ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ベートーヴェン/序曲集

2013-07-28 22:51:21 | クラシック(管弦楽作品)

ベートーヴェンのオーケストラ作品と言えばまずは名作揃いの交響曲群、次いでヴァイオリン協奏曲と5曲のピアノ協奏曲が思い浮かびます。ただ、それ以外にもベートーヴェンは戯曲やバレエ、オペラ等の音楽も書いており、ことにそれぞれの序曲は今でも演奏される機会が多いようです。しかしながら、それら序曲は交響曲のCDにおまけのような形で収録されていることが多いため、ついつい聴き流しがちです。かく言う私も「エグモント」「レオノーレ」「フィデリオ」はだいぶ前からCDで持っていたのですが、メインの交響曲の方ばかり聴いてじっくり耳を傾けていませんでした。



もちろん楽聖ベートーヴェンたるもの、序曲といえども駄作があるはずはなく、いざ腰を据えて聴くと完成度の高い名曲ばかりというのがわかります。特に「コリオラン」「レオノーレ」、「エグモント」「フィデリオ」が素晴らしいですね。どことなく「運命」第1楽章を思わせる勇壮な「コリオラン」、静から動へのドラマチックな展開が見事な「レオノーレ」、重々しいへ短調から終盤に爆発的盛り上がりを見せるる「エグモント」、天国的な明るさとベートーヴェンらしい勇壮さが見事に同居した「フィデリオ」。4曲ともベートーヴェンが最も創作意欲に満ちあふれていた30代半ばから40代半ばの間の作品であり、この間に「英雄」「運命」「田園」「皇帝」などの名作が残されたことを考えると、序曲と言えども傑作ぞろいなのがうなずけます。上記に比べればマイナーですが「プロメテウスの創造物」「アテネの廃墟」も充実の出来栄えです。

CDはダニエル・ハーディング指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニーのものを買いました。ベートーヴェンの序曲集と言えば、カラヤン、ヨッフム、アバド、アーノンクール、レーグナーと新旧の名指揮者のCDが揃っていますが、本盤は1999年録音と比較的新しいもの。ハーディングは録音当時24歳(!)ですが、実に成熟した素晴らしい演奏を聴かせてくれます。小編成の室内オーケストラとは思えない見事なアンサンブルが圧巻です。

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コダーイ/ハーリ・ヤーノシュ、ガランタ舞曲 他

2013-07-24 23:54:22 | クラシック(管弦楽作品)
前回のリストに続き、ハンガリー出身の作曲家コダーイ・ゾルターン(余談ですがハンガリーは日本と同じく姓→名の順で表記します)を取り上げます。リスト及び同時代のバルトーク・ベーラと並んでハンガリーの国民的作曲家として知られていますね。とは言え、リストは民族的にはドイツ人で音楽も王道ロマン派ですし、バルトークもかなり前衛色の強い作品が多いので、民族音楽をダイレクトに取り入れたこのコダーイこそが最もハンガリーらしい作曲家と言ってもよいでしょう。



中でも一番有名なのが「ハーリ・ヤーノシュ」です。もともとは同名のオペラのために作られた曲ですが、20分強に抜粋した管弦楽組曲の方が今では有名ですね。ハンガリー民話に登場するホラ吹き男ハーリ・ヤーノシュの半生を音楽で描写したもので、場面に応じて行進曲風・舞曲風などさまざまですが、とりわけ秀逸なのは古い民謡をモチーフにした第3曲「歌」、第5曲「間奏曲」ですね。琴のような音色の民族楽器ツィンバロンも効果的に取り入れられています。次に有名なのが「ガランタ舞曲」。コダーイの出身地であるガランタの町に伝わるジプシー民謡を管弦楽にアレンジした15分強の小品で、中でも哀調漂う第2曲のメロディが耳について離れません。

そんなコダーイ作品の決定版ですが、やはりハンガリー人指揮者のものに限るでしょう。中でもケルテス・イシュトヴァーン指揮ロンドン交響楽団による録音は40年以上経った今でも定番として広く普及しています。このCDにはもう1曲「ハンガリー民謡<孔雀は飛んだ>による変奏曲」、略して「孔雀変奏曲」も収録されています。タイトル通り同名の民謡を16もの変奏でつなげたたもので、実は収録曲の中でで一番長く27分弱あります。こちらも民族音楽を華麗なオーケストレーションで味付けした名曲です。
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リスト/交響詩集

2013-07-20 22:30:44 | クラシック(管弦楽作品)
クラシックには“交響詩”と呼ばれるジャンルがあります。文学作品や伝説、神話などをテーマにした標題音楽で、中には交響曲と見まがうような大規模なものもありますが、多くが10分~20分程度の単一楽章形式で、テーマとなる作品の世界をコンパクトに表現できるためロマン派の多くの作曲家が傑作を残しました。代表的な作曲家としてはリヒャルト・シュトラウスやシベリウスが挙げられますが、実は交響詩そのものを生み出したのはリストなんだそうです。リストは以前に紹介したピアノ協奏曲でも述べましたが、ピアノ作品のイメージが強すぎて管弦楽曲のイメージがなかったのですが、それは偏見だったようです。



リストの交響詩は全部で13曲あるそうですが、私が買ったクルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のCDにはそのうち4曲とピアノ曲を編曲したメフィスト・ワルツ第2番が収録されています。1曲目はルネサンス期のイタリアの詩人トゥルクアート・タッソの生涯を描いた「タッソー」。悲劇的で重苦しい前半部分から一転して現れる高らかに歌い上げられる勝利のテーマが実に壮大です。2曲目は「前奏曲」。交響詩なのに前奏曲とはこれいかに?ですが、フランスの詩人ラマルティーヌの作品に書かれた「人の一生は死への前奏曲に過ぎない」という一節から取ったようです。金管のファンファーレによる第2主題、ホルンの奏でる牧歌的な第3主題が印象的です。3曲目はギリシャ神話の登場人物をテーマにした「オルフェウス」。他は全て15分を超える大作ですが、この曲は10分弱と短く、穏やかで愛らしい旋律に満ちた小品です。4曲目は「マゼッパ」。ウクライナのコサックの英雄を讃えたドラマチックな曲で、戦いの場面を表した荒々しい前半部分、陰鬱な中間部分を経て、フィナーレは壮麗な行進曲で締めくくられます。「メフィスト・ワルツ」は悪魔メフィストの名を冠してはいますが、曲調は以外に優雅でメロディアスです。以上、「前奏曲」を除いて取り上げられる機会も少ないマイナー曲ばかりですが、どれも堂々としたロマン派の名曲揃い。イチ押しです。
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プーランク/牝鹿 & ミヨー/屋根の上の牛 他

2013-07-19 23:34:23 | クラシック(管弦楽作品)
クラシック音楽も19世紀末にロマン派音楽が爛熟期を迎え、20世紀に入ると作曲家たちはさまざまな道を模索し始めます。一部は前衛性を増していき、調性を排除した十二音技法を確立してゆくのですが、この辺りは私にはさっぱり理解できないのでパスします。他方では“新古典主義”と言って、ロマン派音楽を飛び越え、モーツァルトやバロックの時代まで遡るグループもいました。今日ご紹介するフランシス・プーランク、ダリウス・ミヨーらもその仲間で、彼ら2人にオネゲルらを加えた6人を「フランス6人組」と言ったりもするようです。ただ、古典を模倣していると言っても、純粋なバロック音楽とは全く異なっていて、やはりメロディはどことなく無機質ですし、ジャズをはじめ新大陸の音楽の影響も感じられます。



まず、ミヨーの「屋根の上の牛」ですが、バロック風の朗らかな旋律にタンゴやサンバなど南米の陽気なメロディがミックスされた不思議な曲。やや調子っぱずれのトランペットには現代風の響きも感じられます。プーランクの「牝鹿」はそれに比べるとより正統派な古典音楽。計4楽章、20分あまりの小品ですが、モーツァルトを筆頭に18世紀の香りが感じられる軽快な曲です。特に跳ねるようなリズムの「ロンド」、優しいメロディの「アダージェット」が秀逸です。

CDはウラディミール・ヴァーレク指揮チェコ・フィルハーモニーのものを買いました。プーランク、ミヨーあたりは録音そのものがレアなので選択肢はあまりないですが、本盤が選曲的にもベストだと思います。このCDにはもう1曲、「ジムノペディ」で有名なエリック・サティが書いた「パラード」と言うバレエ音楽が収録されています。これがまた変わった曲で、冒頭部分はいたって正統派なんですが、その後はめまぐるしく転調していく、さらに途中でサイレンやタイプライターの音が挟まれたりと、何とも言えずユニークな曲です。ピアニストのイメージが強いサティにこんな珍曲があったとは驚きですね。
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チャイコフスキー/交響曲第4番

2013-07-14 11:26:35 | クラシック(交響曲)
チャイコフスキーの三大交響曲(4番、5番&6番)はどれもクラシック有数の人気銘柄ですが、人によって好みは分かれるようです。評論家筋に人気が高いのが6番「悲愴」ですが、私は暗くてそんなに好きではないです。イチ押しは第5番ですね。ロマンチックな第2楽章アンダンテ・カンタービレと勇壮な第4楽章が最高ですね。で、今日ご紹介する第4番ですが、感想は「まあまあ」といったところ。第5番より11年前の37歳の時の作曲なので良くも悪くもまだ粗削りな感じです。なんでもこの頃チャイコフスキーは結婚に失敗し、自殺未遂を企てたりとかなり精神的に不安定だったそうで、曲も短調の重々しいムードに覆われています。



第1楽章は19分近くもある長大な楽章で、途中で牧歌的な旋律が何度か現れるものの全体的に重苦しく不安げな旋律が支配的です。第2楽章は緩徐楽章ですが、こちらも哀調漂う旋律。冒頭、オーボエの奏でる物哀しい旋律に引き続き弦のアンサンブルが静かに加わっていくあたりが、何とも言えず暗いです。第3楽章は全編にわたって弦のピチカートと管楽器で構成されるというかなり珍しい構成。後半から徐々に盛り上がっていき、続く第4楽章への橋渡し的な役目も果たしています。そしてこれまで貯めてきたエネルギーを一気に解放するかのようなド派手な第4楽章。前半の暗さを吹き飛ばす盛り上がりで、圧巻のフィナーレを迎えます。生オーケストラで聴くと気持ちいいでしょうねえ。結局、チャイコフスキーが描きたかったのは、絶望の底から生まれる希望ということなんでしょうかね?CDはロシアが生んだ現役最高の指揮者の一人であるワレリー・ゲルギエフが天下のウィーン・フィルを指揮したものです。収録曲は4番のみですが、その分コンパクトにまとまった1枚と言えるでしょう。
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