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本作「フリー・フォーム」は1961年、ブルーノートに残された作品です。ちょうどハードバップがピークを過ぎ、モードジャズやフリージャズが台頭してきた頃で、作品の内容も当時のジャズシーンを映し出すような作りになっています。メンバーもウェイン・ショーター(テナー)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、ブッチ・ウォーレン(ベース)、ビリー・ヒギンス(ドラム)と60年代ブルーノートを象徴するようなモード~新主流派寄りの面々で、バードのアルバムの中ではやや異色の存在とも言えます。まず、冒頭“Pentecostal Feeling”は当時流行していたロックンロールのビートを取り入れたダンサブルなナンバーで、後にリー・モーガンがヒットさせるジャズロックの先駆け的な曲と言っていいかもしれません。続く“Night Flower”は美しいバラード。バードのブリリアントなソロもさることながら、作曲者であるハンコックのモーダルなプレイに注目です。“Nai Nai”は思わず口ずさみたくなるようなメロディを持った心地よいハードバップ。何だかんだ言って個人的にはこういう曲が一番しっくりきます。“French Spice”はバードの代表作“Fuego”を思わせるファンキージャズ。そして最後の“Free Form”はタイトル通り、メロディをほぼ無視したフリージャズ風の演奏。バードの作品でこの手の前衛スタイルは珍しいですね。以上5曲、バードの作品の中ではあまり取り上げられることも少ないですが、バラエティに富んだなかなかいいアルバムだと思います。