ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ワーグナー/序曲・前奏曲集

2013-09-29 08:23:18 | クラシック(管弦楽作品)
これまでワーグナーとは無縁で過ごしてきた私ですが、現金なもので先日聴いた「ニーベルングの指輪」ハイライトですっかり彼の音楽に魅了されてしまいました。ただ、かと言って彼の数あるオペラ作品を聴く暇もない。と言う訳で先日の「ニーベルング」と同じダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団による序曲・前奏曲集を購入しました。彼の代表的なオペラ5作品から管弦楽作品ばかりが集められています。



まず1曲目はワーグナーが29歳の時に作曲した彼の出世作「さまよえるオランダ人」の序曲。初期の作品ながら後の「ワルキューレの騎行」を思わせる重厚なオーケストラサウンドが堪能できます。続く「タンホイザー」序曲は独立した管弦楽作品として使用されることも多い名曲で、静かにドラマチックに盛り上がっていく展開が見事です。続いて「ローエングリン」から2つの前奏曲。第1幕前奏曲は「タンホイザー」以上に静かな曲ですが、後半に一瞬盛り上がりそのまま消え入るように終わりを迎えます。第3幕前奏曲は2分余りの小品ですが、短いながらもド派手なオーケストレーションで盛り上がります。5曲目「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲は同時代のブラームスの交響曲を思わせるような壮麗な旋律です。ラストを飾る「トリスタンとイゾルデ」前奏曲は17分を超える大作。解説によるとここで使われている半音階的な和声は“トリスタン和声”と呼ばれ、現代音楽の基礎となったらしいですが、そんな難しいことを考えずに普通に聴いても美しい音楽です。特に終盤に現れる「愛の死」の官能的な旋律には思わずうっとりしてしまいます。バレンボイムにはもう1枚ワーグナー集があるので、近いうちにそれも聴いてみたいと思います。
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シベリウス/フィンランディア

2013-09-28 11:49:08 | クラシック(管弦楽作品)
シベリウスは贔屓の作曲家で、当ブログでも過去に交響曲第1番第4番第5番&第7番レンミンカイネン組曲を取り上げてきました。でも、何と言っても彼の作品の中で最も有名なのが交響詩「フィンランディア」であります。作曲されたのは1900年。当時のフィンランドはまだ帝政ロシアの支配下にあり、愛国心を鼓舞するこの歌は当局によって禁止処分にあったとか。その後、フィンランドは独立し今では第二の国歌の扱いを受けているらしいです。もちろんこの曲が世界中で親しまれているのは純粋に楽曲として素晴らしい内容だからです。冒頭ホルンによる重々しい序奏から始まりますが、3分過ぎから力強く輝かしい旋律が現れ、穏やかな中間部を経て感動的なクライマックスへと向かいます。フィンランドとは縁もゆかりもない私でも思わず心を揺り動かされる名曲中の名曲ですね。



そんな「フィンランディア」には数多の録音がありますが、私が選んだのはパーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団のCDです。指揮者もフィンランド人、オケもフィンランドということで思い入れの強さがこちらにも伝わってくるようです。カップリングは交響曲第2番と交響詩「大洋の女神」。と言うか、むしろ交響曲第2番がメインですよね。こちらもシベリウスの交響曲の中でも最もポピュラーな作品だけあって、内容の素晴らしさは言うまでもないです。北欧の大自然を感じさせる壮麗なオーケストレーションと次々と現れる美しい旋律に圧倒されます。私はレナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル盤を昔から愛聴しておりますが、それに比べるとかなりテンポが速い。調べてみるとバーンスタイン盤が51分、本盤が39分と12分も違うんですね。クラシックの演奏時間は指揮者によってまちまちとは言いますが、ここまで違うのも珍しいです。「大洋の女神」は別名「波の娘」とも言い、シベリウスの交響詩の中では地味な作品です。8分半の作品ですが、「フィンランディア」と違って派手な盛り上がりもない終始穏やかな曲調で、木管楽器が奏でる主題が印象的な小品です。
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ヴェルディ/序曲・前奏曲集

2013-09-19 23:49:21 | クラシック(管弦楽作品)
オペラと言えば何と言ってもイタリア。中でも代表的な作曲家と言えばヴェルディとプッチーニですよね。前者は「椿姫」「アイーダ」「リゴレット」、後者は「ラ・ボエーム」「蝶々夫人」「トゥーランドット」と数々の名作を残しています。今日ご紹介するのは前者のヴェルディですが、オペラそのものではなくその序曲や前奏曲にスポットライトを当てたいと思います。同じオペラの大家でもプッチーニが管弦楽パートを重視せず、ひたすらアリアの美しさを追い求めたのに対し、ヴェルディは序曲や前奏曲にもかなり力を注いでおり、実に魅力的な作品が多いのが特徴です。



ヴェルディの序曲・前奏曲集はいくつかCDが出ていますが、私が買ったのはリッカルド・ムーティ指揮スカラ座管弦楽団のものです。うちヴェルディの代表作である有名オペラから「椿姫」の2つの前奏曲、「アイーダ」前奏曲、「仮面舞踏会」前奏曲などが選ばれていますが、「ジャンヌダルク」「レニャーノの戦い」「群盗」「ルイザ・ミラー」などオペラ自体は滅多に目にする機会がない作品からの選曲も多いです。ただ、中でもクオリティが高いのはヴェルディ自身が“シンフォニア”と呼んでいる「運命の力」序曲と「シチリア島の夕べの祈り」序曲、そして「ナブッコ」序曲の計3曲ですね。悲劇調の中にも力強さを感じさせる「運命の力」、カンツォーネ風の中間部と後半の勇ましいマーチが対照的な「ナブッコ」、緩急が目まぐるしく変化する中でも魅力的なメロディが次々と現れる「シチリア島の夕べの祈り」。どれも単なるオペラの前フリにとどまらず、短いながらも充実した管弦楽作品です。
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フランス管弦楽作品集(アンセルメ)

2013-09-16 22:43:40 | クラシック(管弦楽作品)
先日ご紹介したジャン・フルネ指揮によるフランス序曲集に続き、エルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団によるフランス音楽の名曲オムニバスを取り上げます。フルネ盤は知る人ぞ知る玄人好みの名曲ばかりを集めていましたが、アンセルメ盤はもう少し一般向けの選曲です。全8曲収録されていますが、そのうちポール・デュカスの「魔法使いの弟子」、エマニュエル・シャブリエの「スペイン」は過去に本ブログでもピックアップしたので割愛します。



まずはフランスを代表するオペラ作曲家ジャック・オッフェンバックによる2つの序曲から。1曲目の「天国と地獄」は♪カステラ1番、電話は2番~の替え歌でお茶の間でもすっかりお馴染みの曲です。運動会の定番でもありますね。ただ、例のメロディが出現するのはラスト2分を切ってからで、そこまではむしろ穏やかな曲調。特に中間部分の流麗なワルツや続くヴァイオリン独奏の美しさは特筆すべきものがあります。続く「美しきエレーヌ」序曲も似たような曲調で、マーチ風の出だしから優雅なワルツ風の中間部分に移り、エンディングは再び勇壮なマーチに戻ります。オッフェンバックの次は、セザール・フランクの交響詩「呪われた狩人」。タイトル通り神に呪われた男をテーマにした暗い曲で、不吉なホルンの響きとそれに続く重厚なオーケストラサウンドが全体を支配するドラマチックな作品。陽気な曲が多い本CDの中でうまいアクセントになっていますね。

続くはフェルディナン・エロルドとアンブロワーズ・トマという2人のマイナー作曲家によるオペラ序曲。エロルドが「ザンパ」、トマが「ミニョン」で、正直オペラ自体は全く有名ではありませんが、序曲は単独でコンサートで取り上げられることも多いそうです。個人的には「ザンパ」序曲が大のお気に入りですね。8分弱の小品ですが実に緩急に富んだ曲で、次々と魅力的なメロディが飛び出してきます。急速調の冒頭部分→牧歌的な第2主題→勇壮なマーチ風の中間部→クラリネットの奏でる穏やかな主題→そして再びド派手なフィナーレへ。目まぐるしい展開ですが、それだけに繰り返し聴いても飽きません。それに比べると「ミニョン」序曲はシンプルな構成。静かな冒頭から徐々に盛り上がっていくスタイルで、特にホルンの奏でる美しい主題と中間部の流麗なポロネーズが素晴らしいです。最後のアルチュール・オネゲルの「パシフィック231」だけは現代的な響きの作品で他の曲と比べやや浮いてますが、その他はフランスのロマン派音楽の粋を集めた見事な選曲と言えるでしょう。
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ドヴォルザーク/スラヴ舞曲

2013-09-12 11:31:02 | クラシック(管弦楽作品)
先日ブラームスの「ハンガリー舞曲」をご紹介しましたが、今日はドヴォルザークの「スラヴ舞曲」をご紹介しましょう。この2曲、タイトルも似ていますが実はいろいろと関連があります。まず、チェコの無名作曲家だったドヴォルザークの才能を高く評価し、楽壇に紹介したのがブラームスだったということ。そのブラームスにあやかり、本作も最初から彼の「ハンガリー舞曲」を念頭において作曲されたということです。結果的に本作は大変な評判を呼び、後のドヴォルザークの名声の礎を築くことになります。

もちろん本作はただの二番煎じでありません。まず、「ハンガリー舞曲」が純粋なブラームスの作曲ではなく、ジプシー民謡の編曲が多く含まれているのに、本作はチェコの民族音楽の要素をふんだんに使いながらもあくまでドヴォルザーク自身の作曲であること。また、最初はピアノ曲用に作られたのは両者とも同じですが、本作はドヴォルザーク本人がオーケストラバージョンも手掛けています(「ハンガリー舞曲」の管弦楽版のほとんどは後にいろいろな作曲家が編曲したものだとか)。



作品は第1集8曲と第2集8曲の計16曲からなっています。第1集はチェコの民族舞曲のみで構成されていますが、第2集にはスロバキア、ポーランド、クロアチアなど他のスラヴ民族の舞曲も入っています。どの曲も村の祭りで歌われるような素朴なメロディが持ち味ですが、それをドヴォルザークならではの色彩豊かなオーケストレーションで味付けしています。似たような曲が多いと言えば多いですが、その中でも急速調のフリアントをベースにした第1番&第8番、牧歌的なポルカの第3番、浮き浮きするような第9番オドゼメック、哀愁を帯びた第10番マズルカ&第12番ドゥムカ、最後を飾る美しい第16番ソウセツカー等がお薦めです。CDはヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィルのものを買いました。他にもセル、マゼール、アーノンクールらの演奏もありますが、やはり地元チェコ産が雰囲気が出ていいでしょう。

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