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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

カウント・ベイシー/オール・オヴ・ミー

2025-03-18 19:28:52 | ジャズ(ビッグバンド)

カウント・ベイシー楽団の全盛期が1950年代後半から60年代前半にあったことは多くの人の意見が一致するところだと思います。この頃のベイシー楽団はニール・ヘフティ、クインシー・ジョーンズ、アーニー・ウィルキンス、ベニー・カーターら名だたるアレンジャーを音楽監督に起用し、彼らのオリジナル曲で構成された作品を中心に発表していました。本ブログでも取り上げた「アトミック・ベイシー」「ベイシー・プレイズ・ヘフティ」「ワン・モア・タイム」「カンザスシティ組曲」「ザ・レジェンド」等がそうですね。

一方、それら意欲的な作品群に交じって有名スタンダード曲や当時のヒット曲を集めたアルバムも何枚かあります。これらはよりライトな層のファンに向けてのレコード会社の戦略だと思いますが、コアなジャズファンからは”売れ線狙い”としてどうしても評価が低くなりがちです。ただ、実際に内容が薄いかと言われるとそんなことはありません。何と言っても演奏するのは天下のベイシー楽団。彼らの鉄壁のアンサンブルと名手達のソロが楽しめるのですから一聴の価値はあります。

本日ご紹介する「オール・オヴ・ミー」は1963年4月にヴァーヴ・レコードに吹き込まれた1枚。原題はMore Hits Of The 50's And 60'sとなっており、文字通り50~60年代にヒットした曲ばかりで構成されています。と言っても当時ヒットチャートを賑わせていたエルヴィス・プレスリーやポール・アンカ等のロック&ポップスではなく、主にフランク・シナトラが歌った曲のビッグバンド版ですね。シナトラはご存じのとおりジャズシンガーであると同時に映画スターでもあり、当時のショービジネス界を代表する大物でした。

メンバーですが、この頃は時期的に50年代のベイシー楽団と60年代の同楽団の過渡期で、たとえばトランぺットはサド・ジョーンズやジョー・ニューマンは既に脱退しており、代わりにアル・アーロンズ、ドン・レイダー、ソニー・コーンらが加わっています。一方、サックス陣はフランク・フォスター、フランク・ウェスはまだ在籍しており、そこに前年に加入したエリック・ディクソンと言う布陣。トロンボーンはヘンリー・コーカー、ベニー・パウエル、グローヴァ―・ミッチェルら常連のメンバーに加え、白人トロンボーン奏者のアービー・グリーンが名を連ねています。マーシャル・ロイヤル(アルト)、チャーリー・フォークス(バリトン)、フレディ・グリーン(ギター)、ソニー・ペイン(ドラム)は50年代から続く不動のメンバーで、ベースが前年にエディ・ジョーンズの後を引き継いだバディ・キャトレットです。なお、アレンジャーには白人トロンボーン奏者のビリー・バイヤーズが起用されています。

1曲目は”The Second Time Around"。オープニングはド派手なブラスの咆哮で始まりますが、そこからは超スローテンポでゆったりしたホーンアンサンブルとフレディ・グリーンのリズムギターに乗ってベイシーがトツトツとピアノを弾き、アル・アーロンズがミュートランペットでソロを取ります。2曲目”Hey! Jealous Lover"は一転してテンポアップした演奏で、バンド全体が軽快にスイングする中、ドン・レイダーのトランペットとエリック・ディクソンのテナーソロが挟まれます。3曲目”I'll Never Smile Again"は美しいバラード演奏で、ゆったりしたアンサンブルに乗ってまずベイシーがピアノでメロディを弾き、アービー・グリーンが官能的なトロンボーンソロを聴かせます。4曲目”Saturday Night"はこれぞ典型的ベイシーサウンドと言ったミディアムチューンで、フランク・ウェスの軽やかなフルートソロを挟みながらバンドが軽快にスイングします。5曲目”This Love Of Mine"はシナトラ自身が歌詞を書いた彼の愛唱曲。ここでは原曲よりスローテンポで演奏されており、アル・アーロンズのミュートトランペットが彩りを添えます。6曲目”I Thought About You"はマイルスの「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」の演奏でも知られますが、ここでは典型的なスイングジャズ風の演奏。満を持して登場したフランク・フォスターが素晴らしいテナーソロを披露します。

続いて後半(B面)です。7曲目"In The Wee Small Hours Of The Morning”はシナトラはバラードで歌っていますが、ここではミディアムテンポで料理されており、エリック・ディクソンの野太いテナーソロ、アル・アーロンズのオープントランペットによる力強いソロが聴けます。8曲目”Come Fly With Me"は言わずと知れたシナトラの代表曲。躍動するビッグバンドサウンドに乗って目の覚めるようなテナーソロを聴かせるフランク・フォスターがファンタスティック!3分弱の演奏ながら本作のハイライトと言って良い名演です。9曲目”On The Road To Mandalay"はあまり他では聞いたことがない曲。ベイシーのピアノが珍しく全面的にフィーチャーされています。10曲目”Only The Lonely"も本作のもう一つのハイライトと呼べる美しいバラード。ここではマーシャル・ロイヤルのアルトソロが大々的にフィーチャーされています。エリントン楽団のジョニー・ホッジスと並び称されるロイヤルの官能的なアルトの音色に酔いしれるのみです。11曲目”South Of The Border"はミディアムテンポのスイングナンバーでソロはドン・レイダーのミュートトランペットとエリック・ディクソンのテナーです。ラストトラックは”All Of Me"。なぜか日本盤はこの曲がアルバムタイトルになっていますが、別に普通の演奏です。典型的なベイシービートで、御大ベイシーのピアノに合わせてバンド全体が軽快にスイングします。以上、一見すると安直なヒット曲集ですが中身は侮るなかれ。特に”Come Fly With Me"と”Only The Lonely"は必聴の名演だと思います。

 

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ディジー・ガレスピー/バークス・ワークス

2025-03-15 12:45:41 | ジャズ(ビッグバンド)

本日はディジー・ガレスピーです。ガレスピーと言えばチャーリー・パーカーと並ぶビバップの創始者として知られており、40年代はファッツ・ナヴァロと並んでジャズ・トランペットの第一人者でした。ただ、その後マイルス・デイヴィスが台頭。さらに50年代に入ってクリフォード・ブラウン、ドナルド・バード、リー・モーガンら若き天才達が次々と出現するにつれ、純粋なトランぺッターとしての存在感は相対的に低下していきます。

そんな中、ガレスピーはビッグバンドリーダーとしての活動に重点を置くようになります。もともと1940年代からビッグバンドを何度か結成していましたが、50年代半ば以降は常設のような形でノーマン・グランツのヴァーヴ・レコードに多くの作品を残しています。今日ご紹介する「バークス・ワークス」は先日取り上げた「アット・ニューポート」と並んでその頃の代表的なアルバムで1957年4月にスタジオ録音されたものです。

メンバーは総勢16名。リーダーのガレスピー以外のメンバーは、トランペットにリー・モーガン含め4人、トロンボーンにアル・グレイ含め3人、サックスにベニー・ゴルソン、ビリー・ミッチェル、アーニー・ヘンリーら5人、リズムセクションはウィントン・ケリー(ピアノ)、ポール・ウェスト(ベース)、チャーリー・パーシップ(ドラム)と言う布陣です。「アット・ニューポート」とほぼ同じですね。アレンジャーは曲によってアーニー・ウィルキンス、ベニー・ゴルソン、メルバ・リストン、そしてガレスピー自身が務めています。

アルバムはまずデューク・ジョーダンの”Jordu”で始まります。ブラウン&ローチ・クインテットの名演で知られる曲ですが、ここではアーニー・ウィルキンスがファンキーなビッグバンドアレンジを施しています。ソロを取るのはビリー・ミッチェルとガレスピーです。2曲目は"Birks' Works"。ガレスピーのミドルネームであるbirksを冠した彼の代表曲で、ここでのテナーソロはベニー・ゴルソン。ガレスピーが後に続きます。3曲目は"Umbrella Man"。ガレスピーは自作でよく歌を披露しますが、この曲もそうで、toodle-luma-lumaとユーモラスな歌詞が出てくるコミックソングをメンバーのコーラスをバックに楽しそうに歌います。途中で15秒ほど挟まれるトランペットソロはおそらく当時18歳のリー・モーガンでしょう(残念ながら他の曲ではモーガンのソロはありません)。4曲目はシャンソン曲の”Autumn Leaves”。アーニー・ウィルキンスが原曲よりかなりテンポ速めにアレンジをしており、ガレスピー→ビリー・ミッチェルの順でソロを取ります。5曲目”Tangorine”はガレスピーのオリジナル。タイトルはおそらくスタンダードの”Tangerine”をもじったもので、アルゼンチンタンゴのリズムを取り入れた情熱的な曲です。ガレスピーは昔からこういうラテン系の曲も大好きですよね。ウィントン・ケリーがタンゴ風のピアノソロを聴かせてくれます。

後半(B面)はがらりと空気が変わってオースティン・クローマーという男性歌手をフィーチャーした曲が3つ続きます。最初は有名な"Over The Rainbow"で美しいバラードなんですが、いや〜なんかちょっと違うんですよね。確かに歌は上手いけどガレスピー楽団に求めているのはこういう演奏じゃない。続く"Yo No Quiero Bailar"(スペイン語で英語のI Don't Want To Danceの意味)はラテンリズムで途中でケリーやガレスピーのソロが挟まれたりして楽しい曲ですが、続くタッド・ダメロンの"If You Could See Me Now"は再び熱唱バラード系です。最後までこの感じの曲が続いたらどうしようかと思いますが、9曲目"Left Hand Corner"で持ち直します。アーニー・ウィルキンス作の2分半ほどの短い曲ですが、パワフルでシャープなホーンアレンジに乗ってゴルソン→ガレスピー→アル・グレイがブリリアントなソロをリレーするドライブ感満点の曲。やっぱり彼らに求めるのはこのグルーブですよね!ラストはベニー・ゴルソンの代表曲"Whisper Not"。ソロはガレスピー→アルトのアーニー・ヘンリー→ケリー→ゴルソンでしょうか?本音を言うとリー・モーガンのプレイをもう少し聴きたかったところですが、録音時の格から言って仕方のないところ。それでもゴルソンや過小評価のビリー・ミッチェル、何よりボスのガレスピーの溌剌とした演奏が聴ける楽しいビッグバンド作品です。

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カウント・ベイシー/ストレート・アヘッド

2025-02-27 18:34:37 | ジャズ(ビッグバンド)

半世紀近くに渡ってビッグバンドジャズをリードし続けたカウント・ベイシー楽団ですが、その割にマンネリに陥ることがなかったのは定期的にメンバーを入れ替えていたからだと言われています。不動のメンバーはボスのベイシーとリズムギターのフレディ・グリーンだけで、後は時代とともに顔ぶれが変わっています。ざっと代表的な名前を挙げただけでも、30年代はレスター・ヤング、ハリー・エディソン、バック・クレイトン、50年代はサド・ジョーンズ、ジョー・ニューマン、フランク・フォスター、フランク・ウェス、そして60年代はアル・アーロンズ、エリック・ディクソンとそれぞれの世代で一流のジャズメンを起用し、常に新陳代謝を図ってきました。アレンジャーもさまざまな人材を起用しており、作品によってアーニー・ウィルキンス、ニール・ヘフティ、ベニー・カーター、クインシー・ジョーンズらが作曲・編曲を手掛け、それぞれが持ち味を発揮して緻密なベイシー・サウンドを作り上げています。

今日ご紹介する「ストレート・アヘッド」は1968年9月にドット・レコードに吹き込まれた作品で、本作でアレンジを手掛けるのは後に数々のベイシー作品を手掛けることになるサミー・ネスティコです。実はこのネスティコと言う人はいわゆる叩き上げのジャズマンではなく、20代の頃にアメリカ空軍に入隊し、その後はずっと軍関係のバンドで働いていたという一風変わった経歴の持ち主です。いわゆる商業的なジャズ作品のアレンジは本作が初めてで、いきなりビッグバンドの最高峰ベイシー楽団の作編曲を担当することになったのだから異例の大抜擢と言えます。

メンバーは総勢17名。全員列挙はしませんが、トランペットにアル・アーロンズ、ソニー・コーンら4名、トロンボーンにグローヴァ―・ミッチェル、ビル・ヒューズら4名、テナーにエディ・ロックジョー・デイヴィス&エリック・ディクソン、アルトにマーシャル・ロイヤル&ボビー・プレイター、バリトンにチャーリー・フォークス、リズムセクションが御大ベイシー(ピアノ)にフレディ・グリーン(リズムギター)、ノーマン・キーナン(ベース)、ハロルド・ジョーンズ(ドラム)です。

全9曲、全てネスティコが本作のために書き下ろしたオリジナル曲です。新任アレンジャーとして腕が鳴るところですが、これまでのバンドの方向性をガラリと変えるような内容ではなく、30年以上にわたって築き上げてきたベイシー・サウンドの伝統を踏襲しつつ、それでいてバンドの音に新たな風を吹き込んでいます。オープニングはタイトルトラックの"Basie Straight Ahead"。ベイシーのピアノのイントロとフレディ・グリーンのズンズン刻むリズムギターをバックに華やかなホーンアンサンブルが繰り広げられる典型的なベイシーサウンドです。テナーソロを披露するのはエリック・ディクソンです。2曲目”It's Oh So Nice"と続く”Lonely Street"はムードたっぷりのスローナンバー。特に後者のマーシャル・ロイヤルのアルトソロが美しいです。4曲目"Fun Time"もベイシー楽団の王道とも癒えるミディアムスイング調の曲で、エリック・ディクソンがここではフルートでソロを取ります。5曲目”Magic Flea"は疾走感溢れるアップテンポの曲で、爆発するホーンセクションをバックにエディ・ロックジョー・デイヴィスがファンキーなテナーソロを聴かせます。ハロルド・ジョーンズのドラミングも圧巻です。

後半最初の”Switch In Time"はポップス曲のようなキャッチーなメロディの曲でアル・アーロンズのカップミュートとディクソンのテナーソロが挟まれます。続く”Hay Burner"はミディアムスインガーで、特定のソリストはなく全体のアンサンブルでじっくり聴かせる曲。8曲目”That Warm Feeling"は「アトミック・ベイシー」の"Li'l Darlin'"を思わせるバラードで、ベイシーがオルガンを弾いています。ピアノの音も聞こえますがこれはネスティコが弾いているとのこと。ラストの”The Queen Bee"もミディアム調のハートウォーミングな曲。エリック・ディクソンのまろやかなテナーソロが華を添えます。この作品が大変評判が良かったため、ネスティコとベイシーはこの後も蜜月関係を続け、70年代には後期ベイシーの大名盤「ベイシー・ビッグ・バンド」を発表します。その他にも2人が共演した作品は何枚かあるようですが、70年代以降の作品と言うことでこれまで聴く機会がなかったのでまた発掘してみようと思います!

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オリヴァー・ネルソン/ フル・ネルソン

2025-02-18 19:07:11 | ジャズ(ビッグバンド)

バディ・リッチレイ・ブラウンに続き今日もビッグバンドと言うことで、オリヴァー・ネルソンを取り上げたいと思います。オリヴァー・ネルソンと言えばサックス奏者としても有名でプレスティッジに数々のリーダー作を残しています。本ブログでも過去に「ミート・オリヴァー・ネルソン」「テイキング・ケア・オヴ・ビジネス」と言った作品をご紹介しました。ただ、彼の真骨頂は何と言ってもアレンジャーとしての卓越した手腕ですよね。スタンリー・タレンタイン「ジョイライド」、リー・モーガン「デライトフリー」、ジミー・スミス&ウェス・モンゴメリー「ザ・ダイナミック・デュオ」等でシャープでモダンなビッグバンドサウンドを聴かせてくれます。

上記の作品は他人名義ですが、自身名義でのビッグバンド作品もいくつかあり、今日ご紹介する「フル・ネルソン」はその代表作です。1962年11月から1963年2月にかけてヴァーヴ・レコードに吹き込まれたもので、3回のセッションで全て合わせて30名を超すジャズマンが参加しています。さすがに全員列挙はしませんが、主要メンバーだとトランペットにクラーク・テリー、ジョー・ニューマン、サックスにアル・コーン、ジェローム・リチャードソン、フィル・ウッズ、トロンボーンにジミー・クリーヴランドらが名を連ねています。ベースは曲によってジョージ・デュヴィヴィエまたはミルト・ヒントン、ドラムはエド・ショーネシーまたはオシー・ジョンソンです。ちなみにタイトルの「フル・ネルソン」とはプロレスの技の一種らしいです(同じくハーフ・ネルソンと言う技もあり、こちらはマイルス・デイヴィスの曲名になっています)。

全12曲。ネルソンの自作曲が7曲、それ以外が5曲です。アルバムはまずタイトルトラックの"Full Nelson"で始まります。ネルソン自作のブルースで分厚いホーンアンサンブルをバックにネルソン本人がアルトソロを披露します。2曲目”Skokiaan"は陽気な歓声で始まるパーティ風のナンバー。なんでも元々はアフリカのジンバブウェの曲らしいです。この曲もネルソンのアルトソロをフィーチャーしています。3曲目”Miss Fine"はネルソンが妹に捧げたと言う魅力的なミディアム・チューン。後にインパルス盤「ライヴ・フロム・ロサンゼルス」でも再演されているのでお気に入りの曲だったのでしょう。ここではベイシー楽団のジョー・ニューマンが素晴らしいトランペットソロを聴かせてくれます。バックで盛り上げるオシー・ジョンソンのドラムも良い働きですね。5曲目”Majorca"は地中海の島の名前で、ボレロのリズムを使ったスペイン風の曲です。オーボエやフルートを効果的に使ったアレンジで、ジャズというよりクラシック風ですね。続く”Cool"はレナード・バーンスタインの大ヒットミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」から。こちらもアレンジ自体はジャスっぽくないですが、中盤でネルソンのアルトソロが大きくフィーチャーされます。6曲目”Back Woods"はフィル・ウッズのアルトにスポットライトを当てた曲で、ゴージャスなホーン陣をバックにウッズが吹きまくります。

以上がレコードで言うA面ですが、個人的にはB面の方がおススメです。まずは"Lila's Theme"。映画音楽作曲家のジェリー・ゴールドスミスが「七月の女(The Stripper)」とか言う良く知らない映画のために書いた曲らしいですが、これがなかなかの名曲で、ドラマチックなアレンジに乗ってネルソンとジョー・ニューマンがソロを取ります。8曲目”Ballad For Benny"はベニー・グッドマンに捧げたオリジナル曲で、ここでグッドマン風のクラリネットソロを披露するのはなんとフィル・ウッズです。クラリネットも吹けるんですね。9曲目"Hoe Down"はインパルス盤「ブルースの真実」でも演奏されていた曲。賑やかな曲でクラーク・テリーのトランペットとジミー・レイニーのギターソロが挟まれます。10曲目"Paris Blues"はエリントン・ナンバーですが、スイング時代の曲ではなく、前年に公開された「パリの旅愁」と言う映画のためにエリントンが書き下ろした新曲です。これがまた素晴らしい曲で、ネルソンのドラマチックなアレンジも相まって名演に仕上がっています。フリューゲルホルンで伸びやかなソロを聴かせるのはクラーク・テリーです。ラスト2曲はバラードで、前者は同年にサミー・デイヴィス・ジュニアがヒットさせた”What Kind Of Fool Am I?"、後者はネルソン次作の”You Love But Once"です。どちらもネルソンが美しいアルトソロを聴かせます。以上、あまり知られていない作品ですが、ネルソンの洗練されたビッグバンドサウンドが堪能できる名作です。とりわけ後半が素晴らしく、中でも”Lila's Theme"と”Paris Blues"は必聴の名演です。

 

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レイ・ブラウン・ウィズ・ジ・オールスター・ビッグ・バンド

2025-02-17 19:38:23 | ジャズ(ビッグバンド)

本日も前回のバディ・リッチに引き続きビッグバンドです。今日取り上げるのはベースのレイ・ブラウンによる珍しいビッグバンド作品「レイ・ブラウン・ウィズ・ジ・オールスター・ビッグ・バンド」です。レイ・ブラウンと言えばご存じのとおりモダンジャズを代表するベーシスト。オスカー・ピーターソン・トリオの不動のベーシストであり、それ以外もディジー・ガレスピー、ミルト・ジャクソン、ベン・ウェブスター、バーニー・ケッセル等様々な大物と共演しています。意外なところではエラ・フィッツジェラルドの元旦那でもあります(5年ほどで離婚)。

自身のリーダー作についてはどちらかと言うと70年代以降にたくさん発表していますが、50~60年代もヴァーヴ・レコードに何枚か残しており、本作はそのうちの1枚です。録音年月日は1962年1月22~23日。おそらくこの録音のためだけに集められた即席のビッグバンドで、アーニー・ウィルキンスとアル・コーンがアレンジャーを務めています。合計19名、なかなか凄いメンバーが集まっています。トランペットにクラーク・テリー、ナット・アダレイら4名、トロンボーンにジミー・クリーヴランド、メルバ・リストンら4名、サックスにキャノンボール・アダレイ、ユセフ・ラティーフら6名、ピアノが曲によってハンク・ジョーンズまたはトミー・フラナガン、ドラムにオシー・ジョンソン、ベースはもちろんレイですが9曲中3曲はレイがチェロでソロを取るため、代わりにサム・ジョーンズがベースに入ります。

とは言え、ほとんどのメンバーはアンサンブル要員でソロを取るのはリーダーのレイ、そしてジャケットにわざわざfeaturing Cannonball Adderleyと書いてあるようにキャノンボール・アダレイが多くの曲で主役並みにフィーチャーされます。これは私の推測ですが、ヴァーヴ・レコードが当時リヴァーサイドと専属契約中だった人気者キャノンボールをレコーディングするためにレイ・ブラウンのリーダー作を利用したのではないかと思います。それ以外も何曲かでトランペットやテナーサックスのソロもありますが、曲ごとのソロ奏者の記載がないので誰かはわかりません。ただ、英文ライナーノーツにはNat Adderley and Yusef Lateef played wonderfullyと書かれていますので、テナーはユセフ、トランペット(コルネット)はナットでしょうか?

アルバムはまずナット・アダレイ作でアダレイ兄弟の持ち曲である”Work Song"で幕を開けます。お馴染みのファンキーなメロディをレイのベースとホーン陣でコール & レスポンス形式でやり取りした後、キャノンボール→ナット→レイとファンキーなソロをリレーします。2曲目は”It Happened In Monterey"と言う30年代のミュージカル曲。軽快なビッグバンドサウンドに乗ってキャノンボールが歌心溢れるアルトを披露します。3曲目も定番スタンダード”My One And Only Love"で、ここではレイがチェロでバラードを歌い上げます。4曲目”Tricrotism"はジャズベースの巨匠オスカー・ペティフォードの代表曲。レイが迫力あるベースソロを聴かせますが、キャノンボールの躍動感に満ちたソロも素晴らしいです。

B面に移って5曲目"Thumbstring"と”Cannon Built"はどちらもレイのオリジナル。前者はファンキーなブルースでトランペットとテナーソロ(ユセフ?)をフィーチャーした演奏、後者はタイトル通りキャノンボールにスポットライトを当てた曲です。7曲目”Two For The Blues"はニール・ヘフティがカウント・ベイシー楽団のために書いた曲。ここではテナーサックスがソロを取りますがユセフ・ラティーフでしょうか?(バド・ジョンソンのような気も)。ハイノートトランペットはナットではなくクラーク・テリーか?8曲目は定番スタンダードの”Day In Day Out"、9曲面はボロディンの弦楽四重奏曲第2番が元ネタの”Baubles, Bangles And Beads"で、軽快なビッグバンドをバックにレイとキャノンボールがソロを取ります。以上、レイ・ブラウンのリーダー作ではありますが、キャノンボール・アダレイが好きな人にとっても聞き逃せない1枚だと思います。

 

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