ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ブラームス/二重協奏曲

2018-01-30 12:32:37 | クラシック(協奏曲)
本日はブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲を取り上げたいと思います。実はこの曲は以前にもカレル・アンチェル指揮チェコ・フィルのものを買ったことがあるのですが、その時は魅力がわからず中古CDに売っ払ってしまったという経緯があります。ブラームスの代表曲の一つとしてヴァイオリン協奏曲があり、そちらは彼の全作品の中でも最も明るく親しみやすい曲に数えられますが、それに対してチェロを加えたこの二重協奏曲は逆にブラームスの全作品中でも最も悲劇的かつ重々しい曲と言っても過言ではないかもしれません。昔聴いた時気に入らなかったのはその“暗さ”のせいでしょうね。解説によると、この曲はブラームス54歳の時の作品で、オーケストラ編成を伴う楽曲としては最後の作品だとか。老いを迎え、キャリアの晩年を意識したブラームスの心境が反映されたのかもしれません。とは言え、聴き直してみるとさすがはブラームス。単に暗いだけでなく、ドイツ古典派の王道を行く壮麗な旋律と分厚いオーケストレーションが随所に施されており、聴きごたえのある曲となっています。

第1楽章の冒頭部分はこの曲のイメージを決定づける重々しい始まり方です。オーケストラが奏でる悲劇的な旋律、そしてそれに続くチェロとヴァイオリンのメランコリックなカデンツァ。最初聴いた時はその仰々しさが鼻につきましたが、繰り返し聴くと頭にこびりつきます。中間部では優美な旋律も顔をのぞかせます。続く第2楽章は穏やかなアンダンテで、この曲の中でももっともブラームスらしい旋律と言ってもいいかもしれません。第3楽章は一転してブラームスらしからぬいっ一風変わった作風で、冒頭からチェロとヴァイオリンがリズミカルで、それでいて物憂げな主題を繰り返し、その後オーケストラも加わってクライマックスに向かいます。一聴したところ調子っ外れにも聞こえますが、これもまた妙に頭に残るメロディですね。全体的に噛めば噛むほど味が出るタイプの曲かもしれません。



CDはいろいろ出回っているのですが、ヴァイオリン協奏曲のおまけみたいに収録されているものが多く、この曲単独のディスクはほとんどありません。以前ボツにしたアンチェル盤を除くと、朝比奈隆が新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮したものぐらいでしょうか?ソリストはヴァイオリンが海野義雄、チェロが堤剛となっています。指揮者、オケ、演奏者とも国産ですが、内容的には文句なしです。なお、本CDには「大学祝典序曲」も収録されていますが、こちらは以前に当ブログでも紹介済みです。二重協奏曲とは対照的にブラームス作品の中でも最も親しみやすい楽曲と言っていいかもしれません。
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チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第2番

2018-01-23 12:44:48 | クラシック(協奏曲)
本日はチャイコフスキーのピアノ協奏曲をご紹介します。と言っても、有名な「第1番」ではなく「第2番」の方です。第1番に関しては特に冒頭のフレーズなんてクラシックに全く興味のない人でも知っているぐらい有名ですし、今でも世界中のピアニストに演奏されている定番中の定番ですが、この第2番に関してはかわいそうなぐらい無視されている存在です。何せCDを手に入れようにも、見つかったのは本日紹介するナクソスの輸入盤だけ。国内盤に関しては皆無です。マイナーな作曲家の作品ならともかく、チャイコフスキーほどのメジャーどころでここまで冷遇されている作品と言うのも珍しいですね。一体なぜなんでしょうか?確かに第1番の方は有名な最初の旋律だけでなく、第2楽章・第3楽章とも名旋律のオンパレードで、文句のつけようのない名作です。それに比べると第2番の第1楽章は冒頭のメロディがあまりにもベタ過ぎますし、第2楽章なんてチェロとヴァイオリンの二重奏が長々と続いてピアノの出番が少なく、最初の数回聴いたぐらいでは確かにピンと来ません。



でも、繰り返し聴いていくうちにだんだんハマってきます。第1楽章の出だしにしてもこれがチャイコフスキーの持ち味というか、ベタで陳腐かもしれませんが、一方で覚えやすいメロディで知らないうちに口ずさんでしまいますし、それに続く第2主題の夢見るような美しさはまさにチャイコフスキーならでは。続く第2楽章もチェロとヴァイオリンの出番が多くてピアノ協奏曲というより三重協奏曲みたいになっていますが、メロディ自体はとても美しく、切なくはかなげな雰囲気に魅了されます。続く第3楽章は一転して躍動感にあふれたメロディで、まるで鬱憤を晴らすかのようにピアノが大活躍。随所で超絶技巧も駆使しながら、ドラマティックなフィナーレへと突き進んでいきます。演奏時間も40分超とスケールの面では第1番以上ですし、チャイコフスキーならではの堂々としたコンチェルトと言えるでしょう。確かに第1番に比べるとやや劣るかもしれませんが、決して凡作ではありませんし、私としては20世紀のプロコフィエフやショスタコーヴィチ等の難解な作品よりよっぽどこちらの方が好きです。

CDですが、ナクソスだけあって演奏者、オケともマイナーで、ピアノがエルダル・ネボルシン(ウズベキタン出身らしい)、アメリカ人のマイケル・スターンが指揮するニュージーランド交響楽団のものです。とは言え、演奏内容はとても素晴らしいですし、そもそも今のところ選択肢がこれしかありません(youtubeだと中国人ピアニストのユジャ・ワンがユーリ・シモノフ指揮モスクワ・フィルと共演する映像があるので、そちらもお薦めです)。なお、このCDにはチャイコフスキーの「協奏的幻想曲」も収録されています。こちらはピアノ協奏曲第2番以上にマイナーな曲ですが、2楽章形式でピアノ独奏を大きくフィーチャーした作品です。この曲もチャイコフスキーらしい親しみやすい旋律が随所にちりばめられており、特に第1楽章は冒頭部分のチャーミングな旋律、中間部分のロマンティックなピアノ独奏ともに魅力的です。以上、マイナーな曲同士のカップリングですが、内容はとても充実していると思います。是非、他のピアニストや指揮者の演奏もCD化してほしいところです。
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エルガー/ヴァイオリン協奏曲

2018-01-16 12:30:36 | クラシック(協奏曲)
最近はジャズの復刻版の発売が少なく、なかなかこれ!というCDに巡り会えませんので、新年に入ってからは再びクラシックを聴く日々です。今日はそんな中からエルガーのヴァイオリン協奏曲を取り上げたいと思います。エルガーについては6年近く前にも「エニグマ変奏曲」「威風堂々」を取り上げていて、その中でヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲はイマイチみたいなことを書いているのですが、最近ひょんなことでヴァイオリン協奏曲を聴く機会がありまして、なかなかいいかも?と見直した次第です。そんな訳で購入したのが現役最高のヴァイオリニストの一人であるヒラリー・ハーンが、コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団と録音したものです。エルガーのヴァイオリン協奏曲についてはディスクの数も少なく、他にパールマンとナイジェル・ケネディぐらいしかありませんので、選択肢は限られてきますね。



さて、以前にこの曲を聴いた時になぜとっつきにくいかと思ったのかですが、それは曲全体の重々しさ。この曲が作られたのは1910年ですので、まだ現代音楽の要素はありませんが、それでも19世紀のブラームスやブルッフ、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のような美しいメロディを歌い上げるというイメージとはほど遠いです。あえて言うなら第2楽章アンダンテで随所に甘く美しい旋律が顔をのぞかせますが、それも長続きせず、すぐに鋭いヴァイオリンソロでかき消されます。ただ、聴き込むうちに重厚なオーケストレーションと技巧をちりばめたヴァイオリンソロが融合したスケールの大きな音世界に魅力を感じるようになってきます。CDにはエルガーと同じイギリスの作曲家であるヴォーン・ウィリアムズ「揚げひばり」も収録されています。こちらも過去ブログで取り上げましたが、ひばりのさえずりをヴァイオリンで模した名曲です。ハーンの幻想的なヴァイオリンが素晴らしいです。
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バック・ヒル/ジス・イズ・バック・ヒル

2018-01-05 12:24:38 | ジャズ(ハードバップ)
2018年の最初のブログはスティープルチェイスの再発シリーズから渋好みのテナー奏者バック・ヒルの作品をご紹介しましょう。とは言え、私のように50~60年代のハードバップを愛好する者にとっては馴染みのない名前です。本作「ジス・イズ・バック・ヒル」の録音は1978年ですので、70年以降に現れたジャズマンかと思いきやさにあらず。生まれは1927年でコルトレーンやソニー・ロリンズらジャズ・ジャイアンツ達とほぼ同世代。40年代のビバップ期には既にプロとして活動していたと言いますからかなりのベテランですが、リーダー作どころかサイドマンとしても録音機会には恵まれず、出身地のワシントンDCで郵便配達のアルバイトをしながら細々と演奏活動を続けていたそうです。そんな苦労人のジャズマンに目をつけたのがスティープルチェイス。これまで当ブログで紹介してきたように同レーベルは北欧に移住したかつてのビッグネーム達を専門に取り扱っていたレーベルですが、その中ではアメリカのローカルミュージシャンにスポットライトを浴びた本作は異色のラインナップとも言えます。



そんなバック・ヒルの実力ですが1曲目の“Tokudo”を聴けば納得です。キャノンボール・アダレイを思い起こさせるファンキーなナンバーで絶好調のアドリブを繰り広げるヒル。ハードバップ好きなら100%気に入ること間違いなしの名曲・名演です。リズムセクションを務めるケニー・バロン(ピアノ)、バスター・ウィリアムズ(ベース)、ビリー・ハート(ドラム)の演奏もバッチリですね。2曲目はスタンダードの“Yesterdays”をアップテンポに料理し、続く“Oleo”は本家のソニー・ロリンズに引けを取らない豪快なプレイを披露してくれます。一方、自作曲の“S.M.Y”はフュージョン風の清涼感あふれるメロディで70年代という時代を感じさせてくれます。バロンの飛翔感あふれるピアノも素晴らしいですね。これほどの実力を持ちながら50過ぎまで無名の存在に甘んじていたヒルですが、その後はスティープルチェイスをはじめ他レーベルにも続々とリーダー作を発表。遅咲きの全盛期を謳歌して昨年(2017年)5月に90年の生涯を閉じたとのことです。
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