートでも取り上げられる機会も多く、後期の傑作である第5番と並んでサン=サーンスのピアノ協奏曲の中で最も人気の作品となっています。

最後に第3番。第2番の1年後に書かれた作品です。第2番があまりにも良かったので、聴く方も期待が高まりますが、実際はそうでもないと言うのが正直なところ。第1楽章は交響曲的なスケールで迫る雄大な作風ですが、若干くどいと言えばくどい。第2楽章は静謐なアンダンテですが、これもややインパクトが弱いか。第3番は華やかな楽章で、最後にようやく盛り上がりを見せます。ただ、全体的には地味な印象は拭えません。う~ん、決して悪くはないんですけどね。あえて繰り返し聴こうとは思わないかな。

ナクソス盤全集にはこの3曲の他に、ピアノと管弦楽のための作品が4曲(「アレグロ・アッパショナート」「オーヴェルニュ狂詩曲」「アフリカ幻想曲」「ウェディング・ケーキ」)収録されています。どれもサン=サーンスらしいツボを押さえた曲作りですが、個人的には「オーヴェルニュ狂詩曲」が無名ながらもお薦めです。前半の叙情的な旋律と後半のエネルギッシュな展開が聴きモノです。この中で比較的有名な「アフリカ幻想曲」はタイトルから想像するのとは違ってアラブ風の旋律が随所に挟まれます。アフリカと言ってもいわゆるブラックアフリカではなく当時フランスの植民地だったアルジェリア、チュニジア等の北アフリカのことで、サン=サーンスが当地をたびたび訪れていたことが背景にあるようです。
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ハイドン/交響曲第96番、第97番、第98番

2018-07-24 22:53:48 | クラシック(交響曲)
ひさびさの更新はハイドンです。ハイドンは「交響曲の父」と呼ばれ、生涯に104曲という膨大な数の交響曲を残していますが、あまりにも数が多すぎるせいか代表作は番号ではなく副題で呼ばれることが多いです。本ブログでも過去に取り上げた「V字」「オックスフォード」そして「驚愕」「軍隊」「時計」などがそうですね。これらの副題はハイドン自身が付けたものではなく、後世になって特に深い意味もなく付けられたものばかりですが、それだけ聴衆に親しまれていた証拠とも言えます。本日取り上げる3つの交響曲は96番こそ「奇蹟」の副題がついていますが、97番と98番は単に番号だけで、そのせいか一連の「ロンドン交響曲」の中でも地味な存在です。CDの数も「驚愕」「軍隊」「時計」や「ロンドン」あたりと比べると極端に少ないです。私が手に入れたのは往年のドイツの名指揮者オイゲン・ヨッフムがロンドン・フィルを指揮したものです。



まずは96番の「奇蹟」から。第1楽章はいかにもハイドンらしい始まり方で、やや重苦しい序奏から一転して次々と魅惑的な旋律が現れます。愛らしいアンダンテの第2楽章、宮廷音楽風の華やかな第3楽章メヌエットを経て、キビキビとした第4楽章フィナーレを迎えます。続いて97番。こちらも第1楽章は厳かな序奏で幕を開け、そこからは一転して勇壮な旋律が展開されます。後のベートーヴェンを思い起こさせるような曲風で、なかなかの名曲と言っていいでしょう。第2楽章の穏やかなアダージョ、第3楽章の舞踏会風のメヌエットは96番と同じような展開で、第4楽章は再び力強いフィナーレで幕を下ろします。98番も同じで第1楽章は静かな序奏の後にめくるめく魅惑の旋律が現れます。第2楽章は穏やかなアダージョですが、英国国歌「国王陛下万歳」を主題に使っているのがユニークです。第3楽章は思わずスキップしてしまいそうな軽快なメヌエット。続く第4楽章も軽快なテンポで進み、最後はこれぞハイドンと言った華やかなフィナーレで締めくくります。以上3曲ともどれも似たような展開でワンパターンと言ってしまえばそれまでなんですが、どの曲も捨てがたい魅力があり、特に第1楽章はどれも名旋律揃いだと思います。まだまだ聴いていない交響曲がたくさんあるハイドン。奥が深いですね!
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