ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ハロルド・アウズリー/テナー・サックス

2013-04-25 23:04:19 | ジャズ(ハードバップ)
これまで1000枚を超えるジャズアルバムを聴き、いっぱしのジャズ通になったつもりの私ですが、それでも未知のジャズメンに遭遇することがあります。今日ご紹介するハロルド・アウズリーもその1人ですね。何でも60年代後半にジャズファンクの分野でそこそこ活躍したそうですが、私がこれまで手にしたアルバムにはサイドメン含めて一度も名前を見たことがありません。プロフィールにはマイルス・デイヴィスと共演したと書いてありますが、そんな音源は聞いたことないですし、おそらくどこかのライヴで一緒に演奏しただけでしょうね。ただ、無名だからと言って侮るなかれですよ。1961年にベツレヘムに残した本作は懐疑的な私の耳を十分に満足させてくれる良質のハードバップ作品でした。



共演はジュリアン・プリースター(トロンボーン)、チャールズ・デイヴィス(バリトン)、フィリップ・ライト(ピアノ)、トミー・ウィリアムズ(ベース)、ウォルター・パーキンス(ドラム)。渋いメンツが顔を揃えていますね。トロンボーンとバリトンという珍しい構成ですが、その分低音のアンサンブルを活かしたリラックスムード溢れるジャズを聴かせてくれます。中でもアウズリーの自作曲“Paris Sunday”は美しいメロディを持った名曲・名演と言ってよいでしょう。この曲を含め7曲中5曲をアウズリー本人が作曲しており、メロディメイカーとしての才能もありますね。マイナー調の“Devachan”、ラストの“Porter's Groove”もなかなかの佳曲です。演奏面ではテナーの王道を行くアウズリーのマイルドなソロもさることながら、共演のプリースター、デイヴィスの充実ぶりが見逃せないですね。ジャケットもお洒落ですし、ずばり隠れ名盤と言って良いのではないでしょうか?
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ハンク・クロフォード/ザ・ソウル・クリニック

2013-04-21 23:18:20 | ジャズ(ソウルジャズ)
保守的なジャズファンからはモダンジャズの範疇に入れてもらえないことも多いソウルジャズですが、当ブログではこれまで分け隔てなく紹介してきました。ただ、本音を言うとこのジャンルには単に当時のヒット曲をインストゥルメンタルで演奏するだけの安易な企画が多いのも事実です。特に60年代半ば以降はその傾向が顕著ですね。ビートルズやモータウンが爆発的にヒットしたのもこの頃ですので、ジャズ界もその嵐に飲み込まれたのでしょう。今日ご紹介するハンク・クロフォードも後年になるとやたら大編成のゴテゴテしたアルバムが多くあまり食指が動かないのですが、以前にご紹介した初リーダー作「モア・ソウル」とその続編とも言える本作(1961年録音)はシンプルな編成でコンセプトもしっかりした好盤です。



メンバーはリーダーのクロフォード(アルト)に加え、フィリップ・ギルボー(トランペット)、ジョン・ハント(フリューゲルホルン)、デイヴィッド・ニューマン(テナー)、リロイ・クーパー(バリトン)、エドガー・ウィリス(ベース)、ブルーノ・カー(ドラム)。前作「モア・ソウル」とドラム以外は全員一緒です。ただ、ソロを取るのはほぼクロフォードのみで、他のメンバーはアンサンブルに徹しています。1曲だけ例外がスタンダードの“What A Difference A Day Made”。ここでは全編にわたってトランペットのギルボーが素晴らしいバラードプレイを聴かせてくれます。アルバム中最もジャズ色の強い曲で、ひそかに個人的ベストトラックかも?他は“Please Send Me Someone To Love”“Playmates”とR&B色の強い曲が中心で、重厚なホーンアンサンブルをバックにクロフォードがソウルフルなアルトを聴かせてくれます。試験管片手に何かを実験中?のクロフォードを写したジャケットもユニークですね。
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GRPオールスター・ビッグ・バンド/オール・ブルース

2013-04-20 23:05:29 | ジャズ(ビッグバンド)

前回に引き続きビッグバンドジャズを取り上げたいと思います。と言っても時代はぐっと下って1994年の作品です。この頃にはベイシーもエリントンもとっくに世を去り、ビッグバンドはすっかり過去の遺物になっていました。そんな中、当時のジャズ/フュージョンの代表レーベルだったGRPレーベルが同社所属のミュージシャン達を集めて期間限定で結成したのがGRPオールスター・ビッグ・バンドです。アルバムは本作を含めて3枚しかありませんが、どれもビバップ~ハードバップの名曲のカバーが中心で、私のように自分の生まれる前のジャズにしか興味がない保守的な人間でも思わず聴いてみたくなる内容です。本作は彼らの3枚目かつ最後の作品ですが、タイトル通りブルースを中心とした選曲。マイルスの名曲“All Blues”を筆頭に、ホレス・シルヴァー、チャールズ・ミンガス、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンク、コルトレーンらの名曲が現代風解釈で蘇ります。



メンバーは合計17人。最大の魅力は合計9人から成る分厚いホーンセクションです。内訳はトランペット3人(アルトゥーロ・サンドバル、ランディ・ブレッカー、チャック・フィンドレー)、トロンボーン1人(ジョージ・ボハノン)、サックス5人(エリック・マリエンサル、ネルソン・ランジェル、アーニー・ワッツ、ボブ・ミンツァー、トム・スコット)、そこにテナーのマイケル・ブレッカーが2曲だけゲスト参加するという布陣。ピアノは曲ごとに交代し、デイヴ・グルーシンとチック・コリアが各2曲、ラムゼイ・ルイスとラッセル・フェランテが各3曲演奏します。他にベースのジョン・パティトゥッチ、ドラムのデイヴ・ウェックル、そして1曲だけブルースの大御所B・B・キングがヴォーカル兼ギターとして“Stormy Monday Blues”に参加しています。実を言うといつも50~60年代のジャズばかり聴いているため、オールスターと言われても半分近くは馴染みのない名前だったりするんですが・・・ただ、全員当時のトップミュージシャンだけあって腕前は確かで、アンサンブルの重厚さはもちろんのこと、曲ごとに各人が披露するソロも聴き応え十分です。曲はどれも水準以上の出来栄えですが、“All Blues”“Birks Works”“Blue Miles”あたりが特にお薦めです。

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クインシー・ジョーンズ/私の考えるジャズ

2013-04-17 19:38:19 | ジャズ(ビッグバンド)

クインシー・ジョーンズと言えば、ジャズの世界にとどまらず洋楽好きの人なら知らない人はいないでしょう。マイケル・ジャクソンの「スリラー」「BAD」のプロデューサーであり、自身名義でも「愛のコリーダ」や「バック・オン・ザ・ブロック」などヒット作を多数残しています。ただ、それは70年代以降の話で、50年代から60年代にかけてのクインシーは多くのビッグバンドを手がけるモダンジャズ界屈指のアレンジャーでした。1956年にABCパラマウントに残した本作はインパルス盤「クインテッセンス」、マーキュリー盤「ビッグ・バンド・ボサ・ノヴァ」と並んで、ジャズ時代のクインシーの代表作です。



「私の考えるジャズ」なんて大仰なタイトルがつけられていますが、内容は当時のハードバップシーンの俊英達を集めたオールスターセッションで、各人のソロとビッグバンドのアンサンブルが見事に融合した大傑作です。参加メンバーは総勢21人に及ぶので、全員列挙はしませんが、凄いメンバーですよ。中心となるのはアート・ファーマー(トランペット)、フィル・ウッズ(アルト)、ラッキー・トンプソン(テナー)、ジミー・クリーヴランド(トロンボーン)、チャーリー・パーシップ(ドラム)ですが、曲によってさらにミルト・ジャクソン(ヴァイブ)、ズート・シムズ(テナー)、ジーン・クイル(アルト)、ハービー・マン(フルート)、フランク・リハック(トロンボーン)、アービー・グリーン(トロンボーン)、ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、チャールズ・ミンガス(ベース)、ポール・チェンバース(ベース)らが加わるという超豪華ラインナップ。クインシー自体は黒人ですが、白人ジャズマンが多く参加しているのも特徴で、当時23歳だった彼がこれだけの人脈を駆使することができたということに驚嘆します。

曲も全て良いですよ。3本のトロンボーンを加え、マイルスのバージョンより重厚さを増した“Walkin'”、軽やかなフルートのテーマが印象的な“A Sleepin' Bee”、ミルト・ジャクソンのヴァイブをフィーチャーした“Sermonette”、クインシー自作のキャッチーな名曲“Stockholm Sweetnin'”“Boo's Bloos”、ズート・シムズのテナーが美しいバラード“Evening In Paris”。全6曲、どれもハズレなしです。メンバー、演奏、楽曲、どれを取っても文句のつけようのない名盤中の名盤ですね。

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ウェス・モンゴメリー/ポートレイト・オヴ・ウェス

2013-04-15 23:07:00 | ジャズ(ハードバップ)

ウェス・モンゴメリーのことを紹介するのは本ブログでは初ですね。60年代にジャズ・ギターの王様として君臨し、特に60年代半ば以降はドン・セベスキーのアレンジによる「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」等オーケストラを大胆に取り入れたスタイルで一世を風靡しました。ただ、それ以前のリヴァーサイド時代にはオルガンとドラムのみのシンプルなトリオ作品も計4枚残しています。その全てでオルガンを弾いているのがメルヴィン・ライン。お世辞にも有名とは言えませんが、ウェスとは同じインディアナ州の出身で気心の知れた仲だったようですね。もう一人のドラマーのジョージ・ブラウンも全くの無名ですが、彼もひょっとして同郷だったのでしょうか?



全6曲。いわゆるスタンダードは1曲もなく、全て他のジャズメンのオリジナルと自作曲で占められています。中ではピアニストのバリー・ハリス作の“Lolita”、そしてボビー・ティモンズのあの“Moanin'”のカバーが秀逸ですね。いつもながらのパワフルでホーンライクなギターを聴かせるウェスのプレイがさすがです。一方でオルガンのラインはと言うと、時折ソロは取るものの、自己主張は控えめであくまで脇役に徹している印象です。オルガン入りだと普通はR&B色の強いソウル・ジャズになりがちですが、必ずしもそうはなっておらず、あくまでウェスのギターを味わう作品となっています。正直、数あるウェスの名作の中では特筆すべき作品ではありませんが、ギター好きの人は持っておいて損はない作品ではないでしょうか?

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