本日は少し珍しいところでファゴットのために書かれた協奏曲集をご紹介します。ファゴットは別名バスーンとも言い、木管楽器の一つとしてオーケストラには欠かせない楽器です。ただ、独奏楽器としては同じ木管のフルート、クラリネット、オーボエと比べると地味なのは否めません。音域的にも低く、また楽器の構造上フルートやクラリネットのように滑らかで流れるような音は出ず、ポポポポポとちょっと気の抜けたような感じです。とは言え、歴史自体は古くバロック期から存在するため、ファゴットを主楽器とした楽曲の数はそれなりにあります。本日はその中でも18世紀末から19世紀前半の古典~初期ロマン派の頃に書かれたモーツァルト、フンメル、ウェーバーによる3曲の協奏曲をご紹介します。CDはウィーン・フィルの首席ファゴット奏者だったミヒャエル・ヴェルバがウィーン弦楽ゾリステンをバックに演奏したものです。
まずはモーツァルトの作品から。神童モーツァルト18歳の時の作品で、古今のファゴット協奏曲の中でも最も有名な作品と言っていいでしょう。いかにも若き日のモーツァルトらしい天国的で明るい旋律です。ただ、モーツァルトの数多ある傑作群の中では正直取り立てて目立つ作品とは言えず、木管楽器のために書かれた協奏曲の中でも、フルート協奏曲やクラリネット協奏曲、協奏交響曲等と比べると一段劣るというのが私の評価です。
個人的にはフンメルとウェーバーの作品の方を高く評価します。フンメルは以前にトランペット協奏曲を取り上げましたが、ベートーヴェンと同時期の作曲家で生前は高い評価を得ていたようです。特に第1楽章が素晴らしく、華やかで美しい旋律が次から次へと現れる名曲です。第3楽章のロンドも捨てがたい。ウェーバーは「魔弾の射手」等のオペラ序曲で名高いですが、2曲のクラリネット協奏曲をはじめとしてホルン・コンチェルティーノなど協奏的作品にも佳作が多いです。第1楽章はオペラ序曲を思わせるドラマチックな始まりでロマン派の王道を行く歌心あふれる旋律が続きます。優美なアダージョの第2楽章、軽快なロンドの第3楽章も魅力的です。