ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

パデレフスキ/ピアノ協奏曲

2019-03-24 21:15:35 | クラシック(協奏曲)
バラキレフ、ステンハンマルに引き続きナクソスのマイナー作曲家シリーズ第3弾です。本日ご紹介するのはポーランドのイグナツィ・ヤン・パデレフスキです。日本ではあまり知られていませんが、本国ポーランドでは国民誰もが知る有名人です。と言うのもパデレフスキは作曲家であると同時に国際的に活躍したピアニストであり、何より第一次大戦後に独立したポーランド共和国の初代首相だからです。音楽と政治の道はかけ離れているように思えますが、長らく外国の支配に苦しんだポーランド人にとって祖国の独立は民族全体の悲願であり、パデレフスキも演奏活動のかたわら独立運動に奔走していたようです。ただ、パデレフスキの役割はあくまで独立の‟顔”としてだったようで、首相の座からは1年足らずで降り、その後は再び音楽活動に復帰します。



今回ブログで取り上げるのは彼の代表作であるピアノ協奏曲です。他にも交響曲とオペラを1曲ずつ残しているようですがそれらの演奏機会はほとんどありません。いかにもピアニストが書いたコンチェルトらしくピアノが活躍する場面がふんだんに盛り込まれています。特に第1楽章は16分を超えるボリュームでそれだけで1つの楽曲と呼べるほどの威容を備えています。曲はややベタな旋律の第1主題で幕を明け、続けてロマンチックな第2主題が現れます。後はそれを交互に繰り返すだけですが、華やかなピアノ独奏と終盤に向けてのオーケストラの盛り上がりで聴き応えのある内容に仕上がっています。続く第2楽章は静謐なアンダンテ。CD解説にはラフマニノフの有名なピアノ協奏曲第2番第2楽章に匹敵すると書かれていますがさすがにそれは大袈裟すぎますね。ただ、美しいメロディであることは間違いないです。第三楽章は躍動感あふれるアレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ。ピアノとオーケストラが一体となってフィナーレに向けて突き進んでいきます。

CDには他に「ポーランド幻想曲」と「序曲」が収録されています。うち序曲は特筆すべき内容ではないので割愛しますが、「幻想曲」の方はピアノを大きくフィーチャーした管弦楽曲で、ボリュームも20分強あり、ミニピアノ協奏曲のような趣です。前半はやや重々しいですが、後半は一転して快活なメロディが主体でなかなか魅力的な一品です。演奏はナクソスではお馴染みのアントニ・ヴィト指揮ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、ピアノはヤニーナ・フィアルコヴスカです。作品、オケ、指揮者、ソリストと全てポーランドで固めて、ポーランド愛に満ちあふれた1枚となっています。
コメント

ステンハンマル/ピアノ協奏曲第1番&第2番

2019-03-14 12:25:07 | クラシック(協奏曲)
前回のバラキレフに引き続き今回もナクソスから。本日ご紹介するのはスウェーデンの作曲家ヴィルヘルム・ステンハンマルです。19世紀後半から20世紀前半にかけて北欧からはノルウェーのグリーグ、フィンランドのシベリウス、デンマークのニールセンと世界的な作曲家が誕生しましたが、なぜかスウェーデンからは彼らと並ぶような作曲家は現れませんでした。敢えて言うなら少し前のブログで「夏至の徹夜祭」をご紹介したアルヴェーン、そしてこのステンハンマルが挙げられますが、それにしても知る人ぞ知ると言った感じです。かく言う私も彼の作品に触れるのは本CDが初めてです。



CDはニクラス・シヴェーレフのピアノ、マリオ・ヴェンツォゴ指揮マルメ交響楽団の演奏です。収録曲はピアノ協奏曲2曲。他にも3曲の交響曲を残しているようですがそれらについてはまだ国内盤は発売されていないようです。順番的にはピアノ協奏曲第2番→第1番の順で収録されていますが、ここでは第1番→第2番の順で解説します。

第1番は4楽章形式で40分を超える大作です。CD解説にはブラームス風と表現されていますが、確かに重厚な作りの第1楽章やメランコリックな第4楽章冒頭はいかにもブラームスっぽいですが、それ以外はむしろグリーグに通じる清らかで美しい旋律が主体です。特に♪菜の花畑に~、で始まる唱歌「朧月夜」に似た親しみやい主題で始まる美しい緩徐楽章の第3楽章、熱情的な前半部分から怒濤のフィナーレに行くと思いきや北欧風の春を思わせる爽やかな旋律で幕を閉じる第4楽章が感動的です。

第2番は第1番の10年以上後に書かれた作品です。一応こちらも4楽章形式ですが続けて演奏されるため実質的には単一楽章で演奏時間も30分弱とコンパクトな作りです。内容的にも歌心あふれる旋律に溢れていた第1楽章に比べるとやや重めで内省的な印象を受けます。ただ、第4楽章は霧が晴れたように希望に満ちた力強い旋律が現れ、そのまま感動的なフィナーレへと突き進んでいきます。以上、2曲とも素晴らしい内容で、特にグリーグのピアノ協奏曲が好きな方ならほぼ間違いなく好きになると思います。超お薦めです!
コメント

バラキレフ/交響曲第1番、イスラメイ、タマーラ

2019-03-07 12:19:05 | クラシック(交響曲)
クラシックファンなら「ロシア五人組」という言葉を聞いたことがあると思います。19世紀のロシアの国民音楽の成立に寄与した5人の作曲家のことで、ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ、バラキレフ、キュイの5人のことを指します。このうちボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフの3人については名前を聞いただけで複数の有名曲がパッと思い浮かぶぐらいポピュラーな存在ですが、バラキレフとキュイについては一般的に知られているとは言い難いですね。本日はそのうち前者のバラキレフを取り上げたいと思います。ご紹介するCDはバラキレフの2曲の交響曲のうち第1番の方。その他に彼の代表曲であるピアノ曲「イスラメイ」の管弦楽編曲版、そして交響詩「タマーラ」です。発売レーベルはこういったマイナー作品に無類の強さを発揮するナクソス。演奏はイーゴリ・ゴロフスチン指揮ロシア国立交響楽団です。



まず交響曲第1番ですが、4楽章形式のオーソドックスな構成で、旋律も親しみやすい上にスケールも雄大な、実に堂々とした交響曲です。にもかかわらずほとんど知られていないのは実にもったいない話ですが、チャイコフスキーの交響曲が好きな人は100%気に入ること間違いなしです。とりわけ第3楽章アンダンテはチャイコフスキーの有名な交響曲第5番アンダンテ・カンタービレを彷彿とさせるセンチメンタルな旋律で、もっとポピュラーになっても良いのではないでしょうか?最終楽章の盛り上がりもなかなかのものです。

続く「イスラメイ」はバラキレフの最も有名な曲で、ピアノ独奏で演奏されることが多いですが、彼の弟子であるリャプノフが管弦楽用に編曲し、本CDにはそのバージョンが収録されています。“東洋風幻想曲”という副題が付いているように、カフカスやタタールの民謡にインスピレーションを受けて作曲したそうです。9分弱の作品ですが、全編が魅力的な旋律に彩られた名曲中の名曲です。曲は民族舞曲風の力強い旋律で始まり、2分過ぎに美しい第2主題が現れますが、これがまた胸を焦がすような名旋律で、思わず恍惚としてしまいます。その後は再び冒頭の舞曲に戻ってエネルギッシュなフィナーレを迎えます。ボロディンの「だったん人の踊り」と並んでロシア音楽が生み出した屈指の名曲と言ってよいのではないでしょうか?

最後の交響詩「タマーラ」は20分を超す大作で、これもまたカフカス地方の伝説に題材を取ったエキゾチックな作品です。タマーラとは伝説の女王の名前で、彼女が旅人達を歌声で誘惑し、愛を交わした後、そのままとり殺してしまうという美しくも残酷な話です。この曲も魅力的な旋律が散りばめられており、特に中間部の民族舞曲風の主題、そして消え入るように終わるフィナーレの美しい主題が印象的です。全体的にチャイコフスキーらに比べるとオリエンタルな雰囲気が漂いますが、それもまたバラキレフの魅力と言えるかもしれません。とにかく、全ての曲が名曲揃いで大満足の1枚でした。ナクソスにはもう1枚バレキレフのシリーズがあるので、そちらも近いうちに購入してみようと思います。
コメント