ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ソニー・スティット/ニューヨーク・ジャズ

2016-09-22 23:20:40 | ジャズ(ハードバップ)
本日も「Verve 60th レア盤コレクション」からソニー・スティットの作品を取り上げます。スティットについては本ブログでもたびたび取り上げていますが、40年代からビバップの中心人物の一人として活躍。その後、時代が移り代わりジャズのスタイルも変遷を遂げる中で生涯バップ一筋を貫き通した孤高のサックス奏者です。また、多作としても知られ、生涯のリーダー作は100を超えると言われています。裏を返せばワンパターンとも言えるわけで、同じような内容の作品が大量に存在するという側面もあります。特に50年代後半のヴァーヴやルーストに吹き込んだ作品群はほとんどがワンホーンカルテットで、曲目は3分の2がスタンダード、残りが自作のバップ曲やブルースという構成、とまあこんな感じです。後は何で違いを生み出すかと言うと、リズムセクション特にピアニストを誰と組むかですよね。実際、この頃のスティットは特に固定のメンバーで演奏しておらず、作品によってハンク・ジョーンズ、ジミー・ジョーンズ、ラムゼイ・ルイス、エイモス・トライス、ルー・レヴィ、ドロ・コーカー、ボビー・ティモンズ等さまざまなピアニストと共演しています。



本作「ニューヨーク・ジャズ」は1956年9月にタイトル通りニューヨークで吹き込まれたもので、リズムセクションはピアノがジミー・ジョーンズ、ベースがレイ・ブラウン、ドラムがジョー・ジョーンズ(フィリーではなくパパ・ジョーの方)から成ります。ジミー・ジョーンズはサラ・ヴォーンをはじめ歌伴で名を上げたピアニストですので、本作でもソロを取る場面はほとんどなく、もっぱらスティットのソロの伴奏に徹しています。全10曲、うちスタンダード曲が7曲で、残りがスティットの自作曲です。スタンダードは“If I Had You”“Stars Fell On Alabama”“Body And Soul”等のバラードでスティットならではの音数の異常に多いアドリブが炸裂しますが、個人的にはさすがにくどいと感じます。むしろ“I Know That You Know”や“Twelfth Street Rag”等アップテンポの曲でのグイグイ加速度を増すようなソロが圧巻です。オリジナルは3曲で、1曲目の急速調ブルース“Norman's Blues”、脳天を突き刺すようなアルトが印象的なコテコテのブルース“Down Home Blues”、何の工夫もないタイトルのバップ曲“Sonny's Tune”といずれもどっかからパクってきたような典型的なフレーズばかりですが、スティットのアドリブはここでも絶好調です。以上、内容的には他のスティットのアルバムと同じやん!と言われればそれまでですが、逆に言うとスティット好きの人には外せない1枚と言えます。
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オスカー・ピーターソン/フランク・シナトラの肖像

2016-09-14 22:46:03 | ジャズ(ピアノ)
久々の更新は「Verve 60th レア盤コレクション」からオスカー・ピーターソン・トリオの作品をご紹介します。50年代前半から60年代半ばまでヴァーヴの看板グループとして活躍したオスカー・ピーターソン・トリオですが、前期と後期ではメンバーが違います。1958年までが前期で、メンバーはオスカー、レイ・ブラウン(ベース)、ハーブ・エリス(ギター)と珍しいドラムレス構成でした。もちろん当時のトリオも人気は高く、有名な「エラ&ルイ」のリズム・セクションを務めたり、スタン・ゲッツやベン・ウェブスターと共演したりと引っ張りだこの存在でした。ただ、ジャズファンにより馴染みが深いのは後期のトリオでしょうね。エリスがグループを去った後、1959年にドラマーとしてエド・シグペンが加入。ここからはピアノ、ベース、ドラムのオーソドックスなピアノ・トリオとなり、数多くのヒット作を生み出します。本作「フランク・シナトラの肖像」は1959年5月18日に録音されたもので、後期トリオの記念すべき初レコーディングだそうです。(なお、同日にトリオはソニー・スティットとも共演し、名盤「シッツ・イン」を吹き込みます)



さて、本作はタイトルにある通り全てがフランク・シナトラのヒット曲です。シナトラに関しては言うまでもないですよね。ジャズ歌手にとどまらず、「地上より永遠に」「オーシャンズ・イレブン」等ハリウッド映画でも活躍した20世紀最高のエンターテイナーの一人です。日本でも“My Way”を歌ってるおじさんと言えばジャズに何の興味のない人でもわかるのではないでしょうか?特に50年代から60年代初頭にかけてが人気の絶頂で、ショービズ界の頂点に君臨していました。曲は全12曲。そのうち“All Of Me”“I Get A Kick Out Of You”“How About You”等はシナトラに限らずスタンダードの定番で、多くのジャズメンにカバーされていますが、“Come Dance With Me”“Learnin' The Blues”“Saturday Night”等はまさにシナトラがヒットさせた曲で、他のジャズメンによるカバーもあまりないので新鮮ですね。“Witchcraft”はビル・エヴァンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」のバージョンが有名ですが、これも実はシナトラのヒット曲だったんですね。他ではチェット・ベイカーも歌った“You Make Me Feel So Young”もとても良いです。一番長い曲でも3分半強、残りはすべて3分前後と軽めの構成ですが、オスカー・ピーターソン・トリオのツボを押さえた演奏で最初から最後まで飽きることなく楽しめます。シナトラのヴォーカル・バージョンも今では簡単にYoutubeで再生できますので、聴き比べてみると楽しいですよ。
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