ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

リヒャルト・シュトラウス/4つの最後の歌

2012-03-26 22:13:54 | クラシック(声楽)
本日はリヒャルト・シュトラウスの歌曲「4つの最後の歌」を取り上げたいと思います。この曲はソプラノ独唱とオーケストラのための作品で、84歳の作曲家が死の前年に書いた文字通り“最後の歌”です。リヒャルト・シュトラウスと言えば「ツァラトゥストラはかく語りき」「アルプス交響曲」などカラフルでダイナミックなオーケストラが特徴ですが、この曲は死を目前にした老作曲家が原点に立ち返り、ひたすらメロディの美しさだけを追求したかのような清らかな作品です。

曲は「春」「9月」「眠りにつこうとして」「夕映えの中で」とそれぞれ題が付けられており、最初の3つがヘルマン・ヘッセの、最後がアイヒェンドルフの詩がつけられているそうですが、ドイツ語なので内容はちんぷんかんぷん。ただひたすら曲の天国的な美しさに酔うべし!です。4曲どれも素晴らしいですが、特に「眠りにつこうとして」の最後の部分は、思わず目を閉じて歌の世界に溶け込みたくなるような感動の名唱です。「夕映えの中で」の冒頭のオーケストラも管弦楽の大家シュトラウスならではの美しさです。



CDはエリザベス・シュヴァルツコップのソプラノ、ジョージ・セル指揮ベルリン放送交響楽団のものを買いました。1965年と約半世紀前の録音ですが、未だにこの曲の決定盤として知られています。実は私はもう1枚デイヴィッド・ジンマン指揮の最近の録音のも聴いたことがあるのですが、そこで歌っていたメラニー・ディーナーという歌手とシュヴァルツコップでは確かに歌の上手さが段違いのような気がします。シュヴァルツコップは高音の伸びもさることながら、低音部分や時折聴かせる裏声がゾクッとするものを感じさせますね。

このCDには他にもリヒャルト・シュトラウスの歌曲が12曲納められています。「4つの最後の歌」ほど有名ではありませんが、なかなかいい曲が多いですね。特に「献呈」「東方の三博士」「冬の捧げもの」がお薦めです。
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チャイコフスキー&ドヴォルザーク/弦楽セレナード

2012-03-22 21:51:20 | クラシック(管弦楽作品)
本日はチャイコフスキーとドヴォルザークによる弦楽セレナードを紹介したいと思います。弦楽セレナードとは文字通り、管楽器や打楽器のない弦楽のみの演奏でオーケストラではありながらどこか室内楽的な響きを持っています。重厚なオーケストラサウンドが好きな私としては小ぢんまりした曲は好みではないのですが、この2曲に関してはその旋律の美しさにすっかり魅せられてしまいました。

まず、チャイコフスキーから。第1楽章、冒頭の悲愴感あふれる響きに誰もが「あ、この曲!」と思うでしょう。一昔前人材派遣会社のCMで流れていた曲です。「会社に恵まれなかったらオー人事、オー人事」とか言うあのCMですね。インパクトありすぎの序奏ですが、中間部は一転してリズミカルな弦楽アンサンブルです。第2楽章は軽快なワルツ。第3楽章はエレジー(哀歌)と題されるだけあって、哀調あふれる穏やかなメロディ。第4楽章はロシア民謡風の思わず踊り出したくなるような明るい曲調で、最後に再び冒頭の主題に戻って終わり。チャイコフスキー自身がモーツァルトを意識して書いたというだけあって、全体的に懐古趣味的な曲風です。

続いてドヴォルザークの弦楽セレナードです。この曲は彼が30代半ばの、まだ作曲家として大成する前の作品で、後年のドヴォルザーク特有の重厚さはありません。共通するのはやや哀調を帯びた美しい弦楽アンサンブルと、軽やかなワルツの組み合わせ。特に第1楽章冒頭部分のロマンチックな主題、第3楽章のきびきびしたスケルツォが印象的です。フィナーレの第5楽章はこの曲で唯一スラブ色が前面に出た楽章で、チェコの民族舞踊を思わせる軽やかなフィナーレです。



この2曲はロマン派を代表するセレナードということで、セットで発売されていることが多いですが、私が買ったのはネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズのCDです。正式名称が長いのでアカデミー室内管弦楽団とも訳されますが、イギリスが世界に誇る室内オーケストラだけあって、こういう小規模編成の曲はお手の物ですね。このCDにはもう1曲おまけでシベリウスの「悲しきワルツ」が収録されています。文字通りやや哀調を帯びたワルツ風の小品で、いつもの雄大なシベリウス節とは違う愛らしい曲調が魅力です。
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ヤナーチェク/シンフォニエッタ、グラゴル・ミサ

2012-03-19 20:26:44 | クラシック(管弦楽作品)
前回のドヴォルザークに続き、本日は同じチェコの作曲家レオシュ・ヤナーチェクを取り上げます。チェコの作曲家と言えば他にスメタナがいますが、「モルダウ」があまりにも有名なスメタナと違い、ヤナーチェクは名前こそ聞くものの、パッと思いつく曲がありませんよね。ただ、今日取り上げる「シンフォニエッタ」と「グラゴル・ミサ」は彼の代表作と評されるだけあって、さすがに聴き応えのある曲でした。

まず「シンフォニエッタ」ですが、何でも村上春樹のベストセラー「1Q84」で使われたとかで、最近ひそかに注目されているらしいですね。小説未読の私にはさっぱりイメージが湧きませんが。シンフォニエッタとは元来イタリア語で「小交響曲」の意味ですが、古典的な交響曲のイメージとは違い、20世紀の作品らしく後期ロマン派とは一線を画した斬新な響きです。とは言え、調性はきちんと保っているので、難解さはなく、聴き込むほどに味が出てくる作品です。全体的にトランペットやトロンボーンはじめ金管楽器の活躍する部分が多く、特に冒頭と第2楽章のファンファーレ風の主題が印象的です。

「グラゴル・ミサ」は名前だけ聞くと教会音楽かと思いますが、合唱に使われる歌詞が古いスラブ語の典礼文に則っているというだけで、音楽的にはヤナーチェク特有の近代的響きをもった管弦楽作品です。華々しいファンファーレで始まる第1楽章を聴けばわかりますが、教会で鳴らすには騒々しすぎます。第2楽章以降は合唱と独唱が入りますが、旋律的には金管楽器や打楽器を多様したトンがった響き。かと思えば、第3楽章ソプラノ独唱や第6楽章の合唱など美しい旋律も効率的に挟まれており、適度に曲にアクセントを付けています。宗教性が強くない分、むしろ普通に楽しめる作品となっています。



CDはエリアフ・インバル指揮ベルリン・ドイツ交響楽団のものを買いました。「シンフォニエッタ」だけだと、クーベリック、ノイマンなどチェコ人指揮者の録音があるのですが、こちらは「グラゴル・ミサ」も入ったお得盤です。しかもクレスト1000という廉価版シリーズで何と1000円。お買い得です。
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ドヴォルザーク/ピアノ協奏曲

2012-03-16 19:00:23 | クラシック(協奏曲)
本日はドヴォルザークのピアノ協奏曲を取り上げたいと思います。ドヴォルザークはピアノ、ヴァイオリン、チェロとそれぞれ1曲ずつ協奏曲を遺していますが、圧倒的に有名なのがチェロ協奏曲で、次いで以前に取り上げたヴァイオリン協奏曲と言ったところでしょう。ピアノ協奏曲に関しては評論家受けもよくないし、ディスクもほとんどない状態です。

ただ、この曲は本当に駄作なのでしょうか?私は決してそうは思いません。評価の低い原因の一つはピアノのソロ部分が弱く、オーケストラが目立ちすぎる点だそうですが、それは逆に言えば管弦楽パートが充実しているとも言えます。演奏するピアニストにしてみたら、超絶技巧を誇示する場面がなくて物足りないかもしれませんが、聴く側にすれば曲が良けりゃそれでOKって感じです。そもそも曲の完成度が低い、という意見に対しては嗜好の違いなので何とも言えませんが、この曲が嫌いなのならドヴォルザークの他の作品だって好きにはならないのでは?という気がします。なぜ「新世界」やチェロ協奏曲が絶賛されて、この曲が無視されるのか腑に落ちません。

まあ、そんなことはさておき曲の方ですが、やはり最大のハイライトは第1楽章でしょう。いかにもドヴォルザークらしい重厚なオーケストラが2分以上続いた後、ピアノが哀調あふれる主題を奏でます。中間部は民族舞踊を思わせる愛らしい旋律が印象的。後半はオーケストラとピアノがこれまでの主題を繰り返し演奏して、徐々に盛り上がっていきます。第2楽章は一転ゆったりしたアンダンテで、子守歌を思わせるような優しいメロディです。第3楽章はロンド形式で、歌うような軽やかなピアノにオーケストラが加わる形で、華々しいクライマックスを迎えます。以上、全編ドヴォルザークらしい親しみやすい旋律に溢れた名曲だと思うのですが・・・



CDはスヴャトスラフ・リヒテルのピアノ、カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団のものを買いました。この曲の決定的演奏、と言うより他にほとんど出回ってるCDがありません。リヒテルにしろクライバーにしろ、録音当時(1976年)世界を代表する巨匠でしたから、演奏の方はもちろん素晴らしいです。それに加えて、この録音がなければもっと地味な扱いを受けていたかもしれない曲を世の中に知らしめたという意味でも大変貴重な演奏と言えるでしょう。
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シベリウス/交響曲第5番&第7番

2012-03-15 19:11:25 | クラシック(交響曲)
本日はフィンランドの作曲家シベリウスの後期の代表作2作品を取り上げます。シベリウスの交響曲と言えば2番が有名で、私も以前から愛聴しておりましたが、後期の2作品も曲調的には同じで透明感あふれる響きと壮大なスケールが北欧の大自然を思い起こさせます。交響曲の形式を取りながらも一種標題音楽的な統一感を持っているのがシベリウス作品の特徴ですね。

まず第5番から。第1楽章は冒頭からホルンと木管が清らかな主題を提示します。途中、北欧の不安定な空のようにめまぐるしく曲調が変わりますが、最後はオーケストラが高らかに鳴り響き力強く終了。第2楽章は全体的にゆったりとした曲調。弦のピチカート、木管楽器が牧歌的な旋律を奏でます。第3楽章フィナーレは、弦のややせわしないトレモロが1分半ほど続いた後、満を持したように管楽器が荘厳な主題を奏でます。何度か変奏を繰り返した後、再び主題に戻り幕を閉じます。

第7番はシベリウス最後の交響曲ですが、にもかかわらず単一楽章で20分弱しかない異例の短さです。決して作曲途中に死んでしまったとかではなく(シベリウスは本作発表後も30年以上生きたようです)、これで“完成”です。短いながらも非常に豊かな曲想を持つ作品で、5分過ぎに現れる荘厳なホルンの主題、中間部の愛らしいロンド風の主題、そして荘厳なクライマックスが特に印象的です。交響曲作家シベリウスのエッセンスが凝縮された作品とも言えるでしょう。



CDはユッカ=ペッカ・サラステ指揮フィンランド放送交響楽団のものを買いました。シベリウスの交響曲は人気銘柄なので、世界中の指揮者達が録音していますが、やはりフィンランドの指揮者のものが何となく雰囲気が出るような気がします。またフィンランドという国は人口500万の小国にもかかわらず、このサラステに加え、サロネン、オラモ、カム、ベルグルンドと一流指揮者を続々と輩出しています。シベリウスの伝統が今も息づいているのでしょうね。
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