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全8曲ですが、私がお薦めするのはそのうち5曲。まずは2曲目、ベネズエラの作曲家イノセンテ・カレーニョが1954年に作曲した「マルガリテーニャ」。どことなくリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」を彷彿とさせる雄大な曲です。ただし、脳裏に思い浮かぶのはマッターホルンやモンブランではなく、ギアナ高地のテーブルマウンテンです。続いて4曲目はメキシコの作曲家アルトゥロ・マルケスの「ダンソン・ヌメロ・ドス」。直訳すれば「舞曲第2番」ですが、それでは雰囲気が出ないのかスペイン語の題名で呼ばれています。こちらはなんと1994年の作曲で超現代の作品ですが、急速に有名になり今では世界中のオーケストラのレパートリーに加えられています。理由は耳について離れない独特のメロディ。まるでラテン歌謡のようなベタな旋律なんですが聴いているうちにクセになります。フィナーレに向けて徐々に盛り上がって行くところが圧巻ですね。クラシックでこんなに興奮する曲も他にないんじゃないでしょうか?5曲目の「フーガ・コン・パハリージョ」も同系統の曲。こちらはベネズエラの作曲家アルデマロ・ロメーロが1990年に発表した曲。「ダンソン・ヌメロ・ドス」ほどの中毒性はありませんが、静かに燃え上がる曲です。
6曲目から9曲目はアルゼンチンの作曲家ヒナステラによる組曲「エスタンシア」。おそらく本CDの中で一番有名な曲でしょう。「エスタンシア」は大農園のことで、そこで暮らす人々の様子が描かれていきます。4曲合わせて12分ほどですが、どれも魅力的な旋律に彩られています。ハイライトはフィナーレを飾るエネルギッシュな舞曲「マランボ」でしょうが、個人的には2曲目の「小麦の踊り」もお薦めです。農園の朝の情景を描いた静かな曲で美しい旋律が胸に染みます。アップテンポの曲が多い本CDの中では清涼剤のような作品です。10曲目はベネズエラの作曲家エベンシオ・カステジャノスの1954年の作品「パカイリグアの聖なる十字架」。こちらは16分あまりの大作ですが、その中で次々とメロディが変化していく大変楽しい曲です。序盤はいかにも南米らしい陽気なリズムで始まり、中盤では抒情的で美しい旋律も現れたかと思うと、終盤にかけてはラテンらしい情熱的な旋律で華々しいフィナーレを迎えます。以上最初は知らない作曲家の知らない曲ばかりで、正直あまり期待していなかったのですが、聴きこんでみると本当に素晴らしい曲ばかりで私の中でクラシック音楽の裾野を広げてくれた1枚です。超お薦めです!