ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ブラームス/ドイツ・レクイエム

2014-11-13 22:55:12 | クラシック(声楽)

これまで声楽曲、特に宗教音楽は敬遠していましたが、先日のプーランク「グロリア」「スターバト・マーテル」が良かったので、本日はブラームスの「ドイツ・レクイエム」を取り上げたいと思います。レクイエムは日本語で“鎮魂歌”とも訳され、カトリック教会で死者の安息を祈るミサのための曲です。一応、世間ではモーツァルト、フォーレ、ヴェルディの作品が3大レクイエムと呼ばれていますね。一方の本作は「ドイツ・レクイエム」というタイトルが示すように、ラテン語ではなくドイツ語で歌われていますし、歌詞も通常のレクイエムとは異なるようです。これはブラームス自身が宗教的にもプロテスタントだったことも影響しているようです。



もっとも我々異教徒の日本人には歌詞の内容とかはどうでもいいですよね。純粋に音楽の良さだけ評価するとしたらこれはもう素晴らしいの一言です。親しみやすい旋律、壮麗なオーケストレーション、そして美しい合唱と三拍子揃った声楽曲の傑作です。ブラームスの作品全体の中でも交響曲第1番に次ぐぐらいの完成度かもしれません。あえて難点を挙げるとすれば全7曲75分というボリュームですが、随所に盛り上がるパートがあるため、決してダレることはありません。特に素晴らしいのは第2曲、第3曲、第6曲でどの曲も前半はやや重苦しい旋律ながら、後半に一気に爆発的な盛り上がりを見せるというパターン。合唱とオーケストラが一体となった壮麗な音世界はかのベートーヴェンの第9を彷彿とさせます。静謐な美しさが漂う第1曲も素晴らしいです。CDはダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団のものを買いました。数ある同曲の録音の中でも名盤の誉れが高い1枚ですし、何より廉価版で1000円という価格が決め手ですね。

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グリーグ/管弦楽曲集

2014-11-07 23:30:03 | クラシック(管弦楽作品)
本日はノルウェーの国民的作曲家グリーグの管弦楽作品集をご紹介します。グリーグと言えば何と言ってもピアノ協奏曲が有名で、その次に組曲「ペール・ギュント」、そして以前にも取り上げた弦楽合奏曲「ホルベアの時代より」がよく知られているところです。しかし、今日取り上げるオットマー・スウィートナー指揮シュターツカペッレ・ベルリン盤はその他のマイナー作品も網羅されたグリーグ好きにはたまらない1枚となっています。



まずは「十字軍の兵士シグール」。題名通り十字軍に参加した中世のノルウェー王シグール1世を題材とした管弦楽組曲です。計3曲ありますが、最初の2曲は正直言ってあまり印象に残りません。魅力的なのは3曲目の「忠誠行進曲」で、文字通り勇敢なマーチ風の楽曲ですが、中間部にグリーグらしい優美な旋律も出てきます。続いては「抒情組曲」から2曲「夜想曲」と「トロルの行進」。もともとピアノ小品だったものにオーケストラをつけたもので、前者は幻想的な美しい旋律に、後者はエネルギッシュなリズムと親しみやすい旋律に彩られた名曲です。この3曲が続く流れは見事ですね。それに比べると次の「ノルウェー舞曲」4曲は一段劣るかな。文字通りノルウェーの民族舞踊をアレンジしただけあって、素朴な旋律と野趣あふれるリズムが印象的ですが、洗練さにやや欠けます。最後の「ホルベアの時代より」5曲は過去ブログでも紹介しましたので詳細は割愛しますが、演奏に関しては本盤の方が上ですね。やはり弦楽合奏団と本物のオーケストラではアンサンブルも迫力が違うのでしょうか。特に「前奏曲」が素晴らしいです。
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ハイドン/チェロ協奏曲第1番&第2番

2014-11-01 10:26:59 | クラシック(協奏曲)

今日はひさびさにチェロ協奏曲を取り上げます。前回のクラリネットほどではないにせよ、チェロ協奏曲も作品数に恵まれているとは言い難いですね。多作で知られるモーツァルトはなぜかチェロを主楽器にした曲を1つも残していませんし、ベートーヴェンもチェロ・ソナタは書いたもののコンチェルトには手をつけず(チェロ入りの「三重協奏曲」はありますが)。一応、ドヴォルザーク、シューマンと今日ご紹介するハイドンが“3大チェロ協奏曲”と呼ばれてはいるものの、実際はドヴォルザークの一人勝ち状態なのが現実です。とは言え、ハイドンのチェロ協奏曲もなかなか魅力的でしたよ。



さて、このハイドンのチェロ協奏曲ですが現存しているのは2曲あり、そのうち“3大協奏曲”の一つに数えられているのは第2番の方です。第1番の方はと言うと、何と1960年代まで存在が知られておらず、プラハの博物館の倉庫に楽譜が埋もれていたというから驚きです。当然、そんな古い楽譜が突然見つかったところで「本当にハイドンなの?ニセモノじゃないの?」という疑惑が出てきて当然だと思うのですが、研究の結果正真正銘のハイドン作と認定されて今に至っているようです。どういう鑑定の仕方をしたのかはわかりませんが、素人でもわかるのは曲の内容が素晴らしいということですね。バロックの名残も感じさせる雅やかな第1楽章、優美なアダージョの第2楽章、チェロの技巧も相当に要求される華やかな第3楽章。もし、これをハイドンが書いたのでないのなら、同時代にもう一人別の天才が存在していたことになってしまいます。

一方の第2番ですが、こちらは古くから親しまれているだけあって、とても充実した内容です。第1楽章は15分もある雄大な楽章で、全体的にゆったりした旋律ながら後半にチェロの超絶技巧が求められるソロパートがあります。第2楽章は穏やかなアダージョ、第3楽章は心が浮き立つような華やかなロンドで締めくくります。CDはハンナ・チャンのチェロ、ジュゼッペ・シノーポリ指揮シュターツカペッレ・ドレスデンのものです。録音(1997年)当時、天才チェリストと話題だったチャンが15歳とは思えない成熟したチェロを聴かせてくれます。

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