ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

シダー・ウォルトン/シダー!

2014-05-31 10:40:32 | ジャズ(モード~新主流派)
本日は過小評価されたピアニスト、シダー・ウォルトンのアルバムをご紹介します。ウォルトンと言えば、マッコイ・タイナー、ハービー・ハンコックらとともに60年代のモード~新主流派ジャズを支えた名ピアニストです。60年代前半にはジャズ・メッセンジャーズに在籍。ウェイン・ショーター、フレディ・ハバードらと「モザイク」「スリー・ブラインド・マイス」など数多くの名盤を生み出しました。他にもアート・ファーマー、リー・モーガン、ジョー・ヘンダーソン、カーティス・フラー、フレディ・ハバードら名だたるジャズメン達と共演し、それぞれの作品で堅実なプレイを聴かせています。にもかかわらず地味な印象が拭えないのはやはりリーダー作にこれ!という作品がないからでしょうね。そこが前述したハンコックらとの差でしょう。



本作「シダー!」はそんなウォルトンの1967年の作品。それまでひたすらサイドメンとしてプレイしていた彼が初めて録音したリーダー作です。メンバーはケニー・ドーハム(トランペット)、ウォルトン、リロイ・ヴィネガー(ベース)、ビリー・ヒギンス(ドラム)のカルテットが基本で3曲にジュニア・クック(テナー)が入ると言う編成。7曲中4曲はウォルトンの自作曲で、哀愁を帯びたメロディの“Turquoise Twice”が印象的です。ただ、本作に限ってはスタンダードの方が良いですね。ホーン抜きの“My Ship”はクルト・ワイル作のボーカル曲ですが、見事にモダンで知的なピアノトリオに生まれ変わっていますし、エリントン楽団のレパートリー“Come Sunday”もドーハムとクックの2管を活かした美しいミディアムナンバーに仕上がっています。全体的にお得意のモード路線でよくまとまった仕上がりだと思いますが、名盤と言えるほどのインパクトはないというのが正直な評価です。ウォルトンはその後1970年代に入ると堰を切ったようにリーダー作を発表し始めますが、その頃にはメインストリームジャズは下火になっており、結局注目を集めることはありまでんした。何と言うかいろいろ巡り合わせの悪い人なんでしょうね。
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ソニー・クリス/アイル・キャッチ・ザ・サン

2014-05-26 22:08:55 | ジャズ(ハードバップ)
ソニー・クリスについては以前当ブログでも紹介しました。お世辞にもメジャーとは言えませんがチャーリー・パーカーの流れを組む生粋のバッパーとして一部にコアなファンを持つアルト奏者です。1950年代に西海岸で活躍した後、長いブランクを経た後、60年代後半にプレスティッジから7枚のアルバムを発表します。今日ご紹介する「アイル・キャッチ・ザ・サン」はそのうち最後の作品で、1969年の録音です。プレスティッジ時代のクリスはニューヨークでプレイしていましたが、本作はかつての根拠地だったLAでの録音で、ハンプトン・ホーズ(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)、シェリー・マン(ドラム)ら西海岸を代表する面々に囲まれ、快調なプレイを聴かせてくれます。



全6曲。有名スタンダードは“I Thought About You”だけで、後はクリスのオリジナルと当時のヒット曲。自作のブルース“Blue Sunset”と“California Screamin'”ではクリスがコテコテのバップフレーズを吹きまくります。コアなファンからしたらたまらん!って感じでしょうが個人的にはややくどいですね。私のお薦めは2曲。1曲目が“Don't Rain On My Parade”。前年に大ヒットしたバーブラ・ストライザンドのミュージカル映画「ファニー・ガール」からの1曲。劇中のバーブラの熱唱も鳥肌モノですが、本作でのクリスのアドリブも熱いです。もう1曲はこれも「ジョアンナ」という映画からの1曲でタイトル曲にもなっている“I'll Catch The Sun”。こちらは実に美しいメロディを持つミディアムナンバーで、クリスのソロもさることながらハンプトン・ホーズのリリカルなピアノソロが素晴らしいです。
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ジューン・クリスティ/フェア・アンド・ウォーマー

2014-05-23 10:03:09 | ジャズ(ヴォーカル)

今日も女性ヴォーカルで、ジューン・クリスティをご紹介します。ローズマリー・クルーニー、ドリス・デイはその美貌を活かして女優としても活躍しましたが、ジューンさんは歌手一本。ジャケットに見られるようなボーイッシュなザンギリ頭がトレードマークでした。50年代にはキャピトル・レコードの看板シンガーとして活躍し、特に「サムシング・クール」はジャズヴォーカル史上屈指の名盤として知られています。ヘレン・メリル、クリス・コナー、アニタ・オデイら同時代の白人女性シンガー同様、ややハスキーがかった低い声が特徴で、童顔に似合わないパンチの利いたヴォーカルを聴かせてくれます。本盤は1957年録音のキャピトル盤です。



ジューンは1940年代は西海岸の名門オーケストラであったスタン・ケントン楽団の歌手を務めており、ソロ活動後も同楽団のメンバーのサポートを頻繁に受けています。ケントン楽団と言えばウェストコーストジャズの俊英達の登竜門でしたので、本盤もドン・ファガーキスト(トランペット)、フランク・ロソリーノ(トロンボーン)、バド・シャンク(アルト)、レッド・ミッチェル(ベース)、シェリー・マン(ドラム)、そして夫でもあるボブ・クーパー(テナー)ら豪華なメンツが脇を固めています。アレンジャーのピート・ルゴロもケントン楽団出身ですね。とは言え、あくまで主役はジューンのヴォーカルなので、各楽器のソロは少しずつしかないのがややもったいないですが・・・全12曲、“I Want To Be Happy”“Irresistible You”“When Sunny Gets Blue”等よく知られたスタンダード曲が中心ですが、“Beware My Heart”“I Know Why”等マイナーな曲も取り上げています。曲調もアップテンポあり、バラードありとバラエティに富んでおり、いずれの曲でもジューンのハリのある歌声が堪能できます。

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ドリス・デイ&アンドレ・プレヴィン/デュエット

2014-05-18 21:25:39 | ジャズ(ヴォーカル)
引き続き女性ヴォーカルもので、ドリス・デイを取り上げます。前回取り上げたローズマリー・クルーニ-同様、彼女もまたジャズ歌手にとどまらない多彩な活躍をした人で、女優として多くの映画に出演しました。特に有名なのがアルフレッド・ヒッチコックの名作「知りすぎていた男」で、ドリス・デイは主演女優を務めるだけでなく、劇中で歌った“Que Sera Sera”でミリオンヒットを飛ばしました。♪ケ~セラ~セラ~のメロディは皆どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?本作はそんなドリスがピアニストのアンドレ・プレヴィンとのコンビで1961年に録音した作品。後にロンドン交響楽団やロイヤル・フィル等の常任指揮者を務めるなどクラシックの世界で大成功を収めるプレヴィンですが、30代前半のこの頃はジャケットに見られるようなイケメンのジャズピアニストとして名を馳せていました。



そんなマルチな才能を持つ2人の共演ですが、実に魅力的なジャズヴォーカル作品に仕上がっております。ドリスは黒人歌手のような圧倒的な声量こそありませんが、伸びやかで透明感のある歌声でバラード中心の曲をしっとり歌い上げています。一方のプレヴィンのピアノは決して前に出過ぎることなく、ドリスの歌に合わせて胸に沁みるような美しいメロディを次々と紡ぎだして行きます。ミドルテンポの曲で見せるスインギーなアドリブも素晴らしいですね。全12曲、うち有名スタンダードは“Fools Rush In”“My One And Only Love”ぐらいで、後はマイナーな曲中心。プレヴィンの自作曲も3曲(“Daydreaming”“Yes”“Control Yourself”)含まれています。ただ、これが素晴らしい曲ばかり。“Yes”“Remind Me”“Give Me Time”等のバラード曲ではドリスとプレヴィンのデュエットで美しいバラードを情感たっぷりに歌い上げます。“Close Youe Eyes”“Daydreaming”等はベース&ドラムを加えた通常のピアノトリオでこちらの方はより普通のジャズとして楽しめます。雨の日などしっとりした気分のBGMに最適な1枚ではないでしょうか?
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ローズマリー・クルーニー&デューク・エリントン/ブルー・ローズ

2014-05-10 12:24:44 | ジャズ(ヴォーカル)
今日はひさびさに女性ヴォーカルもので、白人歌手のローズマリー・クルーニーがデューク・エリントン楽団と共演した1956年コロンビア盤を取り上げます。ロージーの愛称で親しまれる彼女はジャズ歌手というよりポップシンガーとして有名で、全米1位にも輝いた“Come On-a My House”などヒット曲をいくつも持っています。また、女優として映画にも出演するなど、いわゆるマルチタレントのセレブでした。(余談ですが俳優ジョージ・クルーニーは彼女の甥です。)エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーン、ヘレン・メリルらのような“歌に生きる”的なイメージとはかけ離れていますが、だからと言ってジャズシンガーとしての実力がないなんてことは全くなく、むしろ超一流だったということはこの作品を聴けばよくわかります。低音域もしっかりカバーできる声量と情感のこもった歌唱力で、天下のエリントン楽団をバックに堂々と歌い切っています。



本作の魅力はそんなロージーの歌だけでなく、脂の乗り切ったエリントニアン達のソロが随所に聴けること。総勢15人、全員の列挙はしませんが、御大デューク・エリントン(ピアノ)をはじめキャット・アンダーソン(トランペット)、ポール・ゴンサルヴェス(テナー)、ジョニー・ホッジス(アルト)、ハリー・カーニー(バリトン)らが見事な演奏でロージーを盛り立てます。全11曲、“Sophisticated Lady”“It Don't Mean A Thing”“Mood Indigo”などエリントン楽団お馴染みのレパートリーも悪くないですが、個人的には他の曲がお薦め。ドスの利いたヴォーカルがシブいレイジーな“Hey Baby”、レイ・ナンスのトランペットに導かれるスインギーな“Me And You”、トランペットやテナーソロを間に挟んでブルージーに歌い上げる“Grievin'”、ゴージャスなオーケストラをバックにスキャットで歌う“Blue Rose”とロージーの豊かな歌声とエリントニアン達が奏でる華麗なサウンドが見事に融合した名曲揃いです。ロージーのヴォーカルは一切入ってないものの、ジョニー・ホッジスの美しいバラードプレイが全面的にフィーチャーされた“Passion Flower”も素晴らしい出来です。ロージーの代表作と言えばオルガントリオをバックにした「スウィング・アラウンド・ロージー」が有名ですが、個人的には本作の方が格段に上と見ます。名盤と言ってよいのではないでしょうか?
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