ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

レッド・ガーランド・アット・ザ・プレリュード

2012-10-28 10:40:26 | ジャズ(ピアノ)

本日はハードバップ期を代表するピアニスト、レッド・ガーランドのライブ盤をご紹介します。ガーランドと言えば何と言っても黄金期のマイルス・デイヴィス・クインテットの一員であり、他にもジョン・コルトレーンと多くの共演盤を残すなど50年代後半のジャズシーンでは最もステイタスの高いピアニストでした。リーダー作も非常に多く、プレスティッジに大量のトリオ作品を残しています。ただ、正直同じようなフォーマットの作品が多すぎて、これまで彼のトリオ盤にはあまり手を付けてきませんでした。今回購入した「アット・ザ・プレリュード」はガーランドの代表作に挙げられるもので、1959年ニューヨークのナイトクラブでのライブ録音。サポートメンバーはジミー・ラウザー(ベース)&スペックス・ライト(ドラム)となっています。



ガーランドの特長としてよく言われるのが力強いブロックコード奏法ですが、同時に玉を転がすような華麗なタッチ、そして糸を引くような粘っこいブルース演奏にも大きな魅力を感じます。前者の代表格が“Perdido”で、エリントン楽団の定番曲を大胆にアレンジし、超スインギーに料理しています。よく指が疲れないなと感心するぐらいのせわしない鍵盤捌きですが、その中でも常にメロディアスなアドリブを繰り出す所が圧巻です。続く“There Will Neber Be Another You”も同じ系統ですね。一方でその名もずばり“Prelude Blues”は、後者のブルース演奏のお手本。おそらく即興で演奏されたブルースでしょうが、黒人ジャズならではのけだるいディープな世界が繰り広げられます。他ではアップテンポなベイシーナンバー“Let Me See”、マイルスとの共演でも取り上げた“Bye Bye Blackbird”もいいですね。

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ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・カルテット

2012-10-24 20:21:02 | ジャズ(ビバップ)

前回のスタン・ゲッツに引き続き、今日は同じくテナーの巨人であるソニー・ロリンズの作品をご紹介します。ロリンズと言えば「サキソフォン・コロッサス」「テナー・マッドネス」「ニュークス・タイム」「橋」などジャズファンなら誰でも知ってる名盤が目白押しで、私も当然それらのCDは所有しております。ただ、本盤は1951年から53年にかけて録音されたロリンズの中でも初期の作品と言うことで今までスルーしておりました。一応、タイトルではモダン・ジャズ・カルテットつまりMJQとの共同名義になっていますが、実は彼らとの共演は13曲中4曲のみで、残り9曲のうち8曲は1951年に録音されたケニー・ドリュー(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、アート・ブレイキー(ドラム)とのカルテット演奏で、あと1曲“I Know”はなぜかあのマイルス・デイヴィスがピアノを弾いているという異色の編成です。



曲は全て2分台から3分台前半までの短い演奏です。50年代前半はまだビバップからハードバップへの移行期で、各楽器がたっぷりソロを取る長尺の演奏よりもアドリブ一発勝負が主流だった時代。そんな中でもロリンズの力強いテナーは十分説得力を持っています。バックの演奏ですが、贔屓目を抜きにしてもやはりMJQとの共演の方が質が高いですかね。伴奏の域を脱していない感のあるケニー・ドリュー・トリオと違い、ミルト・ジャクソンの華麗なヴァイブとジョン・ルイスの端正なピアノソロが大いに存在感を放っています。特に“The Stopper”と“Almost Like Being Love”は必聴の出来です。もちろんドリュー・トリオとの演奏も悪くはなく、アップテンポの“Newk's Fadeaway”“On A Slow Boat To China”、バラードの“Time On My Hands”あたりが短いながらもキラリと光る演奏ですね。

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スタン・ゲッツ/インポーテッド・フロム・ヨーロッパ

2012-10-20 13:13:59 | ジャズ(ヨーロッパ)

最近ヨーロッパのジャズを取り上げることが多いですが、今日はスタン・ゲッツがスウェーデンのジャズメン達と共演した「インポーテッド・フロム・ヨーロッパ」をご紹介します。ゲッツとスウェーデンと言えばゆかりが深く、1955年にも名盤「スタン・ゲッツ・イン・ストックホルム」を残していますし、本作を録音した1958年からは2年以上にわたってスウェーデンに移住してしまいます。ただ、当時のゲッツは重度のジャンキーで本国アメリカでは麻薬絡みのトラブルで服役したりと散々だったので、逃避先として北欧を選んだという裏の事情もあるようです。ただ、演奏内容はそんなドロドロしたものを一切感じさせないもので、ゲッツの伸びやかなテナーと現地ジャズメン達の見事なアンサンブルを楽しめる作品となっています。



サポートメンバーはベニー・ベイリー(トランペット)、オーケ・パーション(トロンボーン)、エリック・ノールストローム(テナー)、ラーシュ・グリン(バリトン)、ベンクト・ハルベリ(ピアノ)、グンナー・ヨンソン(ベース)、ウィリアム・ショッフェ(ドラム)。曲によってピアノがハルベリからヤン・ヨハソンに代わり、テナーにもう1本ビャルネ・ネレンが加わります。うちベイリーのみがアメリカから移住してきた黒人トランペッターですが、後のメンバーは正真正銘メイド・イン・スウェーデンです。オーケ・パーションやラーシュ・グリンは他でも活躍しているので、名前を聞いたことのあるジャズファンも多いかもしれません。

曲は全7曲中5曲が有名なスタンダード。“They Can't Take That Away From Me”“Speak Low”などお馴染みのナンバーが揃いますが、5管の重厚なアンサンブルをバックに繰り広げられるゲッツの自由自在なソロに加え、前述のパーションやグリンのソロも素晴らしく、十分深みのある演奏に仕上がっています。ハルベリ作のファンキーな“Bengt's Blues”、グリン作の“Stockholm Street”らメンバーの自作曲も良い出来です。それにしても本作でのゲッツのテナーはいつになく絶好調。とめどなく湧き出てくる滑らかなアドリブと澄み切った音色の美しさはまさに唯一無比。60年代に入るとボサノバ路線に転じるゲッツですが、やはりこの頃が最高ですね。

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ミヒャエル・ナウラ/ヨーロピアン・ジャズ・サウンズ

2012-10-18 23:07:55 | ジャズ(ヨーロッパ)

以前からちょくちょく取り上げている澤野工房のヨーロッパジャズ復刻版シリーズですが、今日はドイツのピアニスト、ミヒャエル・ナウラをご紹介します。ヨーロッパの中でもフランスや北欧、オランダ、ベルギーあたりはジャズが盛んというイメージがあるのですが、ドイツのジャズシーンと言われても正直ピンと来ません。ブルーノートにリーダー作を残したユタ・ヒップ、前衛派ピアニストのヨアヒム・キューンを辛うじて知っているぐらいでしょうか?このナウラなんて全くの初耳ですし。ただ、1963年録音の本作は一部コレクターの間では有名だったそうです。



共演ミュージシャンはペーター・ラインケ(アルト)、ヴォルフガング・シュリューター(ヴァイブ)、ヴォルフガング・ルシャート(ベース)、ジョー・ネイ(ドラム)で全員地元のミュージシャンだそうです。クインテット編成ですが、サックス+トランペットではなくサックス+ヴァイブという所がユニークですね。曲は全6曲で3曲がナウラのオリジナル。残りがオリヴァー・ネルソン、ジャッキー・マクリーン、タビー・ヘイズのカバーですが、有名曲は1曲もないので正直第一印象はすごく地味です。ただ、演奏の質が思ったより高く、聴いているうちに魅力に目覚めていきます。シュリューターの硬質なヴァイブの音色、ラインケの伸びやかなアルト、そして端正なリズムセクションが織りなすサウンドはハードバップ特有の奔放さこそないものの、いかにもドイツ的な様式美を見事に備えています。特に自作のバラード2曲“Night Flower”“Gruga Mood”は素晴らしいですね。スピーディなマクリーンのカバー“Dr. Jekyll”もまずまず。ドイツジャズ侮るべからず!と言ったところでしょうか?漆黒の闇にメンバー5人の顔がずらっと並ぶジャケットもインパクト大ですね。

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モダン・ジャズ・カルテット/淋しい女

2012-10-11 22:59:10 | ジャズ(その他)

マイナーレーベルの作品が続きましたが、今日はメジャー所でアトランティックの名盤コレクションからMJQ「淋しい女」をご紹介します。ジャズ史上最も有名なコンボと呼ばれる彼らについてあらためて紹介する必要もないとは思いますが、一応ミルト・ジャクソン(ヴァイブ)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、コニー・ケイ(ドラム)からなるカルテットです。1952年に結成され、55年にドラムがケニー・クラークからコニー・ケイに交代したのを除けば74年に解散するまで同じメンバーで活動し続けた希有なグループです。ただ、異論を承知で言わせてもらえば私はこのMJQ、そんなに好きじゃないんです。クラシックの影響を大きく受けたジョン・ルイスの室内楽的サウンドはややもすればジャズ特有のダイナミズムに欠けるんですよね。一応、代表作に挙げられる「コンコルド」「フォンテッサ」は持ってますが、正直そこまで愛聴してませんし・・・



という訳で深く期待もせずに買った本作ですが、なかなか良かったです。1962年の録音ということもあり、レパートリーも50年代とは違い、バラエティあふれる内容。特に表題曲の“Lonely Woman”は何とフリージャズの旗手であるオーネット・コールマンのナンバー。おどろおどろしいテーマは原曲そのままですが、その後に続くアドリブはMJQらしい端正なもので、結果的によりドラマチックな楽曲に仕上がっています。続く“Animal Dance”は躍動感に満ちた明るい曲で、ミルトのヴァイブが素晴らしい。こういうノリのいい演奏はMJQには珍しいので新鮮です。3曲目の“New York 19”はジョン・ルイスが残した名曲で、都会的フィーリングに溢れた美しいミディアムナンバー。勝手なイメージですが、晩秋のセントラルパークの情景が思い浮かびます。4曲目以降も悪くはないですが、この前半3曲だけで買う価値ありですね。美女のアップが写ったジャケットもGOOD!

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