ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ドヴォルザーク/交響曲第5番

2020-03-19 12:57:06 | クラシック(交響曲)

本日はドヴォルザークの交響曲第5番をご紹介します。ドヴォルザークの交響曲と言えば第9番「新世界」を筆頭に、第8番第7番までが比較的有名ですね。それより若い番号については余程のドヴォルザーク好きでないとあえて聴かないでしょうが、以前に紹介した第6番も意外に良かったですし、この第5番もなかなか魅力的な作品です。作曲は1875年、ドヴォルザーク34歳の時で、国際的な知名度はまだまだですが、チェコ国内(と言っても当時はオーストリア領でしたが)でようやく活躍が認められ始めた頃の作品です。CDは第6番と同じく、オットマー・スウィートナー指揮シュターツカペッレ・ベルリンの演奏によるものです。

まずは第1楽章。朗らかな木管の響きに導かれるように、オーケストラが春の農村風景を思い起こさせるような牧歌的な調べを奏でていきます。この曲は愛好者たちの間ではドヴォルザークの「田園」とも呼ばれているそうですが、なるほどそんな感じです。第2楽章はやや暗めの緩徐楽章でこの曲の中では一番地味です。第3楽章は冒頭こそ静かですが、途中から舞曲風の軽快な旋律に。ただし、そこまで賑やかな展開ではなく、オーケストラは抑制気味です。第4楽章はその分序盤からエネルギーを爆発させるかのような盛り上がりです。途中で一旦落ち着きますが、フィナーレはフルオケでド派手に締めくくります。なお、CDにはカップリングで序曲「わが家」が収録されています。こちらはチェコの民謡をベースに作曲されたもので、ゆったりした序奏の後、躍動感溢れる旋律が次々と現れてきます。ベートーヴェン的力強さと民俗音楽が融合した名曲です。

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ブルッフ/交響曲第3番

2020-03-17 21:38:14 | クラシック(交響曲)

本日はマックス・ブルッフの交響曲第3番をご紹介します。世間一般ではヴァイオリン協奏曲第1番のみの一発屋扱いされがちなブルッフですが、他にも多くの隠れた名曲を残しており、当ブログでは交響曲第1番&第2番ヴァイオリン協奏曲第2番&第3番、さらにチェロと管弦楽のための「コル・ニドライ」などの名曲を取り上げてきました。この交響曲第3番は1887年に発表されたもので、彼にとって最後の交響曲です。ブルッフの他の作品と同様にドイツ・ロマン派の王道を行くもので、個人的には文句なしの傑作と思いますが、他の交響曲と同様に全くと言っていいほど取り上げられることはありません。ほぼ同世代のブラームスに比べてなぜブルッフがこれほどの過小評価を受けているのかは本当に謎ですね。CDもほとんどなく、一時ジェイムズ・コンロンの交響曲全集が発売されたのを除けば今日ご紹介するナクソス盤ぐらいですね。演奏はハンガリー国立交響楽団、指揮はマンフレート・ホーネックです。ホーネックと言えば現ピッツバーグ交響楽団音楽監督で今や世界を代表する指揮者の1人と言って良いぐらいですが、この曲が録音された1987年はまだ29歳で、指揮者としてはほんの駆け出しの頃です。

曲は伝統的な4楽章形式で書かれています。特に標題のようなものはありませんが、生まれ故郷であるラインラント地方への郷愁が反映されていると言われ、「ライン」の副題を付ける予定もあったそうです。第1楽章はライン川の夜明けを思わせる静かで厳かな雰囲気で始まり、そこからこれぞドイツ・ロマン派!と言った格調高い旋律へと移行します。 第2楽章はアダージョ。やや暗めの曲で中盤までは地味ですが、終盤に弦楽合奏がドラマチックな盛り上がりを見せます。第3楽章は生き生きとしたスケルツォ。中間部は民俗舞踊を思わせるような活気溢れる曲です。第4楽章はフィナーレにふさわしい壮麗な旋律で感動的に締めくくります。以上、ブルッフならではの旋律の親しみやすさに加え、交響曲ならではの重厚感も兼ね備えており、シューマンやブラームスの交響曲群と比べても決して劣らないと思います。

なお、CDにはカップリングとして「ロシアの主題による組曲」が収録されています。これはイスラメイの作者でもあるバラキレフが収集したロシア民謡集にブルッフがオーケストレーションを施したものです。ドイツ人のブルッフがなぜにロシア民謡?と思うかもしれませんが、他にも「スコットランド幻想曲」や「スウェーデン舞曲」等も作曲しているので、純粋に色々な国の民族音楽が好きだったみたいです。ブルッフらしいロマンチックな旋律の合間に、いかにも民謡と言った素朴なメロディが次々と現れる楽しい曲です。

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リヒャルト・シュトラウス/ブルレスケ、二重小協奏曲、ヴァイオリン協奏曲

2020-03-07 20:57:51 | クラシック(協奏曲)

本日はリヒャルト・シュトラウスの協奏的作品集をご紹介します。チャンドス・レーベルから発売されているもので、「ピアノと管弦楽のためのブルレスケ」、「クラリネットとファゴットのための二重小協奏曲」、「クラリネットと管弦楽のためのロマンツェ」、「ヴァイオリン協奏曲」の4曲が収録されています。演奏はBBC交響楽団で、指揮者兼ソリストがクラリネット奏者のマイケル・コリンズ、その他ブルレスケでマイケル・マクヘイル、二重小協奏曲のファゴットでジュリー・プライス、ヴァイオリン協奏曲でタスミン・リトルがそれぞれソリストを務めています。

まずは「ブルレスケ」から。シュトラウス21歳の時に発表した単一楽章20分ほどの作品です。彼はいわゆるピアノ協奏曲を書いていませんので、これが唯一のピアノとオーケストラのための楽曲です。タイトルのブルレスケとはイタリア語起源で「おどけた」とか「ひょうきんな」とか言う意味です。シュトラウスがなぜこの題名を付けたのかはわかりませんが、別におちゃらけた内容ではありません。序盤からピアノが縦横無尽に駆け巡るかなり賑やかな曲で、それでいて随所に夢見るような美しい旋律もあり聴いていて楽しい曲です。

続く「二重小協奏曲」は1947年、シュトラウス83歳の時に書かれた作品です。小協奏曲と言うだけあって伴奏は弦楽器とハープのみで室内楽風の小ぢんまりした曲す。以前オーボエ協奏曲を取り上げた際も書いたように、晩年の彼は老いの境地に達したのか、古典的かつシンプルな作風へと変化しており、本作もまるでモーツァルトを思い起こさせるような天国的な美しさに満ちています。続く「ロマンツェ」はなんと15歳の時に書かれた曲。クラリネットが美しい旋律を奏でる愛らしい小品です。二重小協奏曲とは70年近い時間の開きがありますが、一周回って意外と作風が似ているのが面白いですね。

 最後にヴァイオリン協奏曲。この曲はリヒャルト・シュトラウスが18歳の時に書かれた作品で、一般的には若き日のシュトラウスが書いた未成熟な作品と見られています。従って多くのヴァイオリニストはレパートリーに入れていませんし、シュトラウスの代表作にもカウントされません。ただ、個人的にはなかなかの名曲と思います。後年の交響詩やオペラのような後期ロマン派的なサウンドではなく、シューマンやブルッフのヴァイオリン協奏曲にも通じる正統的なドイツ・ロマン派の協奏曲ですが、これはこれでいい。特に第1楽章が素晴らしく、冒頭からヴァイオリンが情熱的な旋律を歌い上げ、オーケストラが華やかに盛り立てていきます。哀調たっぷりの第2楽章、軽快なロンド形式の第3楽章も悪くない。スルーしている人も多いかと思いますが、もっと評価されても良い曲だと思います。

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