ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

トゥーツ・シールマンス/マン・バイツ・ハーモニカ!

2024-11-02 15:45:06 | ジャズ(その他)

本日は珍しいジャズ・ハーモニカ作品を取り上げます。ハーモニカは小学生の時に学校で習うぐらい身近な楽器ではありますが、プロが演奏する楽器としてはマイナーですよね。洋楽ではスティーヴィー・ワンダー、邦楽だと長渕剛あたりが歌いながらハーモニカを吹くイメージが強いですが、ジャズの世界でハーモニカを主楽器にしている数少ないプレイヤーが今日ご紹介するトゥーツ・シールマンスです。”トゥーツ”と言うのはあだ名で本名はジャン=バチスト・ティルマンスと言い、ブリュッセル生まれのベルギー人です。

1950年にベニー・グッドマン楽団のヨーロッパツアー中に才能を見出され、1952年にアメリカに移住し、徐々に才能を認められていきます。本作「マン・バイツ・ハーモニカ!」は1957年12月から1958年1月にかけてリヴァーサイド・レコードに吹き込まれた初期の代表作です。一応、それより前の1955年に「ザ・サウンド」と言う作品をコロンビアから発売しているようなのですが、CD発売はされていないようです。

メンバーはリズムセクションがケニー・ドリュー(ピアノ)、ウィルバー・ウェア(ベース)、アート・テイラー(ドラム)といかにもリヴァーサイドらしい手堅い面々ですが、そこにバリトンサックスのペッパー・アダムスが加わっているのが面白いですね。トランペットやテナーだとそちらが目立ってしまうからなのかもしれませんが、結果的にアダムスのブリブリと吹く重低音が良いアクセントになっています。なお、トゥーツはハーモニカだけでなくギターの名手でもあり、本作でもいくつかの曲でギターを披露しています。

全8曲、うち最初の2曲とラストの2曲が歌モノスタンダードです。中でも1曲目の"East Of The Sun"が絶品ですね。多くの歌手が歌ったロマンチックな名曲をトゥーツがハーモニカで情緒たっぷりに歌い上げて行きます。途中で挟まれるアダムス、ドリューのソロもさすがです。2曲目"Don't Blame Me"と7曲目"Imagination"はどちらもアダムス抜きのバラード演奏。トゥーツが前者はハーモニカ、後者はギターでじっくり聴かせます。ラストトラックはロジャース&ハートの"Isn't It Romantic"で、アダムス→トゥーツのハーモニカ→ドリューと軽快にソロをリレーします。

スタンダード以外も悪くないです。3曲目"18th Century Ballroom"はレイ・ブライアント作曲で、トゥーツがギターでスインギーなソロを聴かせます。続く"Soul Station"はトゥーツ自作のブルースで、まずトゥーツがブルージーなギターでアダムスと絡み、その後アダムス→トゥーツのハーモニカソロ→ドリューとソロを取り、再びトゥーツがギターで締めくくります。トゥーツのなかなかソウルフルな一面が見れる曲です。”Fundamental Frequency”はハードドライビングなトゥーツの自作曲、”Struttin’With Some Barbecue”はルイ・アームストロングで有名な曲で、どちらもトゥーツのハーモニカ→アダムス→ドリューの順で快調にソロをリレーします。トゥーツはその後も活躍を続け、60年代には後にスタンダードとなる”Bluesette”を作曲、70年代にはビル・エヴァンスとのコ・リーダー作「アフィニティ」を発表したりしますが、個人的にはハードバップの香りも漂わせる本作が一番のお気に入りです。

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ジ・インクレディブル・カイ・ウィンディング・トロンボーンズ

2024-10-22 19:53:16 | ジャズ(その他)

本日は白人トロンボーン奏者のカイ・ウィンディングをご紹介します。少し変わった名前ですが、デンマーク生まれで子供の時に両親とともにアメリカに移住してきたそうです。彼の場合は何と言ってもJ・J・ジョンソンとのトロンボーン・デュオ、”ジェイ&カイ”で有名ですよね。1950年代前半にコンビを組み、プレスティッジ、サヴォイ、コロンビア、ベツレヘム、インパルス等に10枚を超える作品を発表しています(本ブログでも過去にベツレヘム盤を取り上げています)。ただ、双頭リーダーと言いつつ、知名度ではJ・J・ジョンソンの方が圧倒的に上で、カイの方は典型的な”じゃない方”扱いなのは否めません。実際、カイはジェイ&カイ以外にも50年代だけで10枚近いリーダー作をコロンビア等に残しているのですが、私はそれらの作品がCDで発売されているのを見たことがないですし、ジャズファンの間でひそかに愛好されているということもないようです。

本作はそんな地味なカイが1960年にインパルス・レコードに吹き込んだもので、カイの単独リーダー作の中で唯一市場に出回っている作品です。録音は1960年11月と12月に行われており、11月のセッションがロス・トンプキンス(ピアノ)、ボブ・クランショー(ベース)、アル・ベルディーニ(ドラム)、オラトゥンジ(コンガ)のリズムセクションにジョニー・メスナー含む4人のトロンボーン・アンサンブルが加わります。12月のセッションはリズムセクションがビル・エヴァンス(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、スティックス・エヴァンス(ドラム)に代わり、ジミー・ネッパー含む3人のトロンボーン・アンサンブルと言う構成です。

全10曲。歌モノスタンダードとジャズオリジナルが半分ずつで、選曲もバラエティ豊かです。1曲目はクルト・ワイルの定番スタンダード"Speak Low"ですが、エキゾチックなアレンジがされており、ナイジェリア出身のオラトゥンジが野性的なコンガで盛り立て、カイとトンプキンスが快調なソロを聴かせます。2曲目"Lil Darlin"はニール・ヘフティがカウント・ベイシー楽団のために書いたバラードで、カップミュートのアンサンブルをバックにカイとトンプキンスがゆったりとソロを取ります。3曲目"Doodlin'"はご存知ホレス・シルヴァーのファンキーチューンで、分厚いトロンボーンアンサンブルをバックにカイの咆哮するトロンボーン、トンプキンスの意外とファンキーなソロがフィーチャーされます。4曲目ガーシュウィン・ナンバーの"Love Walked In"は通常ミディアムテンポで演奏されることが多いですが、ここではムードたっぷりのスローバラードに料理されています。5曲目"Mangos"はソニー・ロリンズも「ザ・サウンド・オヴ・ソニー」でカバーした楽しいラテンナンバーで、"Speak Low”同様にオラトゥンジのコンガが大活躍します。

後半(レコードのB面)最初の"Impulse"はレコード会社に捧げたであろうカイのオリジナル。ただ、聴いていただければわかるようにスタンダードの"I'll Remember April”を急速調にした感じです。カイのパワフルなトロンボーンはもちろんのこと、ロス・トンプキンスがグルーヴィーなピアノソロを聴かせてくれます。この人、他ではあまり見かけない白人ピアニストですが、なかなか良い演奏をしますね。7曲目"Black Coffee"はペギー・リーの歌であまりにも有名な曲。実はこの曲からピアノがビル・エヴァンスに交代していますが、トロンボーンが主役なので言われなければ気づきません。ただ、続く"Bye Bye Blackbird"ではエヴァンスがさすがのプレイを聴かせてくれます。イントロの軽快なピアノもそうですし、カイのミュートソロを挟んで、40秒ほどではありますが珠玉のようなソロを披露します。その後に再びトロンボーンソロがありますが、そちらはジミー・ネッパーとのこと(ネッパーについては過去ブログ参照)。

ラスト2曲はカイが愛嬢に捧げた"Michie"のスローバージョンとファストバージョンが続けて収録されています。前者はゆったりしたトロンボーンアンサンブルとエヴァンスのピアノをバックにカイが情感たっぷりにバラードを歌い上げます。後者はドライブ感たっぷりの演奏で、力強いカイのソロに続き、目の覚めるようなピアノソロが挟まれますが、こちらはエヴァンスじゃなくて再びトンプキンスなんですね。ややこしいな。その後でトロンボーンソロを取るのはエフィ・レスニック(知らん!)と言う人らしいです。アル・ベルディーニのドラミングにシャープなトロンボーンアンサンブルも見事です。以上、全曲解説してしまいましたが、どの曲も聴きどころがあり、最初から最後まで聴く者を飽きさせない内容で、文句なしの名盤と思います。

 

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シェリー・マン/マイ・フェア・レディ(キャピトル盤)

2024-09-14 21:56:41 | ジャズ(その他)

本日はシェリー・マンの「マイ・フェア・レディ」です。ブロードウェイミュージカルで、オードリー・ヘップバーン主演の映画も大ヒットした作品から収録曲をジャズ化したものです。ただ、ジャケットが何か違うぞ?と思った方もいらっしゃるかもしれません。と言うのも一般的に知られているのは1956年に西海岸のコンテンポラリー・レコードに吹き込まれたもので、主人公のイライザらしき女性がティーカップを持っているデザインです。こちらはシェリー・マンとアンドレ・プレヴィン(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)とのトリオ編成によるもので、ジャズ名盤特集にも必ず出てくる有名盤です。

今日ご紹介するのは1964年にキャピトル・レコードに吹き込まれたもう1枚の「マイ・フェア・レディ」です。正直私はこのアルバムの存在を全く知りませんでしたが、たまたま今はなき梅田のワルティ堂島で見つけ、興味半分で聴いてみたところこれがなかなか面白い。まず、メンバーが全く異なります。こちらは合計15人の管楽器奏者を従えたビッグバンド編成で、指揮するのはジョン・ウィリアムズです。スタン・ゲッツやチャーリー・マリアーノと共演したピアニストの方ではなく、「スター・ウォーズ」「スーパーマン」「インディ・ジョーンズ」等で知られる映画音楽の巨匠の方ですね。この頃はジョン・タウナー・ウィリアムズの名前でジャズ・ピアニストとしても活動し、ベツレヘムにリーダー作も残しています。

オーケストラの中にはトランペットのコンテ・カンドリやトロンボーンのフランク・ロソリーノ等大物の名前も見えますが、彼らはアンサンブル要員で、ソロを取るのはドン・スリート(トランペット)、チャーリー・ケネディ(アルト)、ラス・フリーマン(ピアノ)の3人です。また、全編でヴォーカルも入っており、歌うのはジャック・シェルドンとアイリーン・クラール。シェルドンは本職がトランぺッターでウェストコースト・ジャズではそこそこ活躍していますが、本作ではトランペットは吹かず、歌のみを披露しています。アイリーン・クラールはジャッキー&ロイのロイ・クラールの妹で、ソロ歌手として多数のアルバムを残しています。

(キャピトル盤)      (コンテンポラリー盤)

 

全12曲。もちろん全てがフレデリック・ロウ作曲による劇中歌です。”I Could Have Danced All Night””On The Street Where You Live””I've Grown Accustomed To Her Face"のようにその後スタンダードとして多くのジャズマンにカバーされた曲ももちろん入っていますが、注目すべきはむしろ他の曲の方でしょう。まずは、オープニングの”Why Can’t The English?"。いきなり咆哮するホーンセクションの後、シェルドンが特徴のあるダミ声で歌い出し、そこにチャーリー・ケネディのアルトとドン・スリートのトランペットが絡んでいきます。”I'm An Ordinary Man"では最初はシェルドンによるバラード風の歌い出しで、そこにホーンセクションが絡んで行き中盤はスリリングな展開に。その他ではシェルドンとアイリーン・クラールの少しおどけたデュエット”The Rain In Spain”、ラス・フリーマンのピアノが美しいバラード”On The Street Where You Live”も良いです。

シェルドンの声はお世辞にも美声とは言えませんが、味のあるダミ声で少しユーモラスな響きもありますね。ドン・スリートとチャーリー・ケネディもどちらもマイナーですが、随所で素晴らしいソロを聴かせてくれます。何より全編で切れ味鋭いビッグバンドサウンドを響かせるジョン・ウィリアムズの手腕が凄いですね。彼が映画音楽の世界で大成功を収めるのは70年代以降のことですが、それ以前にジャズの世界でこんな作品を残していたのは知りませんでした。肝心のシェリー・マンですが、もちろん全編でドラムを叩いてはいますが、この作品に関してはあくまでリーダーとして多種多様な人材を呼び集めたのが最大の功績と言っていいかもしれません。

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ジーン・クイル/3ボーンズ&ア・クイル

2024-09-03 18:45:38 | ジャズ(その他)

本日はかなりマニアックなところで白人アルト奏者ジーン・クイルの作品をご紹介します。15年ほど前に今はなき梅田のワルティ堂島で購入した1枚ですね。レアなジャズ作品がたくさんあって好きなお店でした。ジーン・クイルと言えば、フィル・ウッズとのアルト2本による双頭コンボ、フィル&クイルの片割れとして名前自体はそれなりに知られていると思います(「フィル・トークス・ウィズ・クイル」参照)が、ネームバリュー的には圧倒的にウッズが上で、クイルについては典型的な”じゃない方”の扱いです。

本作はそんな地味なクイルが1958年にルースト・レコードに吹き込んだもので、タイトル通り3人のトロンボーン奏者と共演しています。その3人とはジャケット左側からジミー・クリーヴランド、ジム・ダール、フランク・リハックです。複数のトロンボーン奏者が入った編成自体はビッグバンドではよくありますが、スモールコンボでは非常に珍しいですね。しかも単なるアンサンブル要員ではなく、全員がきちんと各曲でソロを取るのが面白いです。なお、リズムセクションはピアノが曲によってナット・ピアースまたはハンク・ジョーンズ、ベースがホワイティ・ミッチェル(レッド・ミッチェルの弟)、ドラムがチャーリー・パーシップと言う布陣です。

アルバムはまずホレス・シルヴァーの”The Preacher”で幕を開けます。「ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」で演奏されたゴスペル調の曲で、白人中心のフロントラインにしては意表を突く選曲ですが、これがなかなか良いです。最初のピアノソロは"白いベイシー"ことナット・ピアースで、その後フランク・リハックのトロンボーンを挟んでクイルのアルト、続いてダール→クリーヴランドと続きます。トロンボーンのソロ順は一応ジャケット裏に全曲分書いてありますが、はっきり言って耳で聴き分けるのは不可能ですね。まあ、誰のソロとか色々考えずにリラックスして聴くのが良いのではないでしょうか?

2曲目以降はオリジナル中心ですが、その中でもおススメは重厚なトロンボーン・アンサブルの後にクイルがもろパーカー風のアドリブを披露する"What's My Name"、トロンボーンによるマイルスの”Denial"風のリフが入るハードドライビングな”Look Ma No Hands”、クリーヴランド作のアップテンポのブルース”Little Beaver”等です。ラストはエリントン楽団の名曲”In A Mellow Tone”をスインギーに演奏して締めます。パーカー直系のパピシュなアルトを聴かせるクイルはもちろんのこと、アンサンブルにソロに活躍するトロンボンチームが素晴らしいですね。地味なメンツだけに購入する前は私もそこまで期待していませんでしたが、聴き込めばなかなか味わいのある1枚です。

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ラテン・ジャズ・クインテット&エリック・ドルフィー/キャリベ

2024-08-29 18:52:01 | ジャズ(その他)

本日は少し変わったところでラテン・ジャズ・クインテットとエリック・ドルフィーの共演盤をご紹介します。一応、主役はラテン・ジャズ・クインテットでそこにドルフィーがゲスト参加した形ですが、彼らを目当てにこのアルバムを買う人はほぼいないでしょう。私も当然ドルフィー目当てで買いました。基本的に前衛ジャズやフリージャズにはあまり理解を示さない私ですが、なぜかドルフィーは昔からそこそこ好きです。ジャズの右も左もわからない20代半ばの頃に名盤紹介に載っていた「アット・ザ・ファイヴ・スポット」2枚セットを買い、何だかよくわからないけれどそのエネルギーに引き込まれました。ただ、全部好きと言うわけでもなく、その後に買ったブルーノート盤「アウト・トゥ・ランチ」はよくわかりませんでした。

主役のラテン・ジャズ・クインテットについても述べておきましょう。詳しいプロフィールは調べてもあまり出てこないのですが、コンガ奏者のファン・アマルベルトが中心となったグループのようです。もう1人、マニー・ラモスという人がティンバレスというドラムのような打楽器を担当しています。この2人が名前的にもラテン系でおそらくキューバとかプエルトリコとかそっち系でしょう。それ以外はジーン・ケイシー(ピアノ)、チャーリー・シモンズ(ヴァイブ)、ビル・エリントン(ベース)と普通のアメリカ人っぽい名前です。いずれにせよ全員他ではあまり聴かない名前ですね。強いて言えばピアノのケイシーがオリヴァー・ネルソンの「ソウル・バトル」でピアノを弾いていたぐらいでしょうか?そんなマイナーグループですが、プレスティッジ系列のニュージャズに2枚作品を残しており、1つが1960年8月録音の本作、もう1枚が「ラテン・ソウル」と言う作品です。物好きな私はそちらも買いましたが、内容は正直イマイチでした・・・

さて、ここからがややこしいのですが、実はラテン・ジャズ・クインテットとエリック・ドルフィーの共演盤はもう1枚あります。それが1961年にユナイテッド・アーティスツから発売された「ラテン・ジャズ・クインテット・ウィズ・エリック・ドルフィー」でタイトル名が牛の顔のデザインになったジャケットです。本作に続く共演第2弾かと思いきやそうではなく、実はこのグループは名前だけ同じの全くの別グループのようなのです。リーダーはフェリペ・ディアスと言うヴァイブ奏者で残りのメンバーも全員別人です。よく考えれば”ラテン・ジャズ”なんて固有名詞でも何でもないので名乗ったもん勝ちですよね。しかし、よりにもよってどちらのグループとも個性派のドルフィーと共演するとは、偶然なのかあるいは企図したものか?ちなみに私はこのユナイテッド・アーティスツ(UA)盤も購入しました。こちらの方がスタンダード曲中心で大衆性はありますが、内容的には「キャリベ」の方が優れていると思います。最近CDで再発されたのはこのUA盤の方ですので、購入される際はお間違いのないように。

(キャリベ)        (UA盤)

 

アルバムの内容に移りましょう。1曲目”Caribé”はケイシーのオリジナル。後ろでコンガがリズムを刻むゆったりしたテンポに乗ってまずケイシーがピアノソロを取り、ドルフィーのアルト→シモンズのヴァイブとソロをリレーします。ラテンでも前衛でもない普通のジャズで、なかなかの名曲・名演と思います。2曲目”Blues In 6/8"はアマルベルト作。曲名にブルースとありますがブルースっぽくありません。ヴァイブとアルトが奏でる賑やかなテーマに続きシモンズ→ドルフィーのアルト→ケイシー→アマルベルトのコンガソロと続きます。続くケイシー作"First Bass Line"は曲名通りビル・エリントンのベースが大きくフィーチャーされます。ドルフィーはここではバス・クラリネット(通称バスクラ)を吹きますが、おどろおどろしい音色で一気に前衛音楽感が強まります。ドルフィーのアルトやフルートは多少エキセントリックなソロでも音的に周りの楽器と調和して意外と違和感なく聴けるのですが、バスクラだとトンがって聞こえますね。

4曲目はアマルベルト作”Mambo Ricci"。曲名だけ見ると能天気そうな明るい感じですが、ドルフィーがいきなり先鋭的なアルトソロで暴れます。5曲目”Spring Is Here"はロジャース&ハートの定番曲。本作中唯一のスタンダードで、ドルフィーがフルートで意外とメロディアスなソロを吹きます。シモンズのヴァイブ、ケイシーのピアノも涼しげな感じで、アグレッシブな演奏が続く中での一服の清涼剤という感じでしょうか?ラストの”Sunday Go Meetin'”はいかにもなラテン調のリズムをバックにドルフィーがフルートでぶっ飛んだソロを取ります。続くシモンズ→ケイシーもわりと攻めた感じです。以上、前衛っぽさとラテンっぽさが融合した不思議な感覚の作品です。

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