本日はオスカー・ペティフォードを取り上げたいと思います。チャールズ・ミンガスやカーリー・ラッセルと並んで1940年代のビバップ期から活躍する重鎮ベーシストで、マイルス・デイヴィスやセロニアス・モンク、ミルト・ジャクソンらジャズ・ジャイアンツの作品にサイドマンとして参加する一方、自らのリーダー作もベツレヘムやABCパラマウントに残しています。本作「アナザー・ワン」は1955年8月にベツレヘム・レコードに吹き込まれた1枚です。実はこの作品の原題は単にOscar Pettifordだけなのですが、以前に発売された際は「オスカー・ペティフォードの神髄」という仰々しい邦題が付けられていました。私が入手したCDの邦題は「アナザー・ワン」となっていて、収録曲(1曲目)から付けられています。
ペティフォードはベーシストとして活躍する一方で若手ミュージシャンの中でリーダー的な役割も担っていたようで、本作やABCパラマウント盤では若きバッパー達を集めたミニビッグバンド的なサウンドを追求しています。本作「アナザー・ワン」のラインナップはドナルド・バード&アーニー・ロイヤル(トランペット)、ボブ・ブルックマイヤー(ヴァルヴトロンボーン)、ジジ・グライス(アルト)、ジェローム・リチャードソン(テナー&フルート)、ドン・アブニー(ピアノ)、オシー・ジョンソン(ドラム)から成るオクテット編成で分厚い演奏を聴かせてくれます。
全9曲。スタンダードは3曲目"Stardust"のみです。この曲はペティフォードのベースとドン・アブニーのピアノによるデュオ演奏で、ペティフォードがジャズベースの神髄とでも言うべきソロを聴かせてくれます。それ以外はバップ・オリジナルでペティフォードの重厚なベースをバックに若き俊英達がイキのいいソロを繰り広げます。どの曲も水準以上の出来ですが、おススメは何と言ってもペティフォードの自作曲”Bohemia After Dark”と”Oscalypso"ですかね。どちらも多くのジャズマンにカバーされた名曲で、前者はケニー・クラーク、後者はカーティス・フラーの「ジ・オープナー」の演奏が特に有名です。この2曲はペティフォードのベースは前面に出過ぎず、バンド全体のアンサンブルと各楽器のソロが聴きどころです。その他ジェローム・リチャードソンのフルートが印象的なブルース”Don't Squawk”、ラストの典型的バップ”Kamman's a-Comin'"もペティフォードの自作曲。他のジャズマンの曲ではビリー・テイラー作の熱きラテン・ナンバー”Titoro”、女流ピアニストのメアリー・ルー・ウィリアムズが書いた幻想的な”Scorpio"もなかなか上質な演奏です。