ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ウィリー・ボボ/ボボズ・ビート

2017-03-13 12:26:47 | ジャズ(その他)
本日はちょっと変わり種でラテンパーカッション奏者ウィリー・ボボのルーレット盤をご紹介します。本名はウィリアム・コレア。プエルトリコ移民でニューヨークの通称“スパニッシュ・ハーレム”で育ったそうです。以前に本ブログでも紹介したグラント・グリーンの「ラテン・ビット」やハービー・ハンコックの「インヴェンションズ・アンド・ディメンションズ」等多くのジャズアルバムに参加しており、ラテンパーカッションの分野ではキャンディドやカルロス・バルデスらと並んで第一人者と言えるでしょう。ただ、多くのジャズファンにとっては正直パーカッションという楽器自体が“おまけ”みたいな存在で、せいぜい後ろでチャカポコ鳴ってるなあという程度の認識しかないのが事実です。このたび「ジャズ・マスターズ・コレクション1200」シリーズで再発売にはなりましたが、購入前の期待値もそんなに高くなく、「まあ買ってみっか」程度でした。ところがいざ聴いてみるとなかなかクオリティが高く、拾いモノの1枚でした。



曲は全9曲。冒頭の“Bon Sueno”なんてイメージ通りのラテン・ムード全開の陽気なナンバーですが、続く“Naked City Theme”は一転してスローバラードで、ホーンセクションとオルガンが都会の夜の雰囲気を演出します。そこから“Felicidade”“Bossa Nova In Blue”“Boroquinho”とボサノバ風の楽曲が3曲続き、続く“Crisis”はフレディ・ハバード作でジャズ・メッセンジャーズも演奏したモードジャズの名曲です。続くブラジル風の“Mi Fas Y Recordar”を経て、今度はトム・マッキントッシュ作のハードバップ“Capers”。最後はオルガンを全面的にフィーチャーしたソウルフルな“Let Your Hair Down Blues”で締めくくり。以上、いかにもラテン風の演奏もあれば、“Crisis”等ジャズ度の高い曲も多く、バラエティに富んだ選曲です。バックのホーンセクション陣の演奏も聴き応え十分で、あいにく参加メンバーの詳細が記載されていないものの、トランペットにクラーク・テリー、テナーにジョー・ファレル、オルガンにフランク・アンダーソンが参加しており、随所に小気味良いソロを聴かせてくれます。それ以外にも“Boroquinho”ではトロンボーンが大々的にフィーチャーされますが、誰が吹いているのかはわかりません。もちろん主役のボボも全編にわたってチャカポコチャカポコとリズムを刻んでいますが、どちらかと言うとトータルのサウンドで楽しむ作品ですね。
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バド・パウエル/タイム・ウェイツ

2017-03-07 22:26:44 | ジャズ(ピアノ)
前回のユタ・ヒップに続き、本日もブルーノートからピアノトリオの名盤をご紹介します。バド・パウエルについては以前に本ブログでも「バド!」を取り上げましたが、本作「タイム・ウェイツ」はその翌年の1958年に発表されたものです。この作品の特徴は全てがパウエルの自作曲ということですね。“Un Poco Loco”“Parisian Thoroughfare”はじめ多くの名曲を書き残しているパウエルですが、全曲オリジナルというのは珍しく、本作と同年発表の「ザ・シーン・チェンジズ」の2枚のみだそうです。ジャズ評論家からはパウエルの全盛期は40年代であって、50年代以降は下り坂と良く言われますが、この頃のパウエルも創作意欲に満ち溢れていたのではないかと思います。個人的には40年代のパウエルよりもこの頃の方が取っつきやすくて好きですね。



曲は全9曲、ただし2曲は別テイクなので実質7曲です。メンバーはさすが天下のブルーノートだけあってサム・ジョーンズ(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)と大物が脇を固めています。アルバムはまずラテン調の賑やかな“Buster Rides Again”で幕を開けます。これはパウエルにしては珍しく陰のない明るい曲です。続く2曲目“Sub City”は典型的なバップ・チューン。3曲目は本作のタイトル曲でもある名曲“Time Waits”。哀調を帯びたメロディが胸に染みる珠玉のバラードで、パウエルの数多いバラード演奏の中でも決定曲と言ってよいでしょう。続く急速調バップ“Marmalade”、調子っ外れのメロディが変てこりんな“Monopoly”を経て、本作のもう一つのハイライトでもある“John's Abbey”へ。パウエルが独特のうなり声をあげながら快調に飛ばしていきます。エンディングが「おじいさんの古時計」に聞こえるのは私だけでしょうか?ラストの“Dry Soul”はアフターアワーズ的なスローブルースです。以上、全てが名曲というわけではありませんが、“Time Waits”と“John's Abbey”だけでも購入の価値はあるのではないでしょうか?

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