ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジミー・スミス/ザ・チャンプ

2020-10-31 08:06:03 | ジャズ(ハードバップ)

本日取り上げるのはジミー・スミスです。スミスについては以前に「ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター」でも解説しましたが、オルガン・ジャズと言うジャンルそのものを切り開いたジャズ界きっての革命児です。一応、スミス以前にもワイルド・ビル・デイヴィスやミルト・バックナーと言ったオルガンの名手がいるにはいましたが、存在的にはマイナーでジャズの主流とはかけ離れた存在でした。そんな中、前述の「ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター」でデビューを飾ったスミスは瞬く間にシーンを席捲。ホレス・シルヴァーと並んでブルーノート全盛期を引っ張る屋台骨的存在となります。また彼の活躍を受けてスミス以後に雨後の筍のように新たなオルガン奏者達がデビューを飾り、60年代に流行する“ソウル・ジャズ”の流れを作っていきます。

今日ご紹介する「ザ・チャンプ」はスミスのデビュー2作目で、「ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター」の翌月の56年3月に録音されたものです。ジャケットにも書かれているように、正式名称は「ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター:ジミー・スミス・アット・ジ・オルガン・Vol.2」で前作の続編的存在とも言えます。メンバーはこの時期のジミー・スミス・トリオの固定メンバーであるソーネル・シュワルツ(ギター)とドナルド・ベイリー(ドラム)です。

作品はアルバムタイトルにもなっているディジー・ガレスピーの名曲“The Champ”で幕を開けます。これがまた「音の洪水」とでも言うべき怒涛の展開で、のっけからスミスがエンジン全開でオルガンを弾きまくります。スミスも後年地位を確立して行くと、ポップなコンセプトの作品を作るようになりますが、デビュー作や本作でのプレイは野性的とでも言っていいような異様なエネルギーに満ち溢れていますね。続く“Bayou”“Deep Purple”“Moonlight In Vermont”はいずれもバラードですが、ここでの演奏も後年のようにマイルドではなく、ハモンドオルガン特有の長く伸びる音を活かして、「音の壁」と表現したくなるような重層的なサウンドを作り上げています。6曲目“Turquoise”も同じようなバラードですね。なお、これらバラード曲ではソーネル・シュワルツのギターが良いアクセントになっています。5曲目“Ready 'N Able”と7曲目“Bubbis”はどちらもスミスの自作曲で軽快なハードバップです。

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スタンリー・タレンタイン/ネヴァー・レット・ミー・ゴー

2020-10-29 20:36:23 | ジャズ(ソウルジャズ)

約2カ月ぶりの更新です。ここ3年近くはクラシックのCDばかりアップしていましたが、その間にジャズCDもいろいろと復刻されていますので、今日からはそれらを取り上げたいと思います。第1弾はスタンリー・タレンタインの1963年のブルーノート盤「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」です。タレンタインは60年代のブルーノートを代表するスターで、本ブログでも過去に5作品ほど取り上げています。当時のタレンタインは特に共演メンバーを固定せず、作品によってホレス・パーラン・トリオ、スリー・サウンズ、西海岸のレス・マッキャン・トリオ等さまざまなメンツと組んで録音を残していますが、本作は「ディアリー・ブラヴド」に続いて当時の奥方シャーリー・スコットと組んだ1枚です。ブルーノートでは他には「ハスリン」「ア・チップ・オフ・ジ・オールド・ブロック」「コモン・タッチ」でスコットと共演しています。一方、スコット自身も売れっ子オルガン奏者としてプレスティッジから多くのリーダー作を発表しており、そちらにはタレンタインがゲストとして参加。他にインパルス盤やアトランティック盤でも共演するなど、ジャズ界を代表するおしどり夫婦として有名でした。(その割には70年代に離婚してしまいますが・・・)

メンバーはタレンタイン&スコット夫妻に加え、メージャー・ホリー(ベース)、アル・ヘアウッド(ドラム)、レイ・バレト(コンガ)という顔ぶれ。“Never Let Me Go”と“They Can't Take That Away From Me”の2曲のみベースがサム・ジョーンズ、ドラムがクラレンス・ジョンストンに代わっています。オルガン入りと言うことで、一応ソウル・ジャズの範疇に入るのでしょうが。そこまでコテコテではありません。R&B色の強いのは1曲目のロイド・プライス作“Trouble”くらいで、後は歌モノスタンダードありブルージーな曲ありとバラエティ豊かな内容です。軽快なスタンダード“Without A Song”、スコット自作のバラード“Never Let Me Go”も出色の出来ですが、とりわけ素晴らしいのが“You'll Never Get Away From Me”。ミュージカル「ジプシー」の挿入曲であまり知られていない曲ですが、タレンタインの歌心あふれるテナーとスコットのグルーヴ感満点のオルガンが抜群にマッチした名曲・名演です。

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